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☆『男おひとりさま道』(上野千鶴子・著、法研)☆
ベストセラーになった『おひとりさまの老後』の最後の最後で上野千鶴子さんは書いている。
なに、男はどうすればいいか、ですって?
そんなこと、知ったこっちゃない。
せいぜい女に愛されるよう、かわいげのある男になることね。
『おひとりさまの老後』は女性おひとりさまについて書かれた本だ。それでも男性おひとりさまにも参考になるだろうと思い、手に取った男性もいたのではないか。少なくとも自分はそうだった。ところが「知ったこっちゃない」と言われてしまっては「それはないでしょ」と言いたくなる。せめて「かわいげのある男」になる方法を教えてほしいものだ。
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ところが、さすが上野千鶴子さん!―と本書『男おひとりさま道』を書店で初めて目にしたとき、拍手を送りたくなった―男性おひとりさまについても一冊ものにしてくれた。
とはいえ、女性向け『おひとりさまの老後』には賛否両論が寄せられた経緯がある。ここで示された老後のストーリーが、すべての世代・階層に当てはまるわけではないとの疑念だ。上野千鶴子さんとの対談(『世代間連帯』)で辻元清美さんもいっている。男性の自分が読んでみても、いわば“恵まれた”女性を念頭に置いている印象はたしかにあった。
それでは男性向け『男おひとりさま道』はどうか。すべての男性に当てはまる老後のストーリーを描けることなどできないという意味では、本書も例外ではないといえそうだ。しかし、女性向けに比べれば男性一般に対して汎用性が高いように思えた。あまり理念に走らず、具体性に富んでいる印象も持った。もちろんのこと、社会学者らしい分析も忘れていない。
具体的な提言では、やはり「男おひとりさま道 10カ条」が役立つ。「10カ条」に先立つ「選択縁づきあい「男の七戒」」も心に留めておくべきだろう。「10カ条」や「七戒」を読んでいると、わかっているつもりでも内心落ち着かない気持ちになる男性もいるにちがいない。もしそうならば、自分がまだ「パワーゲーム」から降りていない証拠といえそうだ。言い換えれば「パワーゲーム」から降りて「女に愛される、かわいげのある男」になるための具体的な方法でもある。
日々介護をしていて、細かなことで文句をつけるのはたいてい父親である。ヘルパーさんの前では笑顔をしていても、ヘルパーさんのことで注文をつけるのも父親である。男性の平均寿命をとうに超えてしまっているのに、いまだに自分の「老い」を受け入れられず、すぐに嘆くのも父親である。父親のこれまでの人生を考えると、いまの父親の態度をいちがいに否定することはできない。それでも息子として「オトコとしての悲哀」を感じてしまう。「下り坂を降りるスキル」を持たない父親は、病気である前に「オトコというビョーキ」から抜け出せそうにない。
「10カ条」や「七戒」を自分なりにチェックしてみると、自己採点でかなり部分をクリアしているように思う。「選択縁」(脱血縁・脱地縁・脱社縁)も男女を問わず作ろうとしているつもりだ。しかし、いま一番の問題は「選択縁」の相手が、かなりの年下が主流ということだ。脱世代の関係も必要だと思うが、「選択縁」を強固なものにするためには、やはり同世代の関係が重要になる。年相応というか同年代前後の人たちとの付き合いを、どのように開拓していくかが当面の課題といえそうだ。
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ベストセラーになった『おひとりさまの老後』の最後の最後で上野千鶴子さんは書いている。
なに、男はどうすればいいか、ですって?
そんなこと、知ったこっちゃない。
せいぜい女に愛されるよう、かわいげのある男になることね。
『おひとりさまの老後』は女性おひとりさまについて書かれた本だ。それでも男性おひとりさまにも参考になるだろうと思い、手に取った男性もいたのではないか。少なくとも自分はそうだった。ところが「知ったこっちゃない」と言われてしまっては「それはないでしょ」と言いたくなる。せめて「かわいげのある男」になる方法を教えてほしいものだ。
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ところが、さすが上野千鶴子さん!―と本書『男おひとりさま道』を書店で初めて目にしたとき、拍手を送りたくなった―男性おひとりさまについても一冊ものにしてくれた。
とはいえ、女性向け『おひとりさまの老後』には賛否両論が寄せられた経緯がある。ここで示された老後のストーリーが、すべての世代・階層に当てはまるわけではないとの疑念だ。上野千鶴子さんとの対談(『世代間連帯』)で辻元清美さんもいっている。男性の自分が読んでみても、いわば“恵まれた”女性を念頭に置いている印象はたしかにあった。
それでは男性向け『男おひとりさま道』はどうか。すべての男性に当てはまる老後のストーリーを描けることなどできないという意味では、本書も例外ではないといえそうだ。しかし、女性向けに比べれば男性一般に対して汎用性が高いように思えた。あまり理念に走らず、具体性に富んでいる印象も持った。もちろんのこと、社会学者らしい分析も忘れていない。
具体的な提言では、やはり「男おひとりさま道 10カ条」が役立つ。「10カ条」に先立つ「選択縁づきあい「男の七戒」」も心に留めておくべきだろう。「10カ条」や「七戒」を読んでいると、わかっているつもりでも内心落ち着かない気持ちになる男性もいるにちがいない。もしそうならば、自分がまだ「パワーゲーム」から降りていない証拠といえそうだ。言い換えれば「パワーゲーム」から降りて「女に愛される、かわいげのある男」になるための具体的な方法でもある。
日々介護をしていて、細かなことで文句をつけるのはたいてい父親である。ヘルパーさんの前では笑顔をしていても、ヘルパーさんのことで注文をつけるのも父親である。男性の平均寿命をとうに超えてしまっているのに、いまだに自分の「老い」を受け入れられず、すぐに嘆くのも父親である。父親のこれまでの人生を考えると、いまの父親の態度をいちがいに否定することはできない。それでも息子として「オトコとしての悲哀」を感じてしまう。「下り坂を降りるスキル」を持たない父親は、病気である前に「オトコというビョーキ」から抜け出せそうにない。
「10カ条」や「七戒」を自分なりにチェックしてみると、自己採点でかなり部分をクリアしているように思う。「選択縁」(脱血縁・脱地縁・脱社縁)も男女を問わず作ろうとしているつもりだ。しかし、いま一番の問題は「選択縁」の相手が、かなりの年下が主流ということだ。脱世代の関係も必要だと思うが、「選択縁」を強固なものにするためには、やはり同世代の関係が重要になる。年相応というか同年代前後の人たちとの付き合いを、どのように開拓していくかが当面の課題といえそうだ。
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