「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

ブラックホールの凄さがわかる“凄い”一冊―『ブラックホールの科学』

2016年01月25日 | Science
☆『ブラックホールの科学』(羽馬有紗・著、ベレ出版)☆

  ここのところ経済的な事情もあって極力新たに本は買わず(といっても、ついつい買ってしまうのだが)ツンドクや読みかけの本を読むことが多い。しかし、ツンドク本や読みかけ本も数多くあるので、どれを読むか、どれを選ぶかということになるのだが、そこは本棚でたまたま目にとまった本ということになる。この本もそんな一冊。買ってから5年くらい経っているかもしれない。
  ブラックホールは宇宙や天文、あるいはSFに興味がある人にとって実に魅力的な存在だ。ブラックホールという言葉自体がミステリアスだが、ブラックホールって何?からはじまって、ブラックホールではどんな現象がおきるのかまで、いろいろ興味は尽きないはず。大きな書店へ行けば、ブラックホールに関する本は何冊も見つかるし、ブラックホールと銘打ってなくてもブラックホールのことも含んだ宇宙論の本はとても多い。しかし、実際に手に取ってみるとけっこう難しくて、途中で挫折することも少なくないように思う。
  この本はブラックホールの入門書としては、たぶん出色の一冊だ。「銀河バス」に乗って地球から銀河の中心に存在する大質量ブラックホールまで片道切符の旅をする設定だが、最初は重力のわかりやすい説明からはじまっている。その後は最終目的に着くまで、銀河の構造、降着円盤、シュヴァルツシルト半径、重力レンズなどなど、ブラックホールや宇宙論に関するトピックスもきちんと説明されている。わかりやすさを支えているのは、何といっても著者自身によるやさしいタッチのイラスト。著者の本業はサイエンスライターにしてイラストレーターとのこと。専門的な内容の説明も、専門用語をイメージしやすい言葉に置き換えるなどしながら正確に伝えている印象だ。それもそのはずで、著者は北大で物理学を専攻し、その後東大大学院修士課程で天文学を学んで経歴の持ち主だ。
  ブラックホールに限らず、宇宙や天文に関する入門的な説明は、たとえ話に終始したり、派手なイラストに訴えたりすることが多いような気がする。この本はそのどちらにも陥っていない。銀河やブラックホールの大きさや重力の大きさも数字(数式ではない)で示されていて、その“凄さ”が伝わってくる。著者の羽馬有紗さんは、小学校に上がった頃にはブラックホールの研究か「目玉焼きに何を付けるか」の研究で論文を書こうと決めていたそうだ。それもまた凄い! この本は羽馬さんの前者の夢が実現した証ともいえそうだ。ちなみに「目玉焼きに何を付けるか」の研究はいつのまにか忘れてしまったとか。
  「銀河バス」に乗って地球から銀河の中心の大質量ブラックホールまで、その気になれば1、2時間の行程だ。つまり1,2時間で読めてしまう。とにかくブラックホールのことをすぐに、でも正確に知りたい読者にとっては嬉しくなるスピード感だ。それも著者のイラストの力によるところが大きい。イラスト(視覚的な表現力)に専門知識(能力)が加わると“凄い”結果を生み出すことがわかる一冊でもある。

  

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