ユーラシアウァッチ:ロシアから見る世界情勢

ロシアは一帯一路の地政学的要所。米中対立や中東対立のキープレイヤー。マスコミのロシア情報は貧しい。その致命的穴を埋める。

イランにタンカー攻撃の動機はなく米国は支持を失いつつある:ロシア側専門家達の見解 

2019-06-18 08:39:51 | 中東におけるロシア
6月13日ホルムズ海峡付近でのタンカー攻撃について、ロシアの中東・外交専門家たちがロシアプレスで次々と見解を発表している。以下主なものを紹介する。

ロシア科学アカデミー東洋研究所研究部長ビタリー・ナウムキン氏
TV局「ロシア24」への同氏コメントを、6月17日付ノーボスチ通信が以下のように伝えている。
「こんな攻撃がだれの利益になるのか、という観点から見れば、イランは最も大きな損をする側であるといえます。なぜ今のタイミングでイランにこんな行為を起こす必要があるのでしょう。イランにとっては何の利益にもならない愚かな行為です。破壊力を見せつけるためでしょうか?ありえるとして、見せつけて何になるのでしょうか?なんの得もない」

モスクワ国際研究所文明協力センター長ビタリー・ポポフ氏
同氏はアメリカのイランに対する攻撃的なスタンスが世界で支持を得られていない現状を指摘する。6月17日付REGNUMが伝えた。
「アメリカは全世界と喧嘩をしまくり、すべてを敵に回しました。だから、最近のアメリカの発言にはおおむね慎重さが目立つようになったのかと思います」
「例えばイラクは、アメリカが90年間の間イランからの電力供給を受けられるよう約束し、何の制裁も課さない条件であったと指摘しています。アメリカ側の立場は困難なものです、現在全てのプレイヤーを屈服させないと先に進めませんが、もうそれは不可能です。この理解がまず必要です」

戦略コミュニケーションセンター(*)長ドミトリー・アブザロフ氏
6月16日付News.ruがオンラインTV<RT>へのコメントを伝えた。
アブザロフ氏によれば、米国イランの石油輸出を妨害するために、イランがオマーン湾で二隻のタンカーを攻撃したと主張している。
さらに同氏は、米国が同盟国、特にサウジアラビアと協力してイランに圧力を強めようとしており、制裁回避の道を遮断するためにEU-イランの対話を防止しようとしている、と指摘している。

*2004年に設立された独立系シンクタンク。ロシアの対外PRや対外イメージ改善戦略を
 専門としているため、前二者のような国立機関ではないが、中立的シンクタンクではない。

<EWの分析>
 上にあげた専門家たちは主には国立研究所の専門家。政府見解から完全に自由な立場ではないが、中東情勢に詳しい一流の研究者たちであり、その見解には一抹の真理も含まれるかと思われる。
 特にナウムキン氏の「タンカー攻撃をして今イランに何の得があるのか?」という問いかけと、ポポフ氏の「アメリカの対イラン強硬スタンスは世界から支持をえられていない」という現状の指摘は適格。アザロフ氏の主張は根拠を上げていないため、一方的なアメリカーサウジ陰謀論にも聞こえる。米国内部にもイランの関与について意見の対立があることをより詳細に分析しなければ、イラン陰謀論にアメリカ陰謀論で反論しているに過ぎない。
 EWとして現時点でイラン系組織の関与を完全否定はしないが、もしイランの組織が関与しているとすれば、イラン指導者のスタンスにお構いなしに勝手に動くイラン系武装集団が単独行動しているという形しか考えにくい。

ロシア外務省声明:ホルムズ海峡タンカー攻撃ではロシア人船員をイランが救助

2019-06-17 08:17:03 | 中東におけるロシア
 6月14日ロシア外務省はホルムズ海峡付近における石油タンカー攻撃について、コメントを発表した。
 声明の内容をEW(ユーラシアウァッチ)が以下に訳した。同声明によれば、攻撃されたタンカーにはロシア人船員も乗っていた。
 そして船員の救助はイランによって行われたという。

 「まずイラン政府に対して、11人のロシア人船員にたいする救助協力に感謝します。11人すべて、火災の発生した船から迅速に港湾都市ジャスクへ搬送されました。誰の犯行であろうと、この攻撃を断固として非難します。とともに、早急な結論を出すことには慎重でなければなりません。注意深く公平な国際的調査の完了まで紺攻撃への誰かの関与を決めつけることは許されません。
 オマーン湾における状況の緊張化を我々は懸念しています。人為的に状況の緊迫化がもたらされているという事実の証拠を指摘します。この緊張化は多くの面で米国の反イラン路線が促進しているものです。すべての関係者に慎重な姿勢を求めます。
 ペルシャ湾地域におけるさらなる状況悪化を避けるためには対話を行う以外の選択肢がないことをもう一度協調いたします」

 6月16日付イズべスチヤ紙は「攻撃されたタンカ二隻のうち一隻の船主によればタンカーFront Altairには11人のロシア人船員が載っており、全員がイラン軍によって救出された」と報じている。(6/16)

プーチン大統領がロウハニイラン大統領と会談:トルコも巻き込み地域連帯を強調

2019-06-16 09:25:51 | 中東におけるロシア

 6月14日付でロシア大統領府公式サイトが、プーチン大統領とロウハニ・イラン大統領の会談内容を伝えた。
 この会談の中で、プーチンの発言にいくつか特徴的なキーワードがある。
(1)全体としてイランとロシアの協力関係について話しているにもかかわらず、テロと 
   の戦いや中東の安定化に関する問題では、「イラン、トルコ、ロシア」三国の協力
   の成果と強調し、トルコを陣営に巻き込んでいる。
(2)「シリアでのテロリスト」との戦いとはもちろん、半アサド派との戦いも含む。
(3)二国間関係の話であるにもかかわらず、Русский мир(ロシア世界)とペルシャ文化圏という言葉で表すことにより、帝政ロシア時代以
   来のつながりを示唆するとともに、ロシア―イランの二国間を超えた中東・ユーラシアの連系による、アメリカの一極化への警鐘であるとともに、
   これら地域での中国の覇権を許さないスタンスを示唆している。

 その一方で、ロウハニ氏の発言は形式的な謝辞を述べており、それほど目新しいキーワードは見えない。以前からと同じように慎重に「外部からの圧力」ということで、米国やその他の国の名前を名指していない。この「外部からの圧力」には、原油輸入制限に協力する日本も暗に含まれている。


プーチン:大統領閣下、皆様、心から歓迎いたします。改めてお会いできたことうれしく思います。イランとロシアの関係は多層的、多面的なもの
     で、経済関係、地域の安定、シリアにおけるテロリストを含む、テロリズムとの戦いなどにかかわっています。
     イランの積極的な協力のおかげもあって、これらの分野で多くの成果がありました。この成果は、イラン、トルコ、ロシアの共同の成果です。我々の間での経済関係も発展し、多くの分野で成果を上げています。人道支援面でのつながりもずっと昔から緊密で、「ロシア」世界にとって
     もペルシャ文化圏にとっても共通の利害関係が、我々の対話にとっていつも重要な要点でありました。
     今日のサミットの場であなたにお会いでき、これらすべての問題について話し合えることを大変うれしく思います。

ロウハニ:ありがとうございます大統領閣下。本日あなたとお会いする機会をいただき光栄です。まず先日のロシア国家の日のお祝いを申し上げま
     す。ロシアとイランの関係は世界に向けた見本となるもので、日々前進しています。協力分野は多く、すべてを数え切るのは困難なほどで
     す。協力していない分野を名指す方が難しいでしょう。中東で現在生じている状況が、我々の間での協力をさらに密にする必要性を生み出
     しています。テロとの闘い、そして地域安定化の取り組みに我々はポジティブな協力の経験を持っています。
     現在の状況下で、外部からの深刻な圧力や、外部からの制裁がある中で、地域の諸国間の協力、特にロシアとイラ
     ンの協力の必要性は日に日に増しています。国際レベルでは、国際フォーラムなどの場で、我々のアプローチは近いという事実を知ります。こ
     れは我々が国際舞台で、とても良好な協力関係を展開していることを意味します。本日の会談が、我々の二国間関係発展にさらなる後押しとな
     ることを信じて疑いません。

中国はウクライナ経由のコンテナ貨物列車の運航を開始

2019-06-16 07:48:33 | 一帯一路 東欧
 中国からウクライナを経由してハンガリーに向かう新たなコンテナ輸送列車の運行がスタートした。4月9日付でbiz.liga.netが伝えた。
 すでに3月27日にはこのコンテナ列車は陝西省からハンガリーEpereshke 区間で試験運行を行っている。41のコンテナが輸送された。
 この新たなウクライナ経由ルートは、中国西部阿拉山口からカザフスタン(ドストィク)―ロシア(スゼムカ)-ウクライナ(ゼルノボ―バテボ)を経由してハンガリーに至る。同ルートを運航しているのはRail Cargo Logistics(ロシア)及び KTZ(カザフスタン)である。
 これら運航企業によれば、この「南回り」ルートを通じて、オーストリア、ドイツ、ポーランド、ルーマニア、イタリア、トルコ他の南欧諸国への貨物輸送が可能である。このルートの課題は、ブレスト―マラシェヴィチ国境ポイントにおける貨物の滞留である。この国境ポイントにはベラルーシとロシアカリーニングラードからの貨物が集中しやすく、さらに同ポイントでは定期的な改修工事も行われている。
 すでに3月初めにはベラルーシからウクライナ経由ルーマニア行きのコンテナ列車の定期運航が開始しており、4月4日にはウクライナはポーランド向けの新たな定期コンテナ列車運行を始めた。(4/9)

一帯一路フォーラムで中国・ベラルーシの専門家が輸送協力を議論

2019-06-16 07:47:16 | 一帯一路 東欧
 5月27日一帯一路国際会議において、中国とベラルーシ両国の研究者たちが輸送分野をはじめとするインフラプロジェクトの発展や、今後の国際協力にかかわる幅広い問題を議論した。同日付でtvr.byが伝えた。
 現時点で約130か国が一帯一露のプロジェクトに参加しており、ベラルーシは同プロジェクトの主要な物流中継点となっている。同国際会議において、参加者たちはベラルーシを通じた輸出経路の多角化やベラルーシの物流拠点としての可能性について論じた。
 2018年には前年比で、中国からベラルーシを通じた欧州へのコンテナ輸送量が約3割増加している。(5/27)