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ここは荒地。
夢に広がる荒涼の丘を私は歩いていた。
草は累々と薙ぎ、岩は沈黙し、砂は眠っていた。
風は私を苛み、希望の光も西に沈もうとしていた。
私は老齢の女と男を連れて砂利の坂を上っていた。
とくに女が坂の途中で転げ落ちるのを心配し、その後ろを私は上った。
ようやく荒れた斜面を上りきると、川が見えた。
幅がたった1メートルほどの細い川で、なぜか両側に手摺りが長く続いていて、
ここから進むなら道はなく、その川を行くしかないのだが、小舟もないし。
私はしばらく考え、
すると手摺りの一番下が案外としっかりしているようなので、
川を跨ぐように足をかけて慎重に歩けばなんとか進めるのでは、と結論を出した。
しかし老人には無理だろうか。
ところが夢の中ではなんとかなるもので、二人は少しずつ前に進んだ。
それを見て安堵していると、しんがりの私がなぜか川の水にドボンと入ってしまい、
首まで水に浸かって、慌てて手摺りによじ上ろうとしたが、
力が入らずなかなか足を両側にかけることが出来なかった。
やっとのことで手摺りを跨ぐことが出来、私も濡れたまま老人たちの後に続き川を進むと、
川沿いの左側に白い大きなカプセルというかチューブというか
朧に発光するトンネルが川と同じ方向にいつの間にか延びていて、
どうやらその中を列車が走るようなのだが、
なぜかそこからオーケストラの乱れた音が響き聞こえてきた。
つまり、普段は列車が走るためのチューブの中で今日は楽団が練習をしているわけか。
学生だろうか。
そうか。わかった。私たちはそれを観にきたのだった。
やがてビルの入り口を見つけ、そこへ入ると、中は暗く人で混雑していて、
あちこちの部屋から楽器の音がした。
ビルは古く、雑然としていて、まるで館内全体でお化け屋敷を行っているかのように
ほとんど暗闇で、チューニングの音やら演奏やらが乱れ聞こえて、しかし活気があった。
廊下に座った男からチケットのような紙を渡された。見ると、
「13階層の果樹園」
と読めた。
つづく。