釣り鐘状の赤い花が下向きにたわわに咲く「カンヒザクラ」。漢字では寒緋桜で、寒い頃から花をつける緋色の桜の意味である。学名はCerasus campanulata で、campanulataは小さな鐘の意味である。街路にもよく植えられていて、深紅の花がほかの桜に先駆けて花を開いて、目を引く。
(2020-03東京都 神代植物公園)
カンヒザクラ(寒緋桜、学名: Cerasus campanulata (Maxim.) Masam. & S.Suzuki)はバラ科サクラ属の植物。サクラの原種の一つ。旧暦の正月あたりに咲くことからガンジツザクラ(元日桜)と呼ばれることもある。別名ヒカンザクラ(緋寒桜)、タイワンザクラ(台湾桜)、ヒザクラ(緋桜)とも言う。ヒガンザクラ(彼岸桜)とは異なる。
分類
サクラの属名は日本では長い間 Prunus、和名ではスモモ属とする分類が主流だったが、昨今の研究ではCerasus(サクラ属)とするものがある。日本では前者、分けてもサクラ亜属(subg. Cerasus)とするものが多かったが、近年は後者が増えてきている。しかし、Cerasusとすることで決着した訳ではない。
特徴
落葉喬木で、葉は単葉互生。葉は秋になると紅葉する。
釣り鐘状の花が特徴で、学名の種小名 campanulata は「カンパニュラの様な」と言う意味で、キキョウ科ホタルブクロ属(Campanula、カンパニュラ)の花が下向きに咲く所になぞられて名付けられた。中国語でも「鐘花櫻花」と呼ばれる。花の色は白から濃い桃色まで様々の個体差がある。花の大きさは1.5~2.5cm程度。樹高は5m程度。多くの桜とは異なり花弁は散らず、萼のついた状態で落花する。おおよそ1月から3月にかけてが開花期となる。この早咲きの特性と、下向きに花が咲く特質が、他のサクラと交配した時に影響を与え、各地で優秀な園芸品種が出来ている。その中でも、このサクラとオオシマザクラの自然雑種、サトザクラ「河津桜」が近年、有名になり観光名所に植えられている。
分布
中国南部から台湾にかけて分布する桜である。台湾では主に「山櫻花」と呼ばれ、海抜500-2200mの山地に自生するが、この語は中国大陸部では主にCerasus serrulataを指す。
日本では園芸品種とされるが、主に沖縄県で野生化し、沖縄で「桜」と言えばこのカンヒザクラを指す。また、沖縄県や鹿児島県奄美地方でのサクラの開花予想及び開花宣言はこのカンヒザクラの開花に対して発表される。沖縄では1月から2月に開花し、また、関東地方より南でも植えられており、2月から3月にかけて花を咲かせる。
利用
鑑賞用に植樹されるほか、台湾では紅色で卵形の果実(サクランボ)を「山櫻桃」と呼び、砂糖、塩、甘草などを加えて煮つめて、保存食や土産品としたり、ジャムにしたりする。花びらも塩漬けにして、スープや菓子の彩りに使われる。沖縄県でも泡盛に漬けて果実酒とするなどの利用例がある。