なんとなく嫌な予感はしていた。
先日も書いたけど、Anna Bolena(アンナ・ボレーナ)の初日にMaggio Fiorentino(マッジョ・フィオレンティーノ劇場の)のリストラが決まった。
当日発表があったのは開演間近だったので、その日の公演は普通に行われたと聞いていた。
今日、日曜日は2度目の公演。
いつも通り最初に内容の説明などがあるので、それを聞くために開演時間より早く出かけた。
(幸い午前中の予定は早く終わったので)
劇場前、チケット売り場に変な人だかり。
これはもしやと思ったら、劇場に格子の向こうに1枚の張り紙が・・・
人がいないところで真剣に読んでいたら、なぜか私の周りに人だかりが出来てしまった。
オーケストラのSciopero(ストライキ)であることは理解できたけど???
ん?公演はある。はい。
で?何々ピアノだけの演奏で、歌手たちは全て予定どうり!?
こんなこと有り???よく分からないよ~。
近くにいたおじいさんに「すみません、よく分からないんですけど・・・オーケストラはないけど、公演はあるんですか?」
と確認すると、
「う~ん、僕にも良く分からないけど、ピアノだけの演奏でやるみたいだよ」と教えてくれた。
はい?ピアノだけ?でも3時間以上だよ???
この体制での演奏が嫌ならチケット代は払い戻してくれるというんだけど・・・
まぁ公演があるならどんなものだかとりあえず聞いてみたい。
話の種(ここでのネタ)になるしね。
なんだかよく分からないまま、前説(?)を聞きにいったけど、その場でも今日のストの説明は同じだった。
今回は作品の説明より、Donizetti(ドニゼッティ)が活躍した頃の時代背景やライバルの話などがメインだった。
1820年台後期、Rossini(ロッシーニ)は既にイタリアからパリへ移動。
この時期、イタリアは偉大な作曲家を欠いていた。
そこに登場するのがVincenzo Bellini(ヴィンチェンツォ・ベリーニ)とDonizetti。
なぜか南出身のBelliniは活躍の場を北(Milano),北出身のDinizettiは南(Napoli)からそのキャリアをスタートさせる。
その後Belliniが34歳という若さで亡くなるとDonizettiは押しも押されぬ大作曲家となる。
Anna Bolenaは1830年Milanoで初演。
Milanoと言っても一流のScala(スカラ座)ではなく、Carcano(カルカーノ)という二流の劇場だったことからも、この頃はまだDonizettiが"若手の一人"という位置づけだったことが伺える。
テーマは史実が元になっている。
私も上映中に「あ~!」と思ったけど、日本では英語名アン・ブーリンの方が分かりやすいだろう。
ホント英語読みとイタリア語読みって違うから困るよ。
アン・ブーリンと言えば、"悪女"の代表みたいな感じ。
Enrico Ⅷ(ヘンリー8世)の2番目の奥さんで、このEnricoⅧと言えば、このAnnaと結婚すると目にカトリック教会と決別。
イングランド国教会を作るわけですが、そこまでして結婚したにもかかわらず、結局このAnnaにも飽き足らず、別の女に手を出し、Annaは処刑される。(詳しくはこちら)
実際のオペラの内容はこちらのサイトが詳しかったです。
Donizettiはこのほかには史実を元にしたオペラを作成。
シェークスピアの影響も強く受けているそうです。
この前説では他にも今回のAnna役のMariella Deviaはすばらしい歌い手さんらしいとか、
聞き所は、似たような声質の2人の女性AnnaとGiovannaの競演。
そして、Donizettiが"言葉"に込めた意味などなど。
30分弱だけど、この説明は本当に面白いし、役に立つ。
開演15分前、急いで席へ。
開演前
払い戻しをした人が多いかと思いきや、それほど空きはない。
開演時間の3時半を少し過ぎたところで劇場の代表者の挨拶。
ものすごいブーイング
「劇場は皆さんに為にあります。どうぞ私たちを助けてください。」と言われてもねぇ。
数年前、裏方さんのリストラが有った時は、舞台装置、衣装なし(確かみんな黒い服だった)だったんだよねぇ・・・
でもさぁ、私たちはお金払って来ているんだから、最高の状態で見せてくれるのが劇場の勤めではないのだろうか?
オーケストラがストをして、観客が怒る。そこにどんな意味があるんだろう???
日本だったら、そんな人たちはさっさと解雇され、新しい人に入れ替えられるなぁ・・・なんて。
でもこちらは組合が強いからそんなことは出来ないし。
今日だけではなく、今後2公演(21,24日)もSciopero(スト)が予定されている。
詳しくはMaggio Fiorentinoのサイトから。
だからと言ってチケット代を値上げしてしまえば、益々庶民に足は遠のく。
打開策・・・簡単には見つからないよね。
今回のAnna Bolena,Firenzeでの公演は初めて。
私も初めて聞く作品なので楽しみにしていた。
それなのにオーケストラの席は空っぽで、ピアノが一台置かれているだけ。
そこへピアニストと譜面をめくる人、指揮者が登場。開幕。
結果は・・・これが思ったより良かった。
と休憩時間、あちこちでささやかれていたのは
「ストするオーケストラなんか要らないと。ず~とピアノだけでいいんじゃない。」
「オーケストラは時に歌の邪魔になるから、ピアノだけの方がいい」とか
うは~辛口。
こうなるとスト、完全に無意味。
かえって自分の首を絞めただけ。
私は個人的にピアノだけも悪くないけど、是非オーケストラで聞いてみたいなぁと思ったりもしたけどね。
中にはそんな声を聞きながら
「何言ってるの!Maggio オーケストラには歴史があるんだから。」と逆上するご婦人も。
歴史は変わっていくんです。
いや、変わらないといけないのではないでしょうか?
ストの話はさておき、このMariella Deviaホントすごかった。
イタリア人だから、周りはちょっと贔屓目かな?というのもあるけど・・・
この人1948年生まれって書いてあるけど本当かな?
え~信じられない。だって63歳!?えっWikipedia間違ってない?
すごく声量もあるし、きれいだし・・・???なぞ。
それこそAnna Bolenaじゃないですか・・・彼女"魔女"と考えられていたしね。
とにかく最後の「私の生まれたお城」は感無量でした。
Firenzeの劇場の写真はこちら
2008年ですが実際歌っている(クライマックスの「よこしまな夫婦」)彼女の動画はこちらから
上演後は30分近く拍手が鳴り止まず、すごいことになっていました。
遠いなぁ・・・
私の後ろに座っていた、どうやら音楽関係者の人たち、ものすごく態度が悪く、男性歌手の人たちの挨拶の時に下品なブーイングを行っていました。
同業者だから指摘が厳しいのは分かるけど、公衆の面前で他人にこういう態度を取る人がステキな音楽を奏でられるとは思えません。
とにかく今日は本当に貴重な経験をさせていただきました。
しばらくオペラシーズンはお休み。最後がこれって・・・
次回はベストコンディションで観られることを祈りながら
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