既に1週間が経ってしまいました。
かこさとし展の後、再び副都心線に乗車、東京の都心を横切って練馬へ。
東横線が副都心線に乗り入れ楽になったとは言え、横浜から行くと、同じ都内でも遠いんだよなぁ…
幸い美術館は駅から歩いて数分、この立地っていいよね。
美術館の入り口には不思議な公園が。
ちょっと怖いんですけど…馬?
ほほ~「ここは幻想美術動物園」と書いてある。
色々な動物のオブジェが置いてあって面白い。
そんな動物たちを横目に、美術館へ
今回はるばるやって来たのは「芳年展」のため。
しまった~あの話書いてなかったのかぁ…
実は3月、千葉県野田市の茂木本家美術館で開催されていた「芳年展」にも行っていたのです。
なんでそんな遠くまで行ったのかと言いますと芳年のこの作品が新聞に出ていたのを見たから。
洋服を着た女性の浮世絵!?
浮世絵に対する知識は全くないので、単に私が無知なのでしょうが、浮世絵にこんなの有るの?ということで野田まで行ったんです。
そして今写真を見ていたら、そうだ、これ書かないと~と思ったのですが、それはまた今度…あ~しまったしまった。
月岡芳年(よしとし)は、幕末から明治にかけて活躍した「最後の浮世絵師」の一人。
今年のマイブームの1人かな。
芳年に関しては「藤沢浮世絵館」の記事に少し書いてありましたが、師はここ数年北斎や広重と並んで人気の歌川国芳。
「血みどろ絵」で名を馳せ、リアリズムを追求した鬼才。
興味はあるのに、腰が重い。
あ~もういいか、さよなら~と思っていた矢先、新聞に記事が出たんです。
これ読んだら俄然行きたくなったんです。まぁ遠いと言ったって、片道1時間半ですからね。
会場は2フロアーに分かれていて、作品数は250点以上!?
こりゃ多いわ!!
見終わった後は、さすがに正直ちょっとお腹いっぱいでしたけど…
図録も買ったのですが、この変形サイズ嫌い!って思ったのですが、開いてびっくり!大判や縦長の作品がちゃんと折込(っていうのかな?)になっていて、非常に見やすい。これなら仕方がないかぁ…
「芳年 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師」
会場ではメインは浮世絵、おまけで肉筆画などが展示されています。
第1章:国芳譲りのスペクタクル、江戸のケレン(1853-65)
第2章:葛藤するリアリズム(1866-72)
第3章:転生・降臨 ”大蘇”蘇りの時代(1873-82)
第4章:”静”と”動”のドラマ(1882-92)
別章:肉筆画・下図類など
この展覧会の最大の目的は「血みどろ絵」だけにスポットが当たっている芳年のイメージを払拭すること…なんだと思います。
幕末から明治初頭に活躍した芳年の錦絵作品を4期に分け、その上肉筆画やスケッチなども展示し、芳年の全貌を紹介しています。
芳年が「血みどろ絵」の名手と言われるようになったのは、超リアルなこれらの作品のせい。
中でも特に強烈なのはこれでしょう。
「奥州安達がはらひとつ家の図」
逆さづりにされた妊婦を睨みつけながら包丁を研ぐ鬼女…こわこわ。
でも芳年がこのような恐怖作品を手がけたのはたった3年(1866-69)だけ。
それなのに彼はおどろおどろしい作品を描く画家、と烙印が押されてしまったのです。
まぁインパクトがあるので仕方がないと言えば仕方がないですが。
芳年はもともと歌川国芳を師として、国芳の武者絵を引き継ぎ、優れた美人画や明治期の歴史画を残しています。
12歳の時国芳に弟子入り、その3年後に描いた芳年のデビュー作。
平家一門が入水する瞬間をとらえているが、躍動感のあるダイナミックな作品に仕上がっている。
片や美人画の方は
芳年が最初に手掛けた美人画のシリーズ<見立多以尽>のうちの1枚。
このシリーズは20図が知られているが、それぞれ「~したい」という題が付けられた半身像で、芸者、女学生、官女など様々な身分の女性たちの風俗が描かれている。ちなみにこれは屋形船から身を乗り出して手を洗う芸者。
タイトルはまさに「手をあらひたい」
江戸時代以降の墨田川で行われたいた舟遊びの情景(川にしては波荒くない?)に、赤い縁取りとレースのついたハンカチが文明開化の香りを漂わせていて非常に粋な作品。
他にも
「いたさう」
「けむさう」などの「さう(~そう)」シリーズ、「風俗三十二相」という美人画シリーズ。
「三十二相」はもともと仏の身体に現れた三十二の特徴のことだったのが、転じて女性の容姿・容貌に備わる美しさの全てを指す言葉となり、これを踏まえて江戸時代から美人画のシリーズの題名に使われてきた。
芳年はタイトルを「風俗三十二相」とし、「いたそう」「けむそう」など女性の表情や願望を示す言葉をそれぞれの作品のタイトルとし、寛政時代から明治時代までの様々な身分の女性たちの仕草を32通り描いた。
女性の表情を見なくても、表情を見れば自然とタイトルが浮かんでくるような、とってもリアルな描写の作品で、見ていて思わず笑ってしまいそう。
他にも面白いのは
西郷隆盛が亡くなった翌年(1878年)に描かれた作品で「西郷隆盛霊幽冥奉書」という作品。
冥界から西郷の霊が建白書を届けにやって来るという非常にシュールな作品。
1872年東京で初めての日刊新聞が発行され、その2年後には新聞で扱った事件などを一枚摺りで知らせる錦絵新聞が出来る。
芳年は1875年から「郵便報知新聞」で絵を手掛け、当時の風俗や世相を伝えた60以上の作品が出版されました。
また芳年は時事に対する興味だけでなく、戦争画も手掛けています。
特にこのころの画家たちの興味をそそったのは1877年に起こった西南戦争で、実際に戦争を見たわけではない画家たちはそれぞれの想像力を駆使した作品を描いています。
これは西郷隆盛が竜宮の王になる話。
冥界から建白書を持ってくるという絵もそうだけど、面白い絵を描くなぁと。
そうそうテーマとしては源平を扱ったものが多かったかも。
確かに200点以上の作品の3,4割が血なまぐさい絵なのですが、明治初期、西洋の文化が混じりながらも、日本独特の錦絵の分野でこれほど個性的な作品を描いた芳年。これを機に日本を代表する画家としてもう少し評価が上がってくれたらいいな、と。
9月24日まで練馬区美術館で開催
参考:公式図録
ときどきクローズアップされますが、
やはり普通のいわゆる名作のほうが綺麗だとおもいます。
1册もののスタンダードな参考書としては、
小林 忠 浮世絵の鑑賞基礎知識 1994::一流の学者による技術的なことも含めた百科事典的な本
高橋誠一郎、浮世絵二百五十年、::昔の一流コレクター自身による古典的総説です
図書館なんかにはあると思いますよ。
ただ、明治大正の小林清親なんかは独自性が高いし、鏑木清方、竹久夢二も浮世絵の流れでしょうし、現代のマンガもまたそうだと思っております。
いつもアドバイスありがとうございます。おすすめの本、読んでみたいと思います。
小林 忠 ・大久保 浮世絵の鑑賞基礎知識 1994 至文堂
は、やはり、すばらしいハンドブック・百科事典。これ1冊で大丈夫、という優れものでコラムが特に優れています。横浜の図書館にもあるはずです。
高橋誠一郎、浮世絵二百五十年
は、昭和前期の大コレクターの生々しい実体験が多い(当時の相場・値段、浮世絵商の実名まで書いてある)のがよいので、何度か増補再刊されてます。しかし、やはり古い本なので、文体からすると、、入門書としては読みにくい感じがしました。
どうも浮世絵の本って画集ならむやみに大きく何冊にもなったり、画家毎の専門書になったりすることが多いので、21世紀の出版で良書はまだみつけておりません。太田記念美術館、千葉など浮世絵専門館や浮世絵に強い美術館で、わかりやすい入門書だしてくれると良いんですけれどね。
わざわざありがとうございます。読んでみようと思います。
イタリアでも同じことを感じていましたが、良書は圧倒的に古いものに多いですね。そうするとなかなか手に入りづらくなりますよね。市場の事情なのでしょうか?有名どころだけでなく、色々なことをさらっとでも良いから網羅した本が有るともっと踏み込めるのにと思います。