イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

DIC 川村記念美術館

2025年03月16日 18時07分17秒 | 日本の美術館

突然の投稿ですが、確定申告するために久々にPCを開いていたこともあるし、
どうしても書き残しておきたくて。

3月1日、今月いっぱいで閉館する「DIC川村記念美術館」に行ってきた。
佐倉市にある美術館へは、横浜からだと2時間以上かかる、ちょっとした小旅行だった。
京急線に乗って、都営地下鉄から京成線で都内を横切って向かう。
8時過ぎの電車に乗って、現地に着いたのは11時過ぎ。


しかしすごいね。
まるでヨーロッパの美術館のようです。
日本にこんなところがあるなんてねぇ…いやいや、遠くまで来たよ。


とにかく広い。
敷地面積は東京ドームおよそ2個分。

天気もいいし最高。
屋外彫刻もちらほら。

1990年開館、「日本が誇る、至宝ともいえる美術館」と評されたこともあるこの美術館は、皆様ご存知のとおり今月で閉館する。
いや、閉館ではないのか?
規模を縮小し、移転、が正しいのか?
しかし、そうなったらもはや同じ美術館とは言い難い。

コレクションには、ピカソやモネ、レンブラントなどなど誰もが知っているアーティスト作品をはじめ、なんと言っても20世紀アメリカ美術のコレクション★★★
これは世界に誇れる!!
中でも、有名なのはあの「ロスコ・ルーム!」

写真:DIC川村美術館
これを見るだけでも来た甲斐があった。
いやはや、想像より素晴らしかった。
〈シーグラム壁画〉と呼ばれるシリーズのうちの7点が一室に飾られている。
ロスコの作品だけを一室に展示しているいるのは、世界で4か所。
テート・ギャラリー(現テート・モダン)
アメリカ、ワシントンDCのフィリップス・コレクションにあるロスコ・ルーム、
ヒューストンのロスコ・チャペル
そしてここだけ。

個人的には照明をあそこまで落とすのは…この写真より全然暗い。
しかし、目が慣れると赤の洪水が押し寄せて来た。
圧倒される。
あの部屋から離れられなくなる…
これもみられなくなるのか?
フランク・ステラの大きな作品も良かったし、エンツォ・クッキもよかった。

企業美術館だから企業の方針や業績によって、作品が売買されたり閉館したり、というのは当たり前のことだが、何かできることはなかったのか?
行政は?地元企業は?

DICは川村美術館が所蔵する754点のうち384点を保有しており、それらの資産価値は、24年6月末時点で112億円(簿価ベース)と言われるが、時価では1000億円以上と評価されている。
当初から、DICは作品を段階的に売却し、現在の約4分の1に減らす方針を打ち出していたが、保有する戦後アメリカ美術などの作品群を中心に東京・六本木の国際文化会館に移転することを最近発表した。
六本木に新しい「ロスコ・ルーム」をつくる予定だそうだ。

閉館、というニュースが流れてから連日超満員の賑わいだそうだ。
しかし、それが最後の輝きという感じでかえって悲しい。
特に空っぽの「ニューマン・ルーム」に入った時に感じたあの違和感。
「ん?この部屋何?」
「ニューマン・ルーム」のことを知ったのは家に帰ってからだった。
2013年に《アンナの光》は売却され、「ニューマン・ルーム」の住人は消えた。
この辺からどうしようにもなかったのだろうか?
2018年には同館が所蔵してきた日本画作品を売却。
長谷川等伯の「烏鷺図屏風」は実業家前澤友作のコレクションになった。
なんなら、前澤友作が美術館ごと買い取れば良かったんじゃないの?

開館当時から写真も禁止、キャプションも置かないのは来館者に無の状態で作品に向かいあって欲しいから、という非常に”まじめ”な姿勢を貫いてきたから。
昨今の写真撮影OKの美術館や展覧会に辟易しているものとしては非常に感じがよいのだが…

原因は1つではないと思うが、やはりなんとかならなかったのか、というもやもやを抱えながら帰路についた。
あ~帰りも長いなぁ。



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