イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

低品質なジェラート取り締まりーイタリア

2021年05月11日 09時45分10秒 | イタリア・食

5月9日はアイスクリームの日だった。

1869年(明治2年)5月9日に横浜・馬車道の「氷水屋」で町田房蔵という人が、日本初のアイスクリーム「あいすくりん」を製造・販売した日であるという説があり、前回の東京オリンピック開催の昭和39年にアイスクリームの消費拡大を願って東京アイスクリーム協会(日本アイスクリーム協会の前身団体)がアイスクリームのシーズンが始まる連休明けの5月9日に記念事業を開催し、アイスクリームのプレゼントをいろんな施設へした事から「アイスクリームの日」として制定された。
毎年馬車道(他の都市でもやっていたらしいが)では無料でこの「あいすくりん」が配布されていたのだが、昨年に続き今年も中止になった。
「あいすくりん」って、昔懐かしのあのちょっと黄色かかったアイスだったよねぇ…

写真:Wikipedia
あれはあれで美味しかったなぁ。
そうそう、昔は市民プールなどのプールサイドで売られていた気がする。

ところで、先月イタリアで低品質なジェラートを法的に取り締まる法律制定への動きが有った。
イタリアでの伝統や歴史を守る規制というのは、日本では考えが及ばないところまで事細かに決まっている。
もちろんイタリアの食文化の代表の1つ、ジェラートもしかり。
また、Gelatoは英語のアイスクリームとは別物なのである。

ジェラートが生まれたのは、シチリアだとか、ローマ帝国だのエジプトだ、最後は聖書にも出て来るなどと言われているが、イタリアンジェラートが世界的に広がる最初の一歩は、1686年パリにパレルモ出身のFrancesco Procopioが開いたCafè Le Procopeだと考えられている。
ちなみにフランスにジェラートをもたらしたのは、カテリーナ・デ・メディチ(Caterina de’Medici)だろう。
1770年、ジェラートはGiovanni Basioloと共にアメリカNYに上陸、その少し後Filippo Lenziがアメリカ初のジェラテリアを開店する。
アメリカではすぐにジェラート工場が誕生するが、イタリアで箱詰めの棒状ジェラートが誕生するのは第2次世界大戦以降、トリノのgelateria torinese Pepinoが発明した。
これ以降イタリアでも工場生産のジェラートが増えていった。
しかしこの工場製のジェラートと手作りジェラートとは完全に別物、もちろんアイスクリームも。

「ジェラートを食べると太る」という人もいるけど、これは間違い!!(私の体系見たら信憑性ないかな?)
手作りジェラート(Gelato artigianale)に含まれる脂肪分は非常に少ない。
手作りジェラートは脂肪分8%以下、だいたい乳脂肪分3.5%くらいに抑えないといけないのに対して、アイスクリームは大抵10%以上。

手作りイタリアンジェラートは、30-50 %の空気を抱き込みながら撹拌させ、ゆっくり凍らせていくのが決まり。(空気含有量をオーバーランというらしい)
手作りは50%以下に留めないといけないが、工業製品は90%以上のものが多い。
私にはなかなか分かり難かったのだが、50mlのアイスクリームに50mlの空気を混ぜると100mlのアイスクリームが出来る。この場合のオーバーランは100%と考えればいいらしい。
ちなみにハーゲンダッツは65%くらいらしいし、一度溶けたアイスを凍らせるとカチカチになるのは空気が抜けてしまったから、なんだそうだ。(初めて知った!!)

手作りジェラートは生乳か生クリームを使用するが、アイスクリームはよく粉ミルクや植物性脂肪を混ぜる。
アイスクリームがほぼ凍った状態で保存するために保存料を入れるのに対して、ジェラートは凍らせない、保存料は使わない。
などなど、色々と違いが有るのだが、勝手に「手作りイタリアンジェラート」の名を冠した「アイスクリーム」や「手作り」とは言えないジェラートが横行しているため、いよいよこれを法的に取りしますことになったのだ。

“Produzione e definizione del gelato artigianale italiano di alta qualità “(高品質のイタリアの手作りジェラートの製造と規定)という法案は2020年9月提出され、この3月第10回産業、商業、観光に関する常任委員会(10ª Commissione permanente Industria, commercio, turismo) に託された。
その内容は、
1.高品質のイタリア手作りジェラートは、混じりけのない、自然な、出来るだけ新鮮な素材や品質の高い、選別された素材を混ぜ撹拌し、最上な状態で凍結したもので、更にジェラート職人の経験によってオリジナリティーや創造性をもったものである。

2.手作りジェラート店、もちろんジェラート職人は、ジェラートを作るため、個々の原料の釣り合いわせる技術を持ったプロであり、物質の性質に関する特徴や原料の形態を熟知し、衛生法などを順守してジェラートを作る機材を扱うことが出来る。

3.高品質の手作りジェラートは0℃で液状化を始める。

4.単に冷たい状態の材料を混ぜることで、混ぜ合わさると凍り、自然にそこに空気が入る。(強制的に入れるのではなく)すると素材が柔らかくなる。こうしてできたジェラートをそのまま販売する。

5.法律に違反し、高品質の職人ジェラートを販売したものは、2000から10,000€の罰金。

この違反の中には、香料や着色料、硬化油などの安価な人工材料を入れたジェラートを職人ジェラートとして販売した場合などが含まれる。

全文の詳細が知りたい方はこちらをご覧ください。(私も後ほどゆっくり読みます)

但しこれで観光客が騙されなくなるわけではない。
これはあくまでもgelato artigianale italiano di alta qualità(高品質手作りイタリアンジェラート)に関してだけのことで、所謂ジェラートとして売られていても、なんら罪にはならない。
自称手作りイタリアンジェラート研究家を名乗る私の唯一アドバイスは、自然色でないジェラートを置いているところは、手作りではありませんのでご注意を。
ただ、これも最近流行りの蓋つきの容器に入れられていると、区別が出来ないのよねぇ…

2019年12月23日最後に食べた高品質職人イタリアンジェラート。
本物の手作りジェラートも好きだけど、工場製品ならこれ。

写真:https://www.sammontana.it/
このにこちゃんマークのSammontanaもイタリアンアイスの代表だと思う。
甘々のハーゲンダッツがなかなか浸透しないイタリアの顔。



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2 コメント

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ジェラード (カンサン)
2021-05-11 18:41:46
fontanaさんへ、今は電気のおかげで冷やして食べるものも簡単にできますが、電気のない時代に夏に冷たいものがほしい時は、冬にできた氷や雪を氷室などに貯蔵しておくしかなかったでしょうね。これは日本やヨーロッパ共通でしょう。足らなくなったら、氷河や雪が残っている高い山に取りに行くしかなかったでしょうね。
アイスクリームの作り方は中国からイタリアへ伝わったという説もあります。
↓ 日本ジェラード協会 参考  http://www.italiangelato-kyokai.com/?page_id=7
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なんでも中国!? (fontana)
2021-05-12 15:23:02
カンサンさん
イタリア人はパスタも中国から伝わったと聞くと怒ります。(笑)
おそるべし中国4000年です。
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