昨年10月、1月にNYのSotheby’s,(サザビーズ)でボッティチェッリの「悲しみの人キリスト」(Sandro Botticelli, "Cristo l'Uomo dei dolori" )がオークションにかけられるという話を書いた。
記事はこちら:https://blog.goo.ne.jp/fontana24/e/eac4b3481221bd2c5c8d0f962429b024
オークションが今月27日と迫る中、驚きの発見があった。
なんとこの「悲しみの人キリスト」の下に、ボッティチェッリが描いたと思われる別のデッサンがみつかった。
赤外線リフレクトグラフィーによると、「悲しみの人キリスト」の下には、聖母子像が隠れていたというのだ。
茶色とピンクの線のあと。
これをはっきりさせるとこうなる。
聖母の顔と思われるものは横向きのことから、この板には最初全く違う作品を描く予定だったのではないか?
サザビーズの責任者の話では、この聖母子像は「Madonna della Tenerezza」、エレウサであると考えられる。
エレウサ(伊:Eleusa)とは、
”慈愛や慈悲を意味するギリシャ語「エレオス」に由来する。幼児キリストは<略>聖母の左におり、無邪気に聖母に手を伸ばして頬を寄せる。聖母は憂いを含んだ表情でわが子を見つめるが、これはキリストの将来の受難を知っているからだとされる。”(引用:聖母の美術全史、宮下規久朗、ちくま新書)
ポプラの板はルネサンス時代のフィレンツェでは非常にスタンダードな肢体だったが、アーティストが使うには貴重でもあった。
だから、もし下絵を描いて気に入らなくても、そのまま処分してしまえるようなものではなかった。
朗報としては、この作品、いくらで売れようと誰の手に落ちようと2022年10月15日から2023年1月8日までミネアポリスのMinneapolis Museum of Artで開催される”Botticelli and Renaissance Florence: Masterworks from the Uffizi”という展覧会でウフィツィ美術館所蔵の作品と一緒に展示されるかもしれない。
行けるとか行けないとか、現実的なことは考えない、考えない。
更に今回のオークションでは他にもCorreggio(コレッジョ)やAndrea del Sarto(アンドレア・デル・サルト)、若い頃の美しいGiovanni Bellini(ジョバンニ・ベッリーニ)の作品やArtemisia Gentileschi(アルテミシア・ジェンティレスキ)イタリアの偉大な画家たちの作品他、El Greco(エル・グレコ)やMurillo(ムリッロ)の作品も出展される。
参考:https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2022/master-paintings-sculpture-part-i?locale=en
さて、丁度昨年、レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」につぐ96億円という高額で売却されたボッティチェリ作品をしのぐような金額が付くのであろうか?
ちなみに辻邦生の「春の戴冠」、ようやく最終巻(第4巻)に突入しました。
写真:https://www.finestresullarte.info/arte-antica/botticelli-scoperto-disegno-sotto-vir-dolorum
参考:https://www.ansa.it/
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下絵が描かれていた事はニュースでも入ってきましたがX線の画像ははじめて見ました。
アメリカでも展覧会が開催されるのですね。今フランスで開催中のマイアミビーチコレクションの聖母戴冠も展示されるのでしょうかね…隣りの国なのに事情でフランスに行けなく本当に残念です。
こちらのブログの影響で「春の戴冠」を一時帰国中に取り寄せ持ってきましたが、まだ再読していませんでした(笑)再読スタートして会える、会えない、考えず、その日が来るまで忘れようと思います。
(フィレンツェ遊学中の頃、コルシーニ美術館に通っても入れず、屋敷解放日も手違いで叶わず、その絵画が渋谷でお会いできたこともありました…いつか、きっと…)
フランドルの板絵の材はバルト地域からの輸入材でしたが、ポプラはイタリアにいくらでも生えていて、あのポプラの綿毛が空気のなかにいっぱいに舞う光景を思い出しました。ただ、レンブラントがキャンバスを仕事仲間と共有再利用交換したりした故事もありますので、イタリアの画家も再利用はしていたのかな。ただ、贋作者メーヘレンが古いキャンバスの絵を削り取って上に贋作した故事も思い出しました。
コメントありがとうございます。
フィレンツェにご滞在していたこともあったんですね。
Palazzo Corsini…忘れていました。私もあるイベントで1階と階段(?)までは入ったのですが、中には入れず、その時守衛が電話すれば入れると教えれくれ、電話番号もおしえてもらったにもかかわらずすっかり忘れていました。かなり良い作品が有るんですね。
更に日本に来ていたとは…
うわぁ、残念なことしたな…と思っています。
コメントありがとうございます。
作品のリサイクルは古今問わず結構有りますよね。技術の進歩から作者の意図とは関係なく「隠された絵」として暴き出されていますが、どうなんですかね?
最近でもピカソの作品が話題になっていましたが。
https://www.cnn.co.jp/style/arts/35177918.html
渋谷の展示作品はクリアファイルになっていたので購入しました。
Take a Tour of Sotheby’s Masters Week Highlights
/youtu.be/Kfeapp9V29A
この絵自身は一押しではなかったようですね。あくまで営業トークですが、立体的に観るので結構良い動画だと思います。クローナハは意外に良い作品かな。コレッジョのマグダレーナは当初ヌードに近かったのを覆い隠しているようにもみえますね。
彫刻はよくわかりませんが、幼児キリストの足がクロスしているところがどうも気になりました。