あれは18の夏。
まだ夏休みというものが存在した夏。
甲子園の外野で「売り子」のバイトをした。
高校野球大会の間ね。
あれ確か、かちわりを一個売ったら五円とかそんなやった。
そんな売れるもんじゃないし、一日中必死で売ったが、
二千円とかそんなやったかもしれん。
まあ、半分趣味というか好奇心だけでやったバイトやから
当時の私には、まるで問題ではなかったのですがね。
今考えればアホなスケジュール。
あたくしは毎朝五時~九時までは近所のパン屋で働いていた。
それが終わってから甲子園へバイクで走る。
当時あたくしが住んでいたのは京都市左京区。
(ありえねえ。。。そっから甲子園へ毎日いくか?)
もちろんシタミチです。171号をひた走っていたよ。
(余談ですが帰りは1号を使った)
あたくしね、まだ本州へやってきたばっかりでね、
「間に海も山も無いんだからどこだって簡単に行けるじゃん!」
という呑気なざっくりとした感覚しか持ってなかったの。
まだ土地勘というか、スケールが目盛られていなかったのね。
(同じ理由により、越したばかりのGWにヒッチで東京へいってしまう。)
はっはっは。
でもね、知らない道と知らない町を走るのは毎日すっごい楽しかった。
必死で走っていつも第二試合くらいから働いていた。
そして、かちわり、ジュース、ピールその他諸々を箱にのせ
首からさげて(けっこう重い)、そしてずっと
「かーちわりいかーっすかー」と言うて歩くのだった。
これも後から気がついたのですが、スタンドは平地がほとんどない。
つまり一日中ずっと動いていたと言う事は、それって一日中ずっと
階段を上り下りしていたという事だったのですね。
足腰強かったのだな(遠い目。。。)
内野はね、財布もゆるいの。
気合い入れて地元からきた応援団とかね、OBとかね、
真剣にその高校のファンとかいう人達が「お金払って」入る所だし、
使うつもりで来てる人達なのね。
でもあたくし外野でしょ?
微妙なのよね客層が。なにしろタダじゃん?
近所のおっさんが一日中暇つぶしでおったりしとんの、
ほんでたまに吠えて楽しんどんの。
まあ、そんなばっかりじゃないけど、基本的に財布のひも
固いのよ外野は。
フェンス越しに飛ぶように売れている内野の様子を、
猛暑の陽炎の向こうに「ぼーっ」と眺めた事も多々あった。
ま、しゃーないやん外野やねんから。
でもねえ、外野は独特の雰囲気があっていいよー。
今度は是非とも客でいきたいなー。
と思いながらあれからもう何十年も、結局いけず終いであった。
かー。
外野の日陰に適当に陣取って、「おーい!かちわりおくれ~」
言うて、呑気に観戦してみたいなー。
「おー、がんばっとるのー。じゃあビールもおくれ~」いうて。
「ほんならまた二、三十分後においでな~」いうて。
気前よう買うてやりたい。
あ、でも今の子ってすぐ倒れるらしいけど
大丈夫なんやろか、かちわり業界。
ま、心配いらんか。
それにしても、ちっとも買う側になれんのう。。。
そっちのが心配じゃ。