野球小僧

ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~

2015年度に日本の高校野球部に所属している部員は、全国で約17万人です。しかし、毎年約1.5万~2万人の部員が退部しているのが現状です。

人間関係のトラブルで野球部を辞めてしまった
挫折してしまい、野球部を辞めてしまった
野球は好きだが、高校受験に失敗してしまった

高校時代は人生で一番夢を持ち輝く時代なのに、夢を失い目的を失ってしまう。たった一度のあきらめや挫折だけで、その後はもうチャレンジが出来ない。そんな中で、もう一度、学ぶ機会と野球をやる環境を作ったのが、愛知県にあるNPO法人ルーキーズです。平日の午前中は通信制高校のカリキュラムを用いた授業、午後は野球の練習を行い、高校卒業資格を取得し、大学や専門学校への進学と企業への就職を目指します。

と、いう意気込みで2010年2月に山田豪理事長は愛知県常滑市でドロップアウトした元球児たちのためのNPO法人ルーキーズを設立します。ですが、二年経っても生徒は思うように集まらず、経営は常に赤字状態というのが現実です。自宅の電気やガスを止められ、家賃滞納でアパートを追い出されてしまいます。
また、カメラに向を睨み付け、つかみかかろうとする子、お昼にひとりぼっちでお弁当を食べている子(愛知県の野球強豪校に入ったが、自分だけ練習メニューを外されて球拾いばかりさせられたので一年で退部し、そのまま中退し、ルーキーズに入ったものの、仲間から疎外されているらしい)などの姿を追いかけたのが、東海テレビ制作のドキュメンタリー映画「ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~」です。2014年に一部映画館で上映されました。


この予告編に出てきますが、山田理事長は毎日金策のために走り回っています。数年前にはスタッフへの給与未払いで裁判まで起こされています(判決は無罪)。借金返済のため番組スタッフに「筋違いかもしれませんが、助けてください」と土下座までする姿(こんな状況を記録できるはずがないと音声マンがマイクを片付けて撤収しようとするのをカメラマンは片手で引き止めたそうです。事実をすべて受け止めるのがドキュメンタリー取材者としての最低限の礼儀だそうです。なお、このシーンの撮影でカメラマンは泣きながらカメラを回し続けていたそうです)。

そして、ついに行き詰まった理事長は闇金融の借入申込書に記入をします。さすがに見かねた番組スタッフは「危ないんじゃないですか」と止めようとしたそうですが、理事長は毅然とした態度で「何が危ないんですか? ルーキーズがなくなって、子どもたちを守れなくなるほうが危ないんです」と言い放ちます。

また、この映画の中で子どもたちを厳しく指導する監督は、2000年に沖縄の進学校をノーシードから甲子園に導いたものの、その後、岡山の高校で体罰指導が問題視され、高校球界を去ることになった方であり、「ここ(ルーキーズ)が野球再出発の地」としています。

この映画の短縮版が東海テレビ(地上波)で放送された際、監督が選手を指導する場面が視聴者から不適切であるとの意見や出演者の無策さに対するクレームが寄せられ、フジテレビ地上波での放映がNGになりました。私もその場面は観ました。試合に遅刻した少年は警察に伴われて現われます。その後、監督(当時)に少年が遅刻した訳を説明します。その理由とは「昨晩、母親とケンカして刃物を持ち出し、自分で自分の手首を切ろうとした」。すると、監督は少年の頬を往復ビンタした場面です。

この映画を撮った土方監督は「考えてほしい。このシーンをカットして伝えることが果たして正解なのか?」「“命”に関する重要なシーンでしたからカットは考えませんでした。暴力を肯定しているわけではありません。このシーンの何が問題なのかを皆さんと考えられたらと思います」と問いかけてもいます。

ここへ来る子どもたち、それを支える山田理事長にとって、今はルーキーズが唯一の心の拠り所なのでしょう。
表現は良くありませんが、子どもたちが再生を目指す、追い詰められた人生の大人たちの“落ちこぼれ”人生をなんとかしようと再チャレンジ姿を捉えています。

ちなみに、単一高校ではありませんので、高野連には所属しておらず、日本野球連盟に所属し、都市対抗野球大会や社会人野球日本選手権大会などの試合に参戦しています。
所属している愛知県野球連盟はトヨタ自動車、三菱重工名古屋、JR東海、三菱自動車岡崎などの強豪チームが目白押しです。

ルーキーズは結成以来公式戦未勝利でしたが、昨年の第86回都市対抗野球大会東海地区一次予選を勝ち抜き、二次予選へと駒を進めています。

決勝で愛知ベースボール倶楽部を破った瞬間、理事長で山田豪監督は「しかってばかりいた選手たちが、やってくれた。やればできるというのを見せてくれた」と人目もはばからず泣いたそうです。

 

自分のことよりも、子どもたちの将来を案じ、そこへすべてを捧げることが出来る人がいるのですよね。
(昨日の話(http://blog.goo.ne.jp/full-count/e/291a5f39ca91ee8a56d26ebb0537a9cb)は今日の話の前振り) 


コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
このNPOの存在は元・中日ドラゴンズのエースだった 野口茂樹さんが設立当時コーチをしていたこともあって、その存在は知っていました。
こういう状況になっていると知ったのは昨年でしたが(原稿書いたのは昨年です)。

理事長は野球が好きなのでしょうけど、それ以上に子どもたちが好きなのでしょうね。
ここまで情熱を持って、子どもたちのために尽くせる行動力には恐れ入りました。

現在は日本航空学園の支援もあって、なんとか回っているそうです。

eco坊主
おはようございます(*Ü*)ノ"☀

ここに書いてあることだけ読んでも頭が下がります。
子供たちを守るために闇金に手を出す・・
電気、ガス、水道を止められ暗い中でのバナナの食事・・
借金のための土下座・・
どれだけの思いがそうさせるのでしょうか・・

「もうしません!もう大丈夫です!」という笑顔いいですね!
トヨタとの試合でHR打たれてもエラーしてもいい顔です!
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