2015年8月上旬のことです。千葉県内で中学生約50人が参加した野球教室が開かれました。
企画したのは元;慶大監督で中日ドラゴンズ・読売ジャイアンツで活躍した江藤省三さん。協力者として城之内邦雄さん(元読売ジャイアンツ)、谷沢健一さん(元中日ドラゴンズ)、立川隆史さん、藤田宗一さん(元千葉ロッテマリーンズ)や江藤さんの監督時代の教え子がコーチを務めました。
対象は中学校の部活動で軟式野球に取り組んでいる中学生です。
高校進学時に硬式野球になじめず野球をやめてしまう子どもが多いため、少しでも長く競技を続ける一助になればとのことです。
実際、硬式球に慣れるまでの問題でしょうけど、ボールの硬さ、打球の速さなどに戸惑うことや、中学時代に硬式経験が多い同級生とのスタート時の差の焦りなどから、野球を続けることを諦めてしまう子どもは多いです。
そんな硬式野球難民を救おうと、江藤さんは2006年から神奈川県で中学生向けにこのような野球教室を開いてきたそうです。途中、慶大監督のため、休止していたそうですが、今年から再開しました。参加者の中には、米独立リーグなどで登板した「ナックル姫」、吉田えり選手(石川ミリオンスターズ)もいたそうです。
高校生にもなれば、自分でやりたい部活動を選ぶでしょう。
一度は野球部に入ったということですから、野球が好きなのはもちろんのことでしょう。でも、いろんな理由で続けられない、辞めざるを得なくなることはあります。
西日本のある甲子園常連校の一年生。彼は小学一年生のときから野球を始め、地元では有名でした。中学時代は学校の野球部ではなく、県内のボーイズリーグの名門チームに所属しました。
そして一昨年4月に野球部に入部。家から通える距離にですが、野球に集中できるという理由で主力選手は全員寮生活するため、寮に入ることになりました。
昨年の夏、三年生が引退して新チームになると、彼は退寮を命じられます。つまり、主力メンバーからの“戦力外通告”を受けてしまいます。
そして、彼は自宅から通うようになって、家ではふさぎ込むことが多くなってしまいます。
「息子はしばらく家で『野球の話をするな』と言っていました。何かフォローしたいんですが、息子が拒絶していたので、そばで見守るしかできません…。母親の私も落ち込んじゃって…。8月末になってようやく徐々に話せるようになってきました。このまま元気になって野球に打ち込めば、また寮に戻れるかもしれない。毎日ハラハラドキドキです」
この話が事実かどうかは判りません。でも、これに近いような話は実際にあると思います。
技術的な軟式から硬式への橋渡しを目指す教室は良い取り組みだと思います。また、これに興味を持って、野球を続ける子が一人でも多くなることは、野球界の今後の発展にも繋がると思います。
ただ、難しいことではあるでしょうけど、その後の精神的なサポートも出来るような仕組みがあればいいのでしょうけど。
昨年から、欧州では25万人以上が海を渡り、航海中に2000人以上が命を落としているという、難民問題に直面しています。
日本の高校野球と同じレベルで語れる問題ではないのは承知していますが、放っておいても、彼らの行き場所はどこにもないのが現実です。
受け入れ先、体制。解決するためには、まだまだ準備し、整備しなければならない課題は山ほどあるでしょう。
戻りたいけど、戻れない。特に深刻な心のキズを抱えてしまうと、元へ戻ることによってそれが悪化する可能性があり、新しい受け入れ先が適しているかも知れません。
難民問題は枠組みを超えて解決しなければならない、現社会の問題です。