社会人野球の単独チーム日本一を決める第44回日本選手権大会は京セラドーム大阪で11月12日に決勝が行われ、三菱重工名古屋(東海・愛知)がJFE西日本(中国・広島)を延長13回、2-1で破り、9回目の出場で初優勝を飾りました。
大学野球も面白いですが、社会人野球を改めて試合を観てみますと、アマチュア野球最高峰の社会人野球はさらに面白いものがあります。また、この大会では、優勝した三菱重工名古屋の勝野昌慶選手(中日ドラゴンズ3位)の他にもベスト4入りに貢献した新日鐵住金鹿島の大貫晋一選手(横浜DeNAベイスターズ3位)や大阪ガスの近本光司選手(阪神タイガース1位)など、今大会の出場選手中10名以上がドラフト指名を受けています。また、計27回1失点で投げ切ったJFE西日本の河野竜生選手、高卒2年目の150km/h右腕・立野和明選手(東海理化)など2019年のドラフト候補の選手らのプレーを観るいい機会でもありました。
さて、決勝も好ゲームとなりました。三菱重工名古屋は右サイドスロー西納敦史選手が今大会初先発。JFE西日本は一回戦、準々決勝で完封勝利を挙げている20歳の左腕・河野竜生選手が先発。
先制はJFE西日本で、1回裏1アウトから二番・岡将吾選手のホームランで1点を先制。三菱重工名古屋は3回表2アウト一・二塁から、二番・秋利雄祐選手がセンター前タイムリーヒットを放って同点に追いつきます。
その後、試合は1-1の同点で進んでいきますが、JFE西日本は4回から7回まで、毎回得点圏にランナーを出すなど試合を優位に進めますが、三菱重工名古屋の西納選手と6回途中から登板した服部拳児選手がピンチを凌ぎます。
JFE西日本は8回裏にも1アウト二塁のチャンスを迎えると、三菱重工名古屋は、前日の準決勝で完封勝利を挙げた勝野昌慶選手をマウンドに送ります。三菱重工名古屋は1アウト満塁に追い込まれますが、勝野は次のバッターを空振り三振に打ち取り、三番・古田塁選手に右中間に大飛球を打たれたもののセンターのファインプレーで得点を与えません。
試合は1-1のまま延長戦に入り、JFE西日本は2番手に右腕・谷中文哉選手、さらに12回2アウトからは今大会で好リリーフを続けている左腕・中川一斗選手へと継投していきます。
三菱重工名古屋も11回から4番手の右腕・萩原大起選手が登板し、試合は総力戦です。
試合が決したのが13回表。三菱重工名古屋は五番・山田敬介選手が2アウト一・三塁から三遊間への打球を放ちます。ショートの二塁送球がセーフとなり、内野安打で三塁ランナーの生還が認められ、これが決勝点になりました。山田選手は8回2アウト満塁での右中間への大飛球をファインプレーで失点を防ぎ、13回裏にも左中間の大飛球をダイビングキャッチするビッグプレーでチームを助けてくれました。
三菱重工名古屋0010000000001|2
JFE西日本 1000000000000|1(延長13回)
MVPには3試合で2勝を挙げ、計19回1/3を投げて1失点と好投した勝野選手が選ばれています。
この試合で先発した西納選手は、異色の国立富山大出身です。石川県出身なのですが、なぜ地元の金沢大ではなく富山大に行ったのかとインタビューで聞かれたとき、「そこまでの頭がなかったんです」と笑っていたそうです。逆に富山大時代には、高度な野球には縁がなく、スタッフによると、「頭脳はともかく、野球に関してはまるで頭が悪かった」と言われています。
なお、優勝インタビューで、「JFEの皆さん、野球人として、いい試合ができたことを感謝します」と、相手への敬意を口にしたのがキャプテンの安田亮太選手です。千葉ロッテマリーンズの安田尚憲選手の12歳上のお兄さん。もともと右打ちだった弟に、左打ちを進言したのが、このお兄さんだそうです。「当時は左打ちが隆盛でしたが、その対策として左投手が多くなれば右打者が有利になるでしょう。だけどそこからさらに時間がたてば、また左の時代がくると考えたんです。ただ、今もまだ左打者が多く、右の長距離砲が貴重じゃないですか。そう思うと、失敗だったかな(笑)」とのことです。
来年、機会があれば社会人野球を観に行きたいと思った大会でした。