またというか、なんていうか。国会議員による適正処理という名の不正取得のお金の問題は一向になくなりませんが、部活動指導者による体罰という名の暴力も一向になくなりません。
以前、私はこのブログで書いたことがあるのですが、名古屋市内の高校硬式野球部監督が部員に暴行し、ケガをさせてしまいました。この監督は、元プロ野球選手で、引退後は一般企業に入社し、教員免許を取得して教諭になった苦労人として知られています。
ニュースで放送された映像では、何人もの部員を殴ったり蹴ったりしていました。鉄拳制裁などという生易しいものではなく、もはやキレて暴れまくっているとしか表現できない様子が映し出されていた。撮影は偶然通りがかった人とかという話もあります。
この監督は、一時はプロ野球でエース級として活躍し、引退後も「苦労人」と言われた人です。高校時代は控え投手でしたが、大学に進学後、三年生の時、2部リーグで優勝し、1部昇格を果たしました。1部リーグでは18試合に登板し4勝9敗、防御率3.80でした。
1993年にドラフト1位でプロ野球に入団。1994年6月に1軍初登板、7月には初先発し、6回2失点で初勝利を挙げました。1995年は先発・中継ぎとして一軍に定着し、9月には初完投勝利を記録しました。1996年には年間を通じて先発ローテーションを担い、初めて規定投球回数に到達。7月には初完封勝利をマーク。投球回はチームトップを記録し、防御率も先発投手陣でトップの3.30だったが、打線の援護に恵まれず8勝15敗に終わっています。エースとして期待された1997年以降は故障に悩まされ、2000年にトレードで移籍。その後は一軍のマウンドに立つことはなく、シーズン後に自由契約となりました。
その後は台湾球界に移籍したものの、思うような成績を残せず、戦力外通告を受けて現役引退。一般企業に就職後、奥さんの勧めで教員免許を取得するため母校の大学に再入学し、高校教員の免許を取得しました。
暴力をふるった理由について、野球部員は登校時にスマートフォンを学校に預ける約束(規則?)になっているとのことですが、この規則を守らない部員が多いことに腹を立てたというのです。
ニュースによりますと、ある部員は「ぼくたちは暴行を見ていたんですが、途中『バットを持ってこい』って」などと証言。「さすがにいつもの先生じゃなく、やりすぎなんじゃないかって」とも話しており、腹を立てたといっても、限度を超えすぎているとしか思えません。
さて、このような運動部の指導者による体罰や暴言など威圧的言動は、社会問題化しているにも関わらず、一向に減らず、忘れたころに再燃する状況を繰り返しています。
ここ最近での高校野球においても、1999年夏の甲子園で優勝経験もある群馬県のチームの部長が今年6月、部員の顎やユニフォームをつかむなど威圧的な言動を繰り返したとして解任されており、コーチも4月に「試合に出さない」などと脅したとして注意を受け、監督も8月に解任になっています。
2006年春の甲子園に出場した北海道のチームの監督は昨年11月に、部員に平手打ちをしたとして停職処分を受け、監督を退任しました。2013年と2016年の夏の甲子園に出場した富山県のチームの監督は昨年1月、部員の頭をたたいたり、蹴ったりしたとして監督退任を申し出て、一時、指導から外れました。
奈良県のチームの監督は昨年11月、練習試合後に部員全員に20分間正座させ、立ち上がろうとした部員が転倒して靱帯を損傷させたことが発覚。昨年3月には、鳥取県のチームの監督が部員にペナルティーとして毎日1~3時間のうさぎ跳びをさせ、1人に両ひざを負傷させていました。
その他にも、昨年10月~今年4月に島根県のチームの監督が部員に平手打ちや蹴り、昨年8月~今年9月、高知県のチームの監督が部員をバットや平手でたたく、昨年8月、青森県のチームの監督が部員を蹴る、昨年1月、大分県のチームの監督が部員の脚や腹を蹴る、など、昨年から今年にかけて判明しただけでも、キリがないほどです。
ほとんどの場合、当事者である指導者が辞任・解任されることで幕を引いていたりしますが、中には監督や部長が逮捕や書類送検されたこともあります。いずれも部員が警察に被害届を相談し、処罰を望んだことが理由とされます。
1997年と1998年の夏の甲子園に出場した愛知県のチームでは、当時の監督が2013年7月、練習中に部員が疲れて座り込んだことに腹を立て、顔や腹を殴り、脇腹を蹴ってろっ骨を折ったとして傷害容疑で逮捕されています。この監督は1998年夏の甲子園に出場し、ベスト4に進出。好打の選手として活躍したOBでした。当時のニュースでは、学校関係者は「礼儀正しい普通の青年だった」と話しています。
ほかに2011年3月、大阪府のチームの部長は部員の頭を殴ったとして暴行容疑で書類送検されています。2012年4月、広島県のチームの監督が部員の顔を十数回殴り、急性難聴などの傷害を負わせたとして逮捕されています。
診断書とともに被害届が出されれば、立件するかどうかは別として警察が捜査することになります。ケガをしていれば「傷害罪」(15年以下の懲役または50万円以下の罰金)、ケガをしていなくても「暴行罪」(2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)に該当します。しかし、部活動の指導者による暴力が表面化しても、基本的には教育現場の判断・裁量に委ね、警察としては積極的に介入することはないそうです。
今回の監督の暴力は被害届が出されれば犯罪に問われる可能性もあると思います。
いかなる理由があれ、指導者と部員という立場を考えれば、指導者が手を出すことはまずいでしょう。さらに、突っ込みますと、今回の場合も含めて、共通しているのが「カッとなってしまった」ということです。キレる子どもが一時期話題になりましたが、キレる大人です。それこそ、キレたことにより、部員に暴力をふるうということは、それは教育者どころか、社会人として失格でしょう。
高校野球は教育。
であるならば、その指導者は教育者です。
感情をコントロールできないような教育者がグラウンドで指導している限り、このようなことはなくならないのかも知れません。