福岡・東筑高は今春、現役で161人が国立大に合格した福岡県立の進学校です。1日平均2~3時間の練習で、激戦区の福岡県を勝ち抜いてきました。
指揮を執るのは東筑高OBで、体育科教諭の青野浩彦監督。選手として1978年夏、指揮官として1996年夏の甲子園を経験しています。
インタビュー記事を、そのまま転載します。
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――強豪が多い福岡で優勝。
「“(優勝を)狙ってもいないのに行ってしまった”というのが強さの秘訣かな。逆に、県大会でのプレッシャーはすごかった。公立高校にとっては、県大会が『ミニ甲子園』みたいな意味合いがある。欲がなかったのがよかったのかもしれません」
――野球ばかりの私立には負けたくない?
「私立相手には負けてもともとだから、めちゃくちゃ思い切ったことができる。逆に私立は公立に負けられないというプレッシャーがあるでしょう。今回の県大会(の終盤)は全部甲子園の経験校だったので、面白かったですね」
――1日2~3時間しか練習しないと。
「うちは『勉強重視』というより『勉強の学校』ですからね。今は『完全下校』というのがあって、20時までには学校を出て帰りなさいというルールが、ここ6年くらいの間にできたのです。それまでもあったけど、そんなにやかましくなかった。今は厳しくなりましたから。月曜と金曜はグラウンドを全部使えるけど、火曜と木曜は使えるのは内野だけなので、どこか外で練習できる球場を見つけてやります。水曜は18時からバッティングができるけど、できないときは内野を使って守備練習やトレーニングを工夫しながらですね」
――試合は一日順延。練習場所の確保がなかなか難しいと。
「もし、練習場所がなかったら自習にしようか。一日やっただけで、何か(劇的に)変わるわけじゃない。体を動かさないのが不安なだけで、旅館の近くに公園があったからそこでもいいかなと」
――大阪に来ても勉強の時間は取っているのですか?
「あえて時間を区切ってやらせることはしていないけど、勝手にやってるみたい。二年生は夏の課題、三年生は受験勉強をしていますよ。(宿舎が)同じ旅館の早稲田佐賀さんは、勉強の時間を2時間くらい取っているらしいです。シーンとして素晴らしいなと思って。うちは自由に、自己責任と思ってそういうことはしていない」
――生徒に考えさせる野球をしていると。
「自主性は大事です。僕が考えなくても、生徒もバカじゃないから自分たちで考えている」
――個々にもそんなに話すことはない?
「ないですね。放っておいた方が自主性を与えられる。でも、放任じゃない。自由を与えてるけど、行動は見ているので。野球よりも生活態度や学校での態度を小耳に挟んで怒ることの方が多い。『野球(部)は人間力を育てるところ』なんて言うけど違う。悪さをしないために野球をやってるみたいな学校もあるでしょう。でも、野球に縛られたものが外れたら結局ダメになりますよ。ある他校の私立で、謹慎になった学校の先生が『曲がった竹を真っすぐな竹に縛り付けて一生懸命に真っすぐにしようと思っても絶対に無理』と言っていたのを覚えています。素行が悪くても野球がうまいから、といって取るのはダメという話ですよね。挨拶して舌を出してる子がいたり、監督がいなくなってタガが外れる子もいるかもしれない」
――そういうことはミーティングで話すのですか。
「いえ、言いません。僕が思っているだけ。ミーティングはみんな短くてびっくりしますよ。30秒くらい。試合前に『こういう球を狙って、こうしようかな』というときは5分くらい。いっぱい言ったって頭に入らないですから。私の思いつきも予選では結構当たった。天才的なAB型ですから(笑)」
――選手はみな県内出身ですね。
「県内どころか地元の子がほとんど。鹿児島本線と筑豊本線の交点が(最寄りの)折尾駅なので、校区以外からも来るんです。成績がいい子が野球もできて進学校というのがうちくらいしかないから、意外と集まってくれる」
――公立ですが、スポーツ推薦は?
「推薦入試があります。(来年迎える)創立120周年に向けて学校がスポーツに力を入れてくれて、推薦枠を増やしてくれたみたいです。いつもは推薦で野球部に来るのはだいたい5~6人だけど、今は二年生に11人、三年生に6人います」
――推薦に関して成績は関係なし?
「冬になると、試験休みがあるので、土日は生徒の勧誘で中学生を見に動くんですけど、成績がいいか聞いて、『悪い』と言われたらもう引き揚げます。推薦でも評定がなかったら話になりませんから。東筑に入る子は『オール5』ばかりで、それでもいっぱい落ちる。満点は『45』ですけど、今は相対評価でなく絶対評価なので、本当にいいのか分からないですが」