お世辞にも、現在、友好的な状況とは思えない状況になってしまった日韓関係です。それに配慮してなのか、先日まで韓国・機張(きじゃん)で開催されていた第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップへ日本代表が韓国に向けてへ出発する際に、日本の国旗を制服から外したりして、論議を巻き起こしたりもしていました。
さて、日本代表は9月7日にスーパーラウンド最終戦を迎え、オーストラリア代表に4-1で完敗。決勝進出を逃した上に、3位決定戦進出も逃し、2012年大会以来4大会ぶりに表彰台を逃し5位となりました。
オーストラリア戦の前日6日に行われた韓国代表との一戦は延長10回タイブレークの末にサヨナラ負け。この試合の9回裏の韓国の攻撃。2アウト一塁で日本代表のピッチャー宮城大弥選手(興南高)が韓国代表の一番バッターのリー・ジュヒョン選手の頭部に当たるデッドボールを与えました。一塁へと進んだリー選手に対して、宮城選手は帽子を取って謝罪の一礼をしました。
すると、これに対してリー選手もヘルメットを脱いで、頭を下げて応えました。
この場面を主催のWBSCの公式ツイッターが「日本と韓国、リスペクト」と記して動画投稿して、反響が広がりました。
宮城選手「まず最初に当てた瞬間、『これはやばい』と思って、一塁に着くまで5回くらいですかね、(リー選手に向かって)謝りました。一塁に着いた時に目と目が合ったので、目を見て、謝りました。ヘルメットを取ったの見て、安心しました」「そもそも、死球を当てたら謝るのは当たり前。ヘルメットまで取ってくれたのは安心しました。そのあと、普通に野球をすることができました」とコメントしています。
もし、リー選手の反応がなかったら、韓国側からのヤジなどが飛んでくるのではないかという不安もあったそうですが、宮城選手は日本でデッドボールを当てた時でも、一塁にバッターが着いてから目を見て、頭を下げるそうです。きちんと目が合ってから、気持ちを伝えるようにしているとのことです。
この場面に韓国メディアも注目し、スポーツ京郷は「熾烈な韓日戦の勝負の中で輝くスポーツマンシップ 死球に丁寧に礼儀正しいリー・ジュヒョンと宮城」と題し「リー・ジュヒョンは、幸いにも大きな衝撃を受けていなかったようで、すぐに一塁に走った。しかし、宮城はリー・ジュヒョンが一塁に到着するまで待って帽子を脱いで申し訳ないと合図をした。リー・ジュヒョンも続いてヘルメットを脱いで、屈んで謝罪を受け入れた」と記事で紹介しました。
韓国では、以前、儒教を国教とし、朝鮮半島は「儒教の模範生」とされました。現在の韓国においても、儒教は思想的倫理観の根幹をなしています。
儒教の基本理念は「仁(じん:人を愛すること、他者を思いやること)」であり、これを実践する手段を「礼(れい:人間の感情を形として表すための規則や慣行)」としています。
日本も韓国も礼節を重んじる習慣のある国です。これが日韓のあるべき姿だと思います。
悪化する日韓関係の中で行われた大会でしたが、宮城選手とリー選手が示したお互いに敬意を払う姿、フェアプレーの精神があれば、きっと分かり合え、関係も改善されていけると、私は信じています。