野球小僧

挑戦

以前、甲子園ではなく、プロを目指す高校野球の話題を書きました。
これはこれで、一つのスタイルであり、今までの野球常識への挑戦です。

他方、現状のシステムの中でプロを目指すという挑戦をした高校球児もいます。

現在、高校三年生のそのピッチャーは少年野球時代に2つのチームを全国優勝に導き、高校の公式戦では1試合で3点以上失ったことがないそうです。日本の複数のプロ野球球団とMLBのスカウトが彼に注目しています。

彼の目標は自分の父親が得られなかったプロ野球選手になるためのチャンスを掴むことです。

この目標に向けて、彼と父親は、今までとは違う取り組みをしています。
それは彼の父親が高校時代にケガをして、投げられなくなってしまったことから来ているものだそうです。

そのため、過度の投球や自分の肩に不安を感じた場合、父親の助言を得て投げないようにしているそうです。

「高校野球は武士道だ」と言った監督がいましたが、確かに現在の高校野球の姿の一部として、“チーム献身”、“指導者服従”から長時間練習、ピッチャーに至っては投げ込みというのが伝統にもなっています。

しかし、自分の意思で肩を温存し、登板を拒むというのは、なかなか出来ません。
この考え方はプロで成功するための熱意に欠けている証拠なのではないかと、一部のプロのスカウトから疑問を持たれてしまいます。

しかし、彼は「自分は自分」と語っています。

今の、今までの考え方でしたら、この考え方は日本でのプロ野球を目指す上でのストーリーではありませんよね。
プロになりたいと思っている高校ピッチャーはすべての試合で投げ勝ってやるという意気込みを持っています。
それも甲子園で投げ抜きたいと考えているのが普通でしょう。

彼が所属するのは普通の県立高校。甲子園には一度も出場していません。
県内の私立強豪校が10年連続して甲子園に出場しています。

中学生の時、彼は地元のチームに所属していました。
父親は彼に「週末に投げたときには月曜日に投げるな、重要度が低い練習試合では必ずしも全力で投げる必要はない」と指示して、そのとおりに行動していました。

そして、全国大会の決勝戦に登板し、優勝しました。その後、AA世界野球選手権大会に出場するU-16日本代表メンバーに選ばれます。そんな、ある日、父親の車に乗っていた彼は携帯電話越しにチーム関係者と口論するのを聞きます。

チーム関係者は世界選手権の前に行なわれる別の大会に彼を投げさせたかったそうです。
しかし、「大会前3日間は休まないと」と父親は言っていたそうです。
その中でチーム関係者は退団するようにも迫っていたそうです。「でも父の言っていることは間違っていないと思った」と彼は言っています。しかし、その後、仲介もあって和解しし、U-16代表として参加し、日本代表は3位となり、彼は大会に参加したすべてのピッチャーの中でトップの防御率を残します。

評判が高まると、複数の私立高校から声がかかります。しかし、そうした誘いは断ります。私立強豪校では、彼の肩を犠牲にしてでも、勝利を最優先させるのではと考えられたからだそうです。
「ああしろ、こうしろと言われて断れない状況になる。投げろと言われたら、はい、と言うしかなくなる」と言う。だから「自主性があって、選手が自分で動けるところの方がいいかと思った」とのことです。

彼が進学した近くの県立校。野球部の監督も珍しく柔軟な考えを持つ人物。高校時代には日本でも最も厳しい野球部の一つでプレーし、甲子園に3度出場しているが、自身が見てきた厳しいやり方とは違う指導法を実践していた。選手たちのスケジュールや練習メニューは細かく指示せず、柔軟性を与え、叱り付けることもほとんどないそうです。

「一生懸命ではないと見られることもある。厳しくないというわけだ」と話します。「でも私は自分で考え、動くことを優先したい。きつく言われてやるとか、殴られるからやるということであってはならない」と言う。そして「本人の意志を優先する」と監督は言う。

“長い練習時間を課して肉体をいじめれば、言いなりの選手が短期的に成果を出すことはある。ただ、選手に自分で考えさせることにつながらないし、野球を嫌いにさせる可能性すらある。(投球制限は)必要なので、できる限り早い時期に取り入れるべきだ。”

今年の春季大会。
彼はすべての試合での先発を予定していなかったため、どの程度戦えるかが注目されました。
初戦の県立高校で、手強い相手とは言えなかったが、5回が終わった時点で3-2。他のピッチャーを先発させ、1点リードしていたが、勢いを失いかけて、6回から彼がリリーフ登板し、12-3でこの試合に勝ちました。
次の対戦相手はより手強い県立高校。今回は彼が先発して9回を投げ切って6-1で勝利し、 2日後の準々決勝に進出。
準々決勝は別の選手が先発し、チームは準決勝へと進出。

準決勝は県を代表する強豪校(過去20年間に9回甲子園に出場)との対戦。
しかし、そのマウンドには彼は立たなかったそうです。

試合の2日前。数人の三年生部員と彼は話をしていたそうです。「準決勝は投げないのか」と。彼に投げて欲しかった。最大のライバルであり、夏の甲子園大会の予選でも対決する可能性が高いチームを倒せるチャンスだった。

だけど、彼は準備不足、そして今大会で自分のピッチングを見せない方が、夏の予選で対戦したときに有利になると主張し、登板を拒否したそうです。

その試合を見ていたスカウトたちは、彼のやる気を疑問視したそうです。
「言えるのは残念、ただ残念だということ」、「彼の気持ちや闘争心の部分も気になる。全国屈指のスラッガーと対決してみたくないのだろうか」。

それでも彼と父親は甲子園への出場がかかる夏の予選に照準を合わせることにしていたとのことです。

夏の県大会。
彼は準決勝戦でライバルとなった私立高校に6-11で敗れました。

この先、彼が目標としていたプロになるかどうかは判りません。
でも、プロになれなければ、今までやってきたことが何のためかが判らなくなってしまうことも事実です。
ドラフト、注目をしていきたいです。

コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
一日間違えました。明日の更新が終わって、明後日からリダイレクトされる予定です。

ドラフト候補に、この選手の名前がありました。
おそらくですが、一位または二位指名くらいだと思えます。

これは、これで一つのアプローチでしょう。
こういう気概のある選手が一人くらいいた方が面白いですしね。

ドラフトのみならず、今後の動向にも注目です。
eco坊主
おはようございます。
今日はこちらにアクセスできたのでこちらに書きます。

スポーツライターKUROSUKE氏が仕入れてきた話を真剣に読ませていただきました。
中途半端に野球をしてきたオイラにどうこう言う事はできないですね。
今の風潮は彼の意とするところではないでしょうし
かといって彼(父親)の思いも一つも目標に対する手段でしょうから!

最善と思われる手段を選択した時に出てくる結果・・・また吟味すればいいでしょう。
そう思いますよ!
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

最新の画像もっと見る

最近の「高校野球」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事