「dropped third strike / dropped third strike」
日本語に訳すと「捕球されなかった第3ストライク」となります。
つまり、一般的に言う「振り逃げ」のことです。
ここで問題です。次のうち、「振り逃げのルールとして正しい」のはどれでしょうか?
① バッターに三振はつかない
② 2アウト一塁では振り逃げはできない
③ 実は振らなくてもよい
解答と解説
「振り逃げ」とは正式には「第3ストライクの球をキャッチャーが正しく捕球できなかった場合、バッターはランナーになれる」というものです。
つまり、キャッチャーは第3ストライクを正しく捕球できなかった場合には、そのままではバッターはアウトにはならないため、キャッチャーは一塁に送球するか、バッターにタッチするかのどちらかが必要になるのです。
ほとんどの場合、見逃し三振となるはずの第3ストライクのボールをキャッチャーが捕球できないことはあまりないはずですので、「振り逃げ」となるのはほとんどが、空振りしたボールをキャッチャーが捕り損ねた場合になります。
でも、ルール上は振ったかどうかは関係ありません。キャッチャーが捕り損ねたら、バッターは振らなくても走ることは問題ありません。いいえ、むしろ、走らなければなりません。
ですから、英語のuncaught third strike / dropped third strikeは“swing”が付かないのです。
また、振り逃げが出来る場面と出来ない場面があります。それは「封殺(フォースアウト)の場面では振り逃げは成立しない」のです。
すべての場面で認めてしまうと、1アウト一塁の場面でキャッチャーがわざと落球して2-4-3のダブルプレーを成立させることも可能になってしまいます。ですから、ノーアウトや1アウトでランナーが一塁または一・二塁にいる時は、振り逃げは出来ないルールになています。しかし、2アウトの場合はどこにランナーがいても振り逃げは成立します。
ただし、本塁を囲んだ丸いラインとしてダートサークルが引かれています。バッターが振り逃げに気づかず、このラインから外に出ると自動的にアウトになります。
ということで、この問題は③の「実は振らなくてもよい」だけが正解です。
2007年7月28日
横浜スタジアムで行われた第89回全国高校野球選手権神奈川大会での東海大相模高対横浜高の準決勝。
四回表、東海大相模高は3点を先制し、さらに2アウト一・三塁。バッターは2ボール2ストライクからのショートバウンドの投球をハーフスイング。球審は一塁塁審にスイングを確認し、一塁塁審はこれをスイングと判定し、球審はスイングを認めました。守備に就いていた横浜高は全員ベンチ前に引き揚げ、次の攻撃に備えて円陣を組んでいた。
三振を取られた東海大相模高のバッターは打席を少し出かかっていましたが、一塁に向かって走り出し、塁上のランナーを含む三人が無人のダイヤモンドを駆け抜けました。
審判団はプレーの確認のため試合を一度中断し、協議の上、この振り逃げによる3点の得点を認めます。
横浜高監督が抗議したものの、判定は覆らず、得点は6対0となり、四回表2アウトランナーなしから試合再開します。
横浜高のキャッチャーは第3ストライクの投球をワンバウンドで捕球しているにもかかわらず、東海大相模高のバッターに触球をせず、一塁にも送球していなかった。また、バッターはダートサークルから出ず(走塁を放棄したとみなされる前に)一塁に向かっていて、振り逃げが成立する条件は整っており、ルール上は何も問題はありません。
あえて言うならば、守備側の思い込みによるミスでしょう。球審のスイングを認めたジェスチャーを「三振でバッターアウト・スリーアウトチェンジ」と勘違いしたしまったことでしょう。
また、もう一つ特質するのは東海大相模高のバッター。走塁を放棄せずに、基本に忠実に「振り逃げ」を実行したこと。あそこでがっかりとして、行動を起こさないのは野球人としてダメでしょう。
さて、この一件は「振り逃げ3ラン」とも呼ばれています。
試合は終盤に横浜高の反撃がありましたが、結果的にこの四回の得点が決め手となり、6対4で東海大相模高が勝って決勝戦に進出しています。
ちなみに、このときの東海大相模高のバッターは菅野智之選手(現;読売ジャイアンツ)です。
振り逃げは恥ずかしいことではありません。
がっかりしている暇があれば、一塁へ全力で走ることです。
それが出来ない方を恥じるべきです。