すでに、「あの夏」の再現があるかどうかの話題になりました。第89回 選抜高校野球大会(2017年3月19日開幕)の組み合わせ抽選会が10日に行われ、今大会も注目のスラッガー・清宮幸太郎選手を擁する東京・早稲田実業高と1992年夏の甲子園で石川・星稜高と対戦し、スラッガーだった松井秀喜さん(元ニューヨーク・ヤンキース)を全5打席敬遠する作戦をとった馬淵史郎監督率いる高知・明徳義塾高が第5日第二試合で対戦することが決まったからです。
組み合わせ後、馬淵監督は清宮選手の打席で敬遠の指示を出すのかと問われ「聞かれると思っとった」「場合によっては敬遠しますよ。清宮君だけに限らず。終盤でうちが勝っていて、(清宮の場面が)2死二塁とかだったら」と。ただし「無死の場面での敬遠とか、全打席敬遠は考えていない。そんなことをしたら松井に怒られる」とでした。清宮選手の力量は認めるものの、松井さんに比べるとまだまだという意味でしょうか。
大会は愛知・至学館高 vs. 広島・呉高の開幕戦を皮切りに、初日第二試合で昨秋の明治神宮大会を制した大阪・履正社高と東京・日大三高との優勝候補同士の対戦となりました。さらにこの2チームには安田尚憲選手(履正社高)、金成麗生選手(日大三高)という強打者を擁しており、初日からのホームラン合戦にも注目です。また、「春連覇」を目指す奈良・智弁学園高も初日に登場し、第三試合で熊本・熊本工高と対戦します。「夏春連覇」がかかる栃木・作新学院高は大会4日目第三試合で愛媛・帝京第五高との組み合わせとなりました。
21世紀枠に選出された岐阜・多治見高は大会第2日目第二試合で兵庫・報徳学園高、高知・中村高は大会第2日目第三試合で群馬・前橋育英高、岩手・不来方高は大会第5日目第三試合で静岡・静岡高との対戦になりました。
偶然でしょうけど、初日第三試合の奈良・智弁学園高 vs. 熊本・熊本工高のほかに第4日目第二試合で奈良・高田商高 vs. 熊本・秀岳館高の奈良県 vs. 熊本県が2試合となっています。
さて、冒頭の馬淵監督の話ですが、以前、朝日新聞のインタビューでこう言っています。
「あの作戦に後悔はありません。やりたい作戦ではないですけどね。リスクを背負いますから。松井君は別格でした。手が伸びるところに投げたら打たれる。投げるとしたら内角ですが、死球の危険がある。ぶつけたくはない。あの時、うちには絶対的なエースがおらず、ベンチには投手を5人も入れました。普通5人も入れませんよ。多くて3人です。背番号1は岡村でしたが、ひじを痛めていた。だったら、コントロールがいいのは河野。岸だったら絶対勝負していました。寺本(元千葉ロッテマリーンズ)でも、高橋(元ヤクルトスワローズ)でも。プロに行くような投手がいれば勝負していました。それか、松井君に近い力をもった強打者があと3人ぐらいいたら、敬遠していなかったかもしれない。何より、星稜の山口君(元近鉄バファローズ)が好投手だったんです。実際にあの試合も星稜の7安打に対し、うちは4安打。僅差で勝つしかなかった。うちにもう少し打力があったら、松井君にソロ本塁打を打たれてもいい、となったかもしれない。色んなことが重なったんです。これはもう運命」
そして、最後に一言、
「ただ、今なら(5敬遠は)やらん。当時と同じ状況になっても、同じ選手でも。あんな風に社会問題になると分かっていたら、やりません。学校にも迷惑かけました」
この馬淵監督の話はまたいつか書いてみたいと思っています。