昨秋の中日ドラゴンズ・高卒ドラフト1位の根尾昂選手がシーズン終盤に一軍登録され、9月29日の阪神タイガース戦(阪神甲子園球場)で、一軍デビューしました。
7回裏からショートの守備に就き、先頭のタイガース・北條選手の初球打球のゴロがいきなり飛んできて、一塁への送球が少しそれるも、しっかりアウトに仕留め、一軍での初の守備機会をこなしました。糸原選手の三遊間深いゴロはグローブに当てて2ベースヒットにしてしまいましたが、木浪選手のセカンドゴロのゲッツーをこなして、守備の方は無難な結果でした。
注目の打撃の方は8回表の2アウト一塁の場面で登場。タイガースのジョンソン選手の前に3球三振。直前のバッターの石垣選手が初球からバットに当たらなくてもフルスイング(結果は振り逃げ)していたのとは対照的に、1球目、2球目を見逃し、3球目のスライダーをハーフスイングに取られての三振でした。
高校時代に投打二刀流で注目され、ドラフトでは4球団が競合した逸材です。しかし、1月の自主トレ中に右ふくらはぎ肉離れ、4月には左手人さし指を負傷し戦列を離れた。プロとして1年間を戦う基礎体力をつけながら、プロで“本格挑戦”する遊撃の守備は実戦も併せて特訓。打撃では一時、積極的に振りにいく姿勢があだになり、ボール球に手を出す打席も多く、打率はウエスタン・リーグ規定打席到達者の最下位が定位置でした。最終的には17人中16位で最下位脱出しています。フォームを試行錯誤して光が見えてきました。
今シーズン、ウエスタン・リーグでは108試合に出場し、打率.210、ホームラン2本、33打点、9盗塁の成績を残しており、期待感があっただけに数字だけを見ますと、非常に物足りないものを感じます。しかし、確実に成長していることも事実でして、9月は62打数22安打で打率.355。「何かを変えたというより、甘い球を仕留められたという感じ」とのことです。
3月 13試合 54打数 8安打 ホームラン1本 3打点 0盗塁 打率.148
4月 9試合 30打数 4安打 ホームラン0本 1打点 0盗塁 打率.133
5月 19試合 61打数 8安打 ホームラン0本 7打点 1盗塁 打率.131
6月 14試合 55打数 12安打 ホームラン0本 2打点 2盗塁 打率.218
7月 20試合 76打数 20安打 ホームラン1本 7打点 3盗塁 打率.263
8月 18試合 72打数 12安打 ホームラン0本 3打点 2盗塁 打率.167
9月 15試合 62打数 22安打 ホームラン0本 10打点 1盗塁 打率.355
通算 108試合 410打数 86安打 ホームラン2本 33打点 9盗塁 打率.210
詳細に二軍の成績も追っている野球大好きな方を別とすれば、驚くファンが多いかもしれません。ただ、高卒1年目でホームラン31本を打った清原和博さん、一軍でもヒットを打ちましたが、二軍では軽く首位打者を獲得したイチローさん、一軍でホームラン11本を打った松井秀喜さん、近年では大谷翔平選手が1年目から一軍で投げて3勝、打って45安打という記録を残しているおり、これらの選手は別格中の別格であって、他の選手はそれ相応の下積みを経験して主力選手として、現在、一軍で活躍しています。
高校から直接プロ入りした主な野手の1年目の二軍成績と見比べてみますと・・・。
坂本勇人(読売ジャイアンツ) 2007年 77試合 打率.268 ホームラン5本
中田翔(北海道日本ハムファイターズ) 2008年 56試合 打率.255 ホームラン11本
丸佳浩(読売ジャイアンツ) 2008年 46試合 打率.288 ホームラン1本
浅村栄斗(東北楽天ゴールデンイーグルス)2009年 99試合 打率.219 ホームラン3本
筒香嘉智(横浜DeNAベイスターズ) 2010年 102試合 打率.289 ホームラン26本
山田哲人(東京ヤクルトスワローズ) 2011年 114試合 打率.259 ホームラン5本
鈴木誠也(広島東洋カープ) 2013年 93試合 打率.281 ホームラン2本
森友哉(埼玉西武ライオンズ) 2014年 68試合 打率.341 ホームラン5本
岡本和真(読売ジャイアンツ) 2015年 69試合 打率.258 ホームラン1本
清宮幸太郎(北海道日本ハムファイターズ)2018年 45試合 打率.244 ホームラン17本
村上宗隆(東京ヤクルトスワローズ) 2018年 98試合 打率.288 ホームラン17本
安田尚憲(千葉ロッテマリーンズ) 2018年 106試合 打率.271 ホームラン12本
これらの選手の中で実際に1年目に一軍の戦力となったと言えるのは森選手と清宮選手くらいであり、他の選手は、ほとんど二軍での実践を積んでいます。
打率から見た場合で、二軍の壁に苦しんだのは浅村選手。しかし、浅村選手は2年目には一軍戦力となり、3年目にはレギュラーの座をつかんでいます。
ちなみに安打数を三振数が上回ったのは中田選手(50安打と52三振)、浅村選手(76安打と84三振)、清宮選手(39安打47三振)だけ。すべての三振が「壁」というわけではないが、二軍だと場面にかかわらず積極的に振っていくことが多いため、ファウルや空振りを重ねた結果の三振だと思います。ちなみに、根尾選手は86安打と127三振でした。
ちなみに、高卒野手で、現在ドラゴンズの主力選手として昨年からようやくブレイクした高橋周平選手の1年目(2012年)の二軍成績は次のとおりでした。
68試合 打率.240 ホームラン7本 (63安打で52三振)
また、平田良介選手の1年目(2006年)は次のとおりでした。
45試合 打率.267 ホームラン3本 (35安打で31三振)
そして、これら日本を代表するバッターは一人も打率1割台でルーキーシーズンを終えていません。一概には言えませんが、プロ野球で活躍するためには、1年目の二軍成績は、最低限2割以上の打率がノルマだとも言えると考えます。
もちろん、プロ野球選手生活は始まったばかり。これからどう成長していくかは、本人の努力次第でしょう。
プロ野球のほぼ全スカウトが認めたと思う才能に磨きをかけ、将来のドラゴンズ・侍ジャパンを牽引する姿をファンは待っています。