第88回選抜高校野球大会(日本高校野球連盟、毎日新聞社主催)の運営委員会が先日、選抜大会中の全試合でバックネット裏中央特別席に小中学生を招待する「ドリームシート」を新設すると発表しました。バックネット裏中央2ブロックの最前列から7列目までの計118席を専用カバーで覆い、一般入場者は利用することが出来なくなります。
導入初年度の今大会は近畿軟式野球連盟に加盟する2府4県の小中学生チームから希望を募り、同連盟がどの試合を観戦するか割り振るそうです。来年以降は応募出来る地域を拡大するかなどを判断するとともに、選手権大会でも今夏から導入を検討するそうです。参加した小中学生は原則一試合ごとに入れ替えそうですが、試合観戦に加え、甲子園歴史館も見学するそうです。
現在、日本中学校体育連盟に加盟する軟式野球部員数は2004年の29万8605人から2014年は22万1150人まで減少しているそうで、少子化の影響を受もあり、野球人口の底辺は縮小傾向にあります。高野連にも少年野球チームから部員数減少の陳情があり、昨年からドリームシートの設置を検討していたそうです。
高野連は「昨年100年を迎えた高校野球が200年と続くため、未来の高校球児を育てるのが我々の使命。小中学生が将来、甲子園でプレーするイメージを持つには一番いい」と裾野拡大につながることへの期待を示しています。
その甲子園球場の高校野球大会バックネット裏中央特別自由席では、高校野球の私設ファンクラブが名物となっています。大会数日前からバックネット裏に通じる8号門前で野宿し、列の先頭を開門と同時に最前列を含む数列を確保、当日の最後の試合中からは翌日のために、当番の方がまた野宿で列の先頭を得るために並ぶということを繰り返しています。数年前からこのことは問題視されていましたが、ついには昨年の夏の大会時(8月12日)にその過度な席取りなどでついに大トラブルに発展してしまいました。
高野連ではこのドリームシートの設置について、昨年から検討していて、そこは関係なく、あくまでも子どもたちのためと無関係であると説明していますが、実質的には私設ファンクラブが排除されることになります。
私設ファンクラブの方が言うとおり、自分でお金を払ってチケットを買い、席を取るために徹夜して並んでいるだけであるならば、何も悪いことをしていないのですから、大きな問題になるようなことはないかも知れません。でも、徒党を組んで我が物顔で席を取って、自分らの既得権益のように振る舞い、何試合観たから、何日徹夜して並んだから、それで偉そうな顔をするのは野暮ですという声があることも事実です。
この私設ファンクラブの方々も、本来はただの野球好きだと思いますし、昔から甲子園球場にかよっていたのだと思います。
日本でよく見かけたりするのが、常連様がだんだんと既得権益のような感じでいることですよね。これにはいろんな問題があって、決して本人だけの問題ではないと思います。
飲食店などでも、常連客の座る場所はだいたい決まっていたりして、それを知っている人はその場所を空けていたり、混んでいて常連客は後から来たりすれば、お店側がその場所を空けるように席の調整をしちゃったりします。「常連様なんだから」とのことです。そうやっているうちに、何のステイタスも権限もないのに、自分が特別であると勘違いしてしまうことです。
話を元に戻して。
甲子園球場のバックネット裏中央特別席は本塁の真後ろにあたり、ピッチャーの球筋やバッターのスイングが間近に見られる特等席です。誰もが座りたい席ですし、プロ野球の場合、年間購入シートとなり、高価な席になります。高校野球では、一日2500円で自由席となりますので、それはもう、座りたい場所No.1でもありますが、私は別に真後ろでなくても構いませんし、そもそも野球が好きだから、甲子園球場で高校野球を観て、その雰囲気を直接感じたいから、そこにいるだけでも充分なのです。
高校野球はグラウンドを駆け巡る選手、ベンチ、スタンドで応援している高校生が主役ですから。観客が目立ったり、主役になるようなニュースになることはないに越したことはありません。