ハンドボール女子選手権2019年大会は、1957年に第1回が行われ、現在は2年に1回開催されています。
2019年大会は2019年11月30日~12月15日に熊本県で24ヶ国が参加して開催されます。開催国の日本、前回優勝フランス、中南米からブラジルとアルゼンチン、アジア選手権で日本を除く上位3ヶ国(韓国、中国、カザフスタン)が出場決定。オセアニア予選はアジア選手権で行われ、5位以内なら出場決定、6位以下なら出場枠が他地域に回ります。優勝すると2020年東京オリンピック出場権が与えられます。
女子日本代表は、国際ハンドボール連盟(IHF)ランキング13位。かつてデンマーク代表のコーチとして2013年世界選手権3位に貢献した実績を持つウルリック・キルケリー監督が率いており、着実に強化策の効果が出ているだけに、上位進出が期待されています。なお、現在のトップ10は次のとおりです。
1位 ドイツ
2位 ロシア
3位 ハンガリー
4位 ノルウェー
5位 ルーマニア
6位 デンマーク
7位 セルビア
8位 ポーランド
9位 フランス
10位 韓国
先日行われたアジア選手権5位決定戦でオーストラリアはイランに30-24で快勝し、来年11月の世界選手権(熊本)出場権を獲得しました。
オーストラリア代表選手のハンナ・マウンシー選手は2度目の世界選手権切符を手にすることが出来ました。
試合終了の瞬間、マウンシー選手は両手で顔を覆い、喜びを表しました。身長189cm、体重99kg、歓喜の輪の中では頭一つ飛び出す存在です。それでも次々と仲間とハイタッチし、世界選手権出場を喜びました。「素晴らしい。苦しかったけれど、今は最高にハッピー」。高さのあるポストプレーで3得点、守備でも強さを見せました。
代表デビューは22歳の2012年6月、世界選手権予選ニュージーランド戦でした。ポストプレーヤーとして2013年世界選手権に出場し、2016年リオデジャネイロオリンピックは予選敗退でした。その時は男子として戦いながらでした。性同一性障害に悩み「女性として生きたい」と思い続けており、リオデジャネイロオリンピック予選後に性転換しました。そして、今度は「女子で世界に」の夢を持ちました。マウンシー選手が来年再び世界選手権のコートに立てば、2015年の性転換前の2013年男子大会に続く男女での世界選手権出場となります。周囲の雑音を封じるように「男でも女でも、やるのはハンドボール」と声は太く、笑い方も豪快、それでも、時折女性らしい柔らかな表情もみせました。
マウンシー選手がは今大会直前、女子代表入りしました。11月30日のカザフスタン戦で2度目の代表デビュー。29日の練習では会場に流れる「ダンシング・クイーン」の曲で踊る動画を自身のツイッターに載せて、喜びを表現しました。1次リーグを3位で終えると「あと2勝して世界選手権に行く」と誓いのツイートもしています。
ただ、バスケットボールは身体接触のある競技です。ですから、他の競技と違って難しい面があると思います。イランの女子選手は「人前で男性と肌を合わせられない」と対戦を渋ったそうです。IHFも「大会後にリポートを出す」としているそうです。本人や周囲も神経質で、試合後はノーコメントです。
それでも、アリー代表監督は「彼女は貴重な選手。すごくよかった」、同国協会会長も「もちろん、来年の世界選手権も一緒に戦ってもらう」と絶賛しています。
国際オリンピック委員会(IOC)は2014年にオリンピック憲章を改訂し、性的少数者への差別撤廃を明記し、禁止されました。人権団体の調べでは2016年リオデジャネイロオリンピックには少なくとも過去最多の41人の性的少数者が出場したと報じるなど、差別は少なくなりつつあります。
IOCはの2004年アテネ大会前に性別適合(性転換)手術を受けたトランスジェンダーに出場資格を与えることを決めました。男子から女子へは「性別適合手術を受けている」「テストステロン(男性ホルモンの一種)が2年間基準値以下である」ことが条件でしたが、2015年にはこれを緩和しています。手術の有無を問わず、ホルモン検査の期間も過去1年間に短縮されました。
とても難しい問題だと考えます。189cm、99kgという体格やパワーは他の女子選手と違い、男性だった頃に身に着けた身体能力は不公平だと不満を抱く女子選手が現れても不思議ではありません。また、IOCの資格緩和が悪い方に使用されないとも限りません。
マウンシー選手の状況と意志は尊重すべきだと考えますが、それを公平であるべきスポーツの世界にまで広げるべきか否か、再度検討の余地はあると思います。