「野球というのは素晴らしいスポーツですよ。球技で、人間が得点するのは野球だけ。サッカーの場合はボールだし、ラグビーはボールと人の両方。でも、野球は人間だけ。だからこそ、人間臭いドラマが生まれる。野球というのは人生の縮図、社会の縮図ですよ」(和歌山県立箕島高校野球部元監督 尾藤公さん)
私は得点をするシーンをこういう観点から見たことはありませんでした。
この言葉の基になるのは1979年8月16日・第61回全国高等学校野球選手権大会三回戦の「神が創った試合」と言われる箕島高対星稜高の延長18回(3時間50分)の試合だと思います。この試合、私はTVで観ていたのを今でも覚えています。
まさしく、この試合は人生の縮図、社会の縮図を表しているかのような、試合展開でした。
尾藤さんは生前(2011年3月6日にお亡くなりになっています)、数回の手術を受けています。その時に「何度か死んだようなもの。でも命の延長戦に終わりはない。人生をあきらめてはいけない。だから最後まで楽しみたい」と語っています。
まさしく、この試合そのものを解説したような言葉です。
16時06分 試合開始
四回表。星稜高が1アウト二・三塁のチャンスからタイムリーヒットで1点を先制
四回裏。箕島高が1アウト一・三塁からのタイムリーヒットで1-1の同点に追いつく
十二回表。星稜高。1アウト後、ヒットとフォアボールの一・二塁の場面で、バッターのセカンドゴロをトンネル。その間にランナーが還り勝ち越し。なおも、一・三塁からスクイズを仕掛けるが失敗し、三塁ランナーがタッチアウト、バッターも三振でチェンジ
十二裏。箕島高。2アウトランナーなしカウント0-1から同点のホームランで土壇場で同点に追いつく
十六回表。星稜高。ヒットバイピッチとヒットから作った2アウト一・三塁のチャンスからのタイムリーヒットで1点勝ち越し
十六回裏。箕島高。2アウトランナーなしカウント2‐1から同点ホームラン
十八回表。星稜高。1アウト満塁のチャンスを活かせず無得点。星稜の勝ちがなくなる
十八回裏。箕島高。1アウト一・二塁。続くバッターのヒットで二塁ランナーがホームへ還りヨナラ勝ち
19時56分 試合終了
星稜000100000001000100 |3
箕島000100000001000101x|4(延長18回)
箕島高にとって延長で星稜高に勝ち越された2つのイニングは、2アウトランナーなしからのホームランで同点に追いついています。十二回はバッターボックスへ向かう前に尾藤監督に「ホームランを打っていいですか?」と聴いたと言われています。また、十六回は、一塁線へのファールフライを星稜ファーストが、人工芝につまずいて転倒した後のまさしく起死回生のホームラン。
人生は一秒先に何が起こるか判りません。
ただ、自分から諦めてしまえば、その先の勝利はありません。