囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

亡羊の嘆のごとし

2021年05月05日 | 雑観の森/心・幸福・人生

 

愉しみ、苦しみ、親密になる方法 の巻】

 


二千年以上前の話。

楊子(ようし)という人の隣家が

一匹のヒツジを逃がしてしまった。

多くの人を頼んで捜し回ったが

とうとう見つからなかった。

 


やむなく引き返して

楊子の家に行き

彼の息子にも

「手伝ってもらいたい」

と頼み込んだ。

 


すると楊子は

「たった一匹のヒツジを逃がしたくらいで

なぜ、そんなに多くの人が必要なのか」

と訊ねた。

 


隣人は

「なんせ道が四方八方に分かれていますから」

とだけ言い、再び出掛けて行ったが

ついにヒツジを見つけられなかった。

 


そこで楊子が

「どうじゃ、捕まえたか?」

と問うも、

隣人は

「やはりダメでした。

岐路のなかに、また岐路があるので

どっちに行ってよいのか

さっぱり分かりません」

と肩を落とした。

 


楊子は大いに嘆じて

「ああ、大道が多岐でヒツジを失う。

やはり学者も学問の道が多端であるため

実は困り切っているのだ」

と語った。

 ――「列子説符篇」亡羊の嘆

 


        ◇

 


わたしの碁友に

高齢になり仕事を辞めてから

一から碁を始め

有段者になった方が

何人かおられる。

 


よく学んでいるとみえ

基礎的な手筋は

判で押したように

間違いがない。

 

初段になり

同棋力のなかでは

高い勝率を誇っている。

 


しかし、ここからなのである。

「定石は覚えて、忘れろ」

というが、その変化はおびただしい。

碁は、そこからが

ますます面白くなり

はまってゆくのだから

嬉し愉し厄介なものである。

 


この春、百人碁会のデータを見ていると

米寿(88歳)を超える方が15人もおられた。

最高齢は昭和3年生まれで

有段の碁を楽しんでおられる。

まこと、慶賀に堪えない。

 

 

密、密、密ーーわたしが初めて参加したアマ大会。こうしてみると隔世の感

=京都市北区で2019年4月

 

 



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