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囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

ヴォルテールの多数決論

2021年09月13日 | 雑観の森/心・幸福・人生

 

 

【衆院選10月31日以降? 初の任期満了後投開票か

 ~ 一党派の三つの小粒から権力者が決まるのか

 ~ 不思議の国の不思議な慣例 の巻】

 

 

そもそも、どんな哲学の見解であれ、

それが一国の宗教に害を与えるかもしれない

と心配する必要は全くない。

 

我々の信仰の奥義が

どれほど学問的な証明に反しようとも、

キリスト教を信じる哲学者たちは

やはりそれを尊いものとして敬う。

 

哲学者は、理性の対象と信仰の対象は

それぞれ性質を異にすることを

わきまえているのだ。

 

哲学者たちは決して

宗教の一派(セクト)をつくったりしない。

なぜか。

それは、哲学者は決して

民衆のために本を書くわけでなく、

また、哲学者は熱狂と無縁の人々だからである。

 

人類を二十の部分に分けてみなさい。

二十のうち十九は、

自分の手で労働する人々で構成され、

かれらは、この世にロックなどというひとが

いるかどうかなど、決して知るまい。

 

残りの二十分の一のうちでも

本を読む人間など、ごくわずかしか見つかるまい。

そして、本を読む人間でも、その内訳は、

小説(ロマン)を読む人間二十人に対して、

哲学を研究する人間はひとりという割合だ。

 

ものを考える人間の数は

極めて少ないし、

またこうした人々は

世間を騒がそうとは

思いもしない。


(中略)


火種を持ち込んだのは、

大抵の場合、

神学者たちである。

かれらが最初に抱いた野心は

宗派の指導者になることが多かったが

やがてそれは

党派の指導者になることに

変わったのである。

 


(「哲学書簡」第13信 ロック氏について)

 


   *  *  *

 


多数決 集団、特に議会や会議の決定を多数者の意見によって決めることを指す。多数決が政治的紛争の解決法として原理化するに至ったのは、市民社会では多数が平等の参政権を獲得したためである。政治的紛争が利益限定の争いに転化し、かつ多数決が話合いによる異論の統合を踏まえた結論とみなされるようになった。ただし、十分な話合いをしない多数決は、多数派の暴力と認められる。(参考:百科事典マイペディア)

 

 

オルテガが「大衆の反逆」で示したように

浅薄なる大多数の人たちにとって

民主主義イコール多数決であり

これが現代の絶対的正解

と考えているようだ。

これはやっかいなこと――。

 


多数決であれば、ただちに

全てが民主主義的決定であろうか。

否、そういうワケでは決してない、

と、わたしは考えている。

 

しかし、今日、多数決がほとんど

民主主義と同一視されるのは何故か。

これは、市民革命後、近代的人間観が

強く主張されるようになったからである。

人間は全て生まれながらにして

自由で平等な存在であって

かつ人間は全て理性的存在である、

との考えを前提としている。

 

合理的・同質的人間観を前提にして初めて

議会の討論で民主的結論に到達する。

多数意見は少数意見よりも原則的に優れている

との仮説が成立するという「約束事」である。

多数決制においては、十分な討論がなされ、

少数意見が十分に尊重されるという原則が

最低限保障されることが重要であって、

「強行採決」などによる決定は

とても民主的決定とは言えないのである。

 

ともあれ、絶対王制期の秘密・専決制を経て

討論と公開制を担保しつつ

近代議会と多数決制が結び付いた時に

民主主義的な政治運営といえるのである。

 

この前提を無視することは

まったくナンセンスである。

そう考えてみると、

今日の政治は後退局面が続いているといえよう。

直近の「失われた新たな十年」のあいだ

権力は心を砕いて説明し理解を求めることはなかった。

いや、むしろ、都合の悪いことは「頬かむり」してきた。

ウソと詭弁を重ね、そしらぬふりをしてきた。

永田町の異常を目にするにつけ

つくづくと考えさえられ

嘆息するばかりである。

 

 

「大衆の反逆」 スペインの哲学者オルテガ・イ・ガセット(1883~ 1955年)が著した大衆社会論文。20世紀になって、圧倒的多数の大衆が、社会の中心へと躍り出て支配権をふるうようになったことにより、文明の衰退が不可避となったと警告。大衆社会における民主主義の劣化を食い止める処方箋を提示している。

 



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