囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

大臣の仁徳/逸話2

2021年08月26日 | ●○●○雑観の森

 

 

 

【ちょっと寄り道、コーヒータイム の巻】

 

 

老中の阿部豊後守忠秋は

愛用の茶壷(ちゃつぼ)の上箱が必要なので

細工人に申し付けて作らせることにした。

 

ところが、

細工人の子供が作業場で、

その壺に触っているうちに

壺の口に入れた手が

抜けなくなった。

 

焦れば焦るほど、

かえって締まり

細工人も弱り果てた。

 

仕方なく

このことを忠秋の近習の者に知らせた。

すると、忠秋は言った。

 

「なんという愚かなことだ。

なぜ、早く、その壺を

打ち砕かないのだ。

早々に行って

そう申し聞かせよ」

 

壺が打ち砕かれて

細工人の子の手は抜けた。

大切な壺を壊したことで

細工人は死を覚悟したが、

忠秋は、ただ笑って答えた。

 

「なぜ、罪になるのだ」

 

この一言に

細工人は泣いた。


    (原典:名将言行録)

 

 

   *  *  *

 


封建社会の常識を

現代の常識を持ち出して

軽々に判断してはいけない。

時代考証があったとしても

TVのなかは現代風にアレンジしている。

現代の俳優が演じている武将たちは

実像ではないのだ。

 

江戸城内は行儀作法、規則は最も厳しい場所であり

ことに江戸初期には、それが著しかった。

 

加賀前田家の家臣の某が

急ぎの用があり、江戸城内を走った。

目付の者が見咎め、

直ちに前田家に抗議をしたところ

前田家では某に腹を切らせてしまった。

 

また、ある旗本が膝頭の外「三里の灸」の跡がつぶれ

膿(うみ)が出ていたので、

これを拭き取ろうと膝を立て

袴の裾をまくっているところを

運悪く目付に見咎められてしまった。

この旗本も切腹させられている。

 

武士としての心得、行儀に欠ける

というのである。

 

だが、こうした厳しさは、

時代とともに薄れていった。

いまは、人の迷惑を顧みない身勝手が

「自由」の名の元に放任されている。

歩きスマホや自転車の逆走など

趣味の世界の無粋無礼に至るまで

ことの大小を問わねば

枚挙にいとまがない

 

その是非やいかん。

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。