政治家らしいさ、民主党らしいさ

倅がよくお巡りさんに止められる。自転車だ。

いくら私に甲斐性がなくとも、倅の乗る自転車は間違いなく私が買い与えたものであるが、それがどうやら疑わしいらしく、倅が「今日も止められて、盗難番号調べられたｗ」と私に言うのはかなりの回数になる。薄暗くなればライトも付けているし、とくに鍵が壊れているまま乗っていることもないのだが、それでも倅が盗人に見えるのか、ちょっとキミ、止まりなさい、と言って近づき、住所氏名年齢学校名などを述べさせられて、あまつさえ盗難番号を照会されるというのである。倅にはとりあえず「民主党の国策捜査だ」ということにしておいたが、倅が気になったのはその点ではなく、そのお巡りさんがよく愚痴を垂れることにあった。

倅の無実が晴れて証明され、よし、行ってよいと許可を得た際、帰り際に心の抜けた「ごめんねｗ」のあと、その警察官は「毎日、こんなのばっかりだ」と力なく笑う、とのことだった。正義感が強く、せっかく志を持って警察官になったのに、この寒空の下、自転車の盗難番号ばかり見ているんじゃたまらないということだろう。

想像していたのは、今日も明日もけたたましく無線が鳴り、現場に急行せよ！と命令が下って駆けつければ、人質を取った連続強盗が「車を用意しろ！この女を殺すぞ！」と怒鳴っていて、周囲が止めろというのも聞かず、勇気リンリン、その手を離せ！オレが代わりに人質になる！とか言って近づき、一瞬の隙を見せた犯人の銃を持った右手をずぎゅーん！腕を捩じ上げ手錠をかける・・・上司からは「今度、無茶やったら首だと言っただろう！」と責められるも素知らぬ顔で、サングラスをかけて車を飛ばし、海の近くのBARのドアを開けて、マティーニかなんかを「オリーブを3つ入れてくれ」とか注文するわけだ。頭の中は踊る大捜査線かあぶない刑事か、ともあれ、ここは無防備都市宣言の京都府宇治市、昨日も今日も平和なのであった、ということだ。残念でした。




ンで、だ。

倅の言う違和感は「らしくない」であった。過日の大阪での「尖閣デモ」の際、実に毅然とした警備をされた警察官の方々をみて、その取り巻く緊張感を認めた倅は、毎度、自転車を止める警察官のこぼした愚痴を思い出し「らしくない」と感じたのである。

警察官とは、如何なる任務であっても真剣に、こちらがふざけていたら叱られるのではないかと怯えるほど、緊張感に溢れている仕事だと思っていた、とのことだった。しかしまあ、警察官も人間だから、いろんな人がいるだろうし、それも仕方がないことだと説明しておいた。また、倅は警察官僚を目指すとのことだから、人のことはともかく、貴様自身は「らしく」なるのだ・・・と言いかけて止めた。倅が「官僚らしく」なるということに対して反射的に違和感を覚えたからだ。どうもイメージが悪い（笑）。



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101127-00000064-jij-pol
＜菅首相「支持率1％でも辞めない」＝鳩山氏と昼食＞



「政治家らしく」というのは悪口のレベルに堕した。先ほどの「官僚らしく」も同じく、曽野綾子女史がいうところの「何をするのか、は知っていても、どうするのか、がわからない」というイメージがある。悪いイメージだ。

また、なぜに鳩山由紀夫がマスコミに管直人を売ったのかはともかく、大したトロイカ体制もあったものだと感心する。いや、実のところ、本当に何も考えていないのだろう。「そう聞いたから言った」というレベルなのであろうか。いずれにしても、この人が8カ月も一国の総理大臣だったと思うと、現在の日本政府のていたらくも致し方ないところだ。

ま、この両名については「バカらしく」はあるが、政治家らしくはない。戦後の日本の教育が「らしく」を否定する教育だったことは周知であるが、男らしく女らしくだけではなく、なんとも「日本らしさ」や「民主主義らしさ」までを破壊することに血道をあげているわけだ。管直人も決意を述べたつもりだろうが、ここまで阿呆だと「血圧が0になっても死なない」と言っているレベルであり、もはや、これはどうしようもない。

また、例の「チンピラらしい」議員だが、ホームページで全否定して「産経新聞の捏造」としていたところ、産経新聞が怒っちゃったようである（笑）。



http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101128/stt1011280131000-n1.htm
＜「おれは歩きたくないんだ！」隊員を団扇で数回たたく　防衛省調査で判明　松崎議員“恫喝”の全容＞



これは実に「民主党らしい」出来事だと思うのだが、本人は全面否定ながら「二度と来るな」と言われたことは事実であり、産経新聞の取材には＜隊員に手は触れていない。うちわが触れたかどうかまで記憶にない。私は子供のころから家族にも友人にも手を出したことはない。周囲もそれを信じてくれている＞と答えている。しなしながら「記憶にない」というセリフは「政治家らしい」ではないか。また、周囲の人が信じてくれているのは結構だが、防衛省の人らにも信じてもらえねば意味がない。それに自衛官は「家族でも友人でもない」わけだから、これまた、何ら意味がない。「暑そうだったから扇いでやった」とでも言えば面白いのだが、民主党議員にはそんなセンスもない。

そういえば昔、パチ屋の現場で走り回っていた頃、とある「引退後の政治家の先生」が店内に入って来て、見覚えのある私の顔を見つけて怒鳴り散らしてきたことがあった。この人は引退しても「地元の議員に顔が利く」とかで店舗から金をもらっていた。私が幹部になってからは、用意された金を「自分で手渡したこともある」のだから間違いはない（笑）。

高齢なのにエライ剣幕だった。理由を問うも「ちょっとこい！」しか言わないから要領を得ない。ボケたのかと思って外に出ると、景品配達の業者さんが立っていた。運んでいるのは一般景品ではなく、いわゆる「特殊景品」だった。私も顔見知りのあまり柄のよろしくない兄ちゃんが運んでいた。兄ちゃんは困った顔で「だれ？このじじい？」と聞いてきた。詳しいことを言ってもアレだし、いらぬことは言わぬ方が身のためだと思い、とりあえず「会長の知り合いの人」と答えておいた。

要するに、だ。

この兄ちゃんらは仕事で景品を降ろしていた。景品交換所は店の入り口付近にあったので、車はそこに止めて作業をしていた。これはいつものことだった。が、しかし、そこに黒塗りの車がやって来て、問答無用で「どけ」とやった。兄ちゃんらは「なんだ？あっちに駐車場があるだろ？」と常識的に答えたのだが、そこで「オレを誰だと思ってるんだ？」と返されて大爆笑、じいさん怒り狂って店内に走り込んできた、というわけだ。

じいさんは私に「こいつらを謝らせろ！すぐに車をどけさせろ！」とまくし立てた。世の中は不条理と理不尽で出来ている―――からこそ道理が大切なのであって、仕事をしているだけの兄ちゃんらを謝らせるわけにもいかず、私は精一杯の笑顔で「まあまあ」とやった。兄ちゃんらはその間に荷物を降ろし終えて、私のほうに向いて手刀を切って立ち去った。

これで一安心、と思ったらじいさんがもっと激怒し始める。今度の対象は私だった。

「なぜ、謝らせないのだ！あいつらをここに呼べ！」

と、もう無茶苦茶だった。あとはもう罵詈雑言の羅列だ。「おまえなんぞ、どうにでもできる」とか、京都に住んでいる私に向かって「大阪に住めなくしてやる！」と喚いていた。80歳は過ぎているだろうに、まあ、なんともカスだった。私は頭の中で「明日死ぬかもしれないンだから」ということで許してあげたが、帰り際の「絶対に首にしてやる！」には少々笑った。監視カメラの前で散々人を怒鳴っておいて、常連のお客さんも心配して近くで見ていたのに、何を威張っているのかと笑ったのである。その後先考えぬ馬鹿らしさこそが、実に「政治家らしい」ではないか。ああやって生きて、こうやって死ぬのか、と思えば菩薩のような心になれる。なむーである。




ま、何の仕事でもそうだが―――――

子供らのイメージというモノがある。とくに少年少女が憧れるような職種にある人は、その職業イメージを大切にしてもらいたい。今の国会中継やらを観て「政治家になりたい」と思う子供は少ないだろう。だって、総理大臣とかも不細工だ。「ああはなりたくない大人」の見本市である。中身はわからずとも、ニュースを見る大人が「この国はダメだ」と繰り返すのをみて、子供らが将来に希望を持つはずもない。

寒空の下、盗難自転車を取り締まるお巡りさんも、我が倅はあなたの後輩になるかもしれないのだから、つまらん愚痴を聞かせるのではなく、しゃきっとして「気をつけて帰りなさい」と敬礼くらいしてやってくれ。小さな仕事を馬鹿にする奴に大きな仕事はできないのだ、と背中で語り、薄明かりの中、真剣な表情で盗難番号を照会するお巡りさんがカッコイイのだ。