忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

アイスのおっちゃん

2010年09月05日 | 過去記事
虹の会で「憂国談義」した。もちろん、京橋。いつもの居酒屋行って、いつものスナック行って、ひさしぶりのラーメン屋に行って、んじゃね、と言って駐車場で寝た。

前回は生まれて初めて「ネットカフェ」に行った。会長と二人でスナック行って、私が腹減ったとか言い出したから「ちゃんぽん」奢ってもらって行ったから4時前くらいだった。一応、漫画もあるから「ジョジョ」の新しいのを2冊ほど持って、信じられん狭さのスペースに座っていたら、すぐに眠くなったのでウトウトしたら、だ。

「あの、すいません、あの、すいませんけど・・」

と起こされた。何事かと思ったら「鼾が・・・ちょっと、響いてますので・・」と言われたのであった。やっぱり?ごめんね?はい、気をつけます→「あの、ちょっと」→はい?ごめんなさい、あの、はい→「・・・あの、ちょっと、すいません・・」を5回繰り返したところで店を出た。私程度の鼾でアレならば、きっと河内屋の親父ならば通報されるはずだ。まず、店のモニターが割れるからだ。紙コップのジュースなども、波紋効果で中身が浮き上がるはずだ。書棚の漫画本は徐々に前に出てきて、隣り合ったスペースの人は、お気の毒だがもう手遅れだろう。目と耳から出血して絶命しているはずだ。ンで、河内屋の親父が「んあ?なんだ?」と起きると、すべてフロアに落ちる。パニックカフェである。

だから、やっぱり、私もホテルを取るか、車で寝るか、しかないのである。でも、あの辺はラブホテルか「連れ込み旅館」しかない。一緒にいた「次元」を連れ込もうかとも思ったが、彼は毛唐の女子をいわし倒したという、世界に通じるポチョムキンを持っている。これは私のほうが危ない。彼と一晩過ごすならば、泥酔した素っ裸の露助と寝るほうが安心だ。ということでしかたなく、私は駐車場に止めてあった車の中で眠りについた。

朝、起きて、だ。昨日に買っておいた「爽健美茶」を飲んで、だ。んあぁぁぁあああ~~~と伸びをしてから外に出て、また、うぉぉぉおおおぁぁあああ!!と朝の雄叫びをあげ、数時間前に喰った「ざるラーメン大盛り」も頼りなく、健康の朝は空腹だということで、そうだ、久しぶりにあの食堂でご飯食べて帰ろう!そうだ!ついでだから、この京橋のどこかにいる「おかやまくん」や「次元」も叩き起こして、無理矢理に朝飯食わせて嘔吐させてやろう!やっぱ朝はハムエッグとご飯の大盛りと味噌汁!とか思って逸る気を押さえ、駐車場出口に車を動かした。午前8:10分頃だった。

助手席に置いてあったはずのマイバッグがない。いや、エアバッグはある。だから、ある意味、私のマイバッグはエアバッグと化して、究極のエコバッグとはエアバッグのことではないのか?それにしても、このバッグというモノはアレだ、セカンドバッグはあるけれどもファーストバッグもサードバッグもないぢゃないか。レフトバックレフトバック!これは大きい!どうだ!どうだ!






正直、ポカした







ともかく、





なぁぁあああああい!!!







台湾行く時にルンルンで買ったバッグがない!!


不思議だ。どうしたんだろう・・・?まさか、食べてしまったのか?いや、んなこたぁない。ならば?ああ、そうか!コンビニだ!コンビニで財布出したとき、カウンターの上になぜだかバッグを置いたんだョ、今から、私がそこに行ってだね、この爽やかな朝にぴったりの爽やかクンでだね「あの、すいません、昨日、3時頃なんですけど・・・」といえば、気の良い店長さんが「バッグでしょ!黒の!!セカンドバッグ!」とか言ってくれるんだョあはは♪なんだ、びっくりした、もう、私ったら困ったチャンだなぁ~いや、これは「困った・チャンという支那人」のことでもないんだけどね、さあ、いつまでも預けていたら迷惑だ、さあ、私のバッグを取りに行こう―――――








「お預かりしていないようですね・・・」





ええと、こういう場合はどうすればいいんだっけか?電話だな電話。104?117?ええと、ここは京橋だから・・・110?そ、そうだよ、110でいいんだよ・・・・




そのまま最寄りの交番に行って被害届出した。


いやぁ、






なんてツイてるんだ。






こういう非常時、落ち着いている私はまず、何をせねばならないかを知っている。虹の会長に朝からメールだ。これは危機管理として常識、いろはのい、いかんのい、である。



「交番なう」



よし、これで完璧。というか、もう、私のすべきことは9割終わったと同然だ。






「あぁ~これ、手袋痕だな」


指紋を調べてくれたのだが、そこには私の指紋と滑り止めのついた手袋の跡があった。









最近、増えているんだそうだ。私は言葉を選ばず質問した。



「外国人ですか?」



「そうとは限らんけど、増えてはいるね」とお巡りさんは言ってくれた。「外国人登録証も入ってました」と最初に言って本名を書く私の質問だから、少々、答えることを躊躇した様子だったが、本来、必要の無い「協力者」としての指紋採取も快諾する私だから教えてくれたのかもしれない。「あなたのような人ばかりだったいいのにねぇw」という言葉の意味は、単なる「文句ばっかりで捜査協力しない被害者」のことではあるまい。私は被害届の書き方を知っていたから、お巡りさんが住所氏名を入力している間に「入っていた物リスト」を作成し、品名の横に「時価」まで記入していたが、そんな私を「仕事しやすい被害者」だと評してくれたわけでもあるまい。


ところで最近、八尾でもあったそうだ。その被害者の方は私と違ってドアロックをしていた。すると、運転席側の窓ガラスを割られて抑えつけられ「カネカネ、ウゴクナ」といわれたのだそうだ。容疑は強盗である。

土曜の夜だ。事実、車ですらなく、道端で無防備に寝ている人も一人や二人ではなかった。彼らは複数でグループを組み、呑気な日本人を狙っている。今度からはもう、必ず、ビジネスホテルを取る。盗られるのも口惜しいが、それよりも安全には代えられない。




私は想像する。

二人組の男が人差し指を口の前にして、私が起きないように、そぉ~っと助手席のドアを開け、こっそりとバッグを盗み出し、目を見合わせて「くくく・・・」とでも笑い、ドアの取っ手を押し上げたままそっと閉め、真っ暗な駐車場をダッシュで逃げる二人組・・・ではなく――――ひとりは運転席のドアを開け、私の首元に鋭利な刃物をあてがい、もうひとりがそっと助手席のドアを開けてバッグを盗む、一緒においてあった手提げ袋を物色するも、中に入っているのは小難しそうな本が数冊と雑誌と新聞、着替え用のTシャツとタオルだから持って行っても仕方がない。コンビニの袋にはマルボロが2個と文庫本、後の座席には飲みかけのお茶と西田昌司のポスター(笑)、賊はさっさとバッグだけを盗み出して逃走したが、もし、万が一、私が目覚めて「なんだ?おまえら?」となれば、問答無用で喉元を切り裂かれていた可能性はゼロではない。




なんてツイてるんだ。






私がふと思い浮かんだのは、昨日「おかやまくん」らを連れてお参りした慰霊碑だ。第三次大阪空襲、京橋の駅で亡くなった数百名の被害者が眠っている慰霊碑に行った。昭和20年8月14日の国鉄京橋駅には多くの子供らも防空壕に避難していた。

当日の大阪北部の上空は「雲量10」だった。雲量の基準は「1」~「10」までで表す。その上は「不明」とされる。相手が白人国家ならば「精密爆撃不可能」ということで引き上げていてもおかしくない雲の量だ。上空5500メートルから雲を通して爆撃するなど、普通、これは「無差別爆撃」と呼ぶ。もちろん、国際法違反である。

硫黄島から飛んできた409機のB29は京橋上空から1トン爆弾を降らせた。京橋駅に直撃したのは4発。そのうちの1発は防空壕の屋根を突き破り、避難する住民のど真ん中で炸裂した。そこには100名以上の子供がいた。

今年の夏も暑いが、昭和20年の8月14日も暑かっただろう。雲量が10もあれば湿度もすごかったに違いない。そんな暑苦しい日に防空壕で震えていた子供らに、私はコンビニで買ったアイスを箱で置いてきた。前回は「ファンタ」だった。いろんな味の「ファンタ」を、この子らは知らぬままアメリカ人に殺された。今回はアイスだ。「あずきバー」は止めた。出来ればいろんな味があって、いろんな色のついたアイスを食べさせてあげたい。私は65年後の「アイスのおっちゃん」なのだ。

私が寝ている車のドアを開けた賊は、私に何か動きがあれば「やってやろう」と思っていたかもしれない。刃物を握り絞め、力を込めていたかもしれない。私はもしかすると、寝返りでもしたのではなかろうか。目覚めたかのような寝言を言ったかもしれない。

そのとき、その賊の足を掴む小さな手が「アイスのおっちゃん、殺しちゃダメ!」とでも言ってくれたのかもしれない。驚いた賊が振り返ると、そこには100人以上の子供らが、その手に手にアイスを持って睨んでいたのかもしれない。




私は本当にツイている。妻に電話しても「よかったなぁ!」と言ってくれた。会長も奥さんも「起きなくて良かった~!」と言ってくれた。無くなったのは所詮が、この世でなんとかなるモノ、また買えばいいし、届ければいいし、思い出の品もまたつくればいい。

私には心配してくれる家族がある。仲間もいる。警察でパンツの中見られても困らないほど、なにも疾しいことはない。指紋でも声紋でもなんでもどうぞ、だ。これも「人様に迷惑かけるな」と教えてくれた祖母やオカンの御蔭である。「人のモノを奪う」こともせずに生きていける私は本当にツイている。

人様から「だいじょうぶ?」と言われるところに私はいる。家に帰ってから「おとしゃん、お金も全部、盗られてしもてたさかい、ごめんなぁ」と妻に言うと、「寝てるのが、おとしゃんやのに、ドア開けてバッグ盗むいうことは、犯人は人殺しやで!普通の車上荒らしやったら、もし、おとしゃんが起きたら殺されるから、せえへんさかいに!おとしゃん、寝たら起きへんから、ほんま、よかったなぁ!」と言って牛丼を作ってくれた。また、私が「あ、そうそう・・」と言うと「うん、カード類はもう連絡したし、登録証は明日市役所行ったらいいし、免許証は~」というさすが嫁はん、ベストオブ嫁はん、であった。




私は私が寝ている間にバッグを奪っていた犯人のために祈ろう。カードは使えないけれど、財布の現金は好きなように使いなさい。他のモノも気に入ったらどうぞ、差しあげます。いらないならゴミ箱にでも捨ててください。そして、どうか、あなたの人生が幸せなものでありますように、今日も明日も、これからも、どうか、あなたの人生に何か、良いことがありますように。

3 コメント

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遅れコメですが・・・ (後の日の次元)
2010-09-18 23:14:43
先日は虹の会ありがとうございました。いつも勉強になるばかりです。
千代太郎自信がご無事で本当に安堵しました。「今生きている」ことが何よりも優る幸せなことですからね。きっと彼ら彼女らが守ってくれたんだと思います。

先日京橋に予定がありましたので、行き帰りともに慰霊碑に参拝してきました。そして何故か来月から半年間京橋に通うことになりました。引き寄せられたのかなと思ったりしてます。丁度通り道に慰霊碑があるので、毎日参拝しようと思ってます。

あと、あのモニュメントは何らかのカタチで日々削っていこうかと思ってます。いい方法があればご指導お願いします(笑)。
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Unknown (久代千代太郎)
2010-09-19 05:10:08
なるほど!

あのとき「顔覚えられたからなぁw」と言っていたが、やっぱり、覚えられて気に入られたんだなww

毎日手を合わせてあげれば、そら喜ぶにきまってる。いやぁ、すばらしい。


>千代太郎自信がご無事で本当に安堵しました

なんか、ちょっと誤字エロい雑誌的な感じね。

いいこと書いてくれてるのにww



「ちよたろ自身」ww



てぃんこじゃないか!!
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Unknown (後の日の次元)
2010-09-19 09:51:24
ホンマですな(笑)つい素が出てしまうんです。
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