エッセイ

雑記

ある会話

2020-10-08 17:34:53 | 日記
久しぶりに飲みに出た。
このコロナ禍、「自粛」といいながら、民間の「自粛警察」を生み出しての半強制的な外出禁止令が横行しているが…。
そうした世俗に倣い、しばらく外出を控えていた。
出社も控えようとしたが、製造業にリモコンによる自宅作業などない。
ただでさえ入社したばかりなのに、クビにされちゃ、たまったモンじゃない。
だから、外出を控えていた。

とにかく、久しぶりの「酒場」だった。
その前に自宅で牛飲しながら最近嵌っている海外発の「マッサージ動画」を視聴していたのもあり、その昔某イリーガルな職種に就いていたころ足繁く通っていたガイジンパブにでも繰り出そうかと思ったが、ネットで調べてみると、この田舎にそんな気の利いた店などなかった。
その前に、そこまでやるカネがない。
仕方がなく、近場のスナックへと繰り出した。
初めての店だ。
いつもの調子で、店の女とともに独り客で居た出勤前のそこらのスナックのネーちゃん相手に「芸人」紛いのバカ話を披露し、盛り上げていた。
そのうち、ふと、厨房をウロウロする兄ちゃんの存在に気付いた。
「あのにーちゃんも、ココで飲めやいいじゃん」
そう店の女に伝えるなり、2人の顔色が変わった。
束の間の微妙な空気のあと、店の女が「…見えるの?」
ときた。
確かに、狭い厨房だ。
その上視覚的に客側から見えるのは、一瞬だけだ。
「普通」の酔っぱらいじゃ見える訳がない。
あいにく、オレは普通じゃない。
どれだけオレが酔っていると思っているのか…。
そう思い、ついムキになり、厨房のにーちゃんの特徴を言った。
言いながらも、途中、あることに気付いた。
要は、「居るんだが居ない。…人間じゃない奴だ」と。

店の奴に問うと、やはりそういう話だった。
常連客で自宅で自殺したのが居て、以降、客からソイツが店に居ることを度々指摘されるとのことだった。

そのうち、その霊が、オレに「日本酒出せ」と、某銘柄を指摘してきた。
霊は度々見るが、会話の経験はない。
「会話」というより、「脳に直接話しかけてきた」と言った方がいいか。
そもそも、日本酒は飲まない。
リクエストの銘柄も知らん。
とりあえず、「ソイツ、コレが好きじゃなかった?」
と店の奴に問うと、益々顔色を変えた。
「本人飲みたいって言っている。ショットで出してくれ」
と注文すると、「ソレ、ボトルじゃないと出せない」
ときた。
ちなみに値段を訊き、キレた。
「歌舞伎町か、ココ!」
数万円の値段だった。
スナックでは聴いたことのない金額だ。
そうして渋っていると、「けち臭いな、お前」と、「元人間」が、再び脳内に直に話しかけてきた。
その言葉にさすがにキレ、思わず「殺すぞ!」と怒鳴ったものの、よく考えたらとうに死んでいたので、やめてやった。