
七番勝負の初めの四局が互角の結果となり、これからは三番勝負に等しくなった。
さすれば、この第五局は超重要な一番となる。
勝てば相手をカド番に追い込めるし、負ければ2連勝しかなくなる。
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近頃は便利な世の中になったもので
BSだとかWaoWaoとか契約しなくても
インターネットでオンラインの対局風景が見えるようになった。
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トップの図は封じ手直前の手(第59手目)までのもの。
ここで井山本因坊の封じ手となった。
封じ手を決めるタイミングは一日目の午後五時時点であり
このときに打つ番になっていた対局者は
自分が打とうとする手を用紙に書いて立会人に手渡す。
立会人はこれを金庫に入れて二日目に公開する。
従って
二日目は一日目の初手から並べ直して昨日封じられた手を
立会人が読み上げてから始まる。
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封じ手を巡る囲碁界のさまざまな悲喜劇はそれだけで
面白いお話になるのだが
それはさておき。
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昨日、井山本因坊が封じ手を書くまでのプロセスは面白かった。
封じ手時点で井山本因坊の残り時間は約4時間だったろうか?
夕方5時前に立会人がいずこからとも無く現れた。
封じ手の儀式に立ち会わなければならないからだ。
普通、封じ手を書く手番の棋士は5分ほどで書く。
立会人はもう良い歳をした爺様で
早く封じ手の処理を済ませて・・・・
仲間内であること無いこと言いながら一杯やりてぇ!!!と
顔に書いてある。
オイラもその気持ち・・・痛いほどわかる。
チャッチャと封じ手を書け!井山ちゃんよぉ。
相手の高尾紳ちゃんも呑み助だ。
はやく封じねぇかなぁ~みたいな態度で
狸寝入りみたいな風情で腕組みをしてる。
10分が経過
状態変わらず。
爺様・・・そわそわして鼻のヨコなどこすってる。
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井山本因坊・・・・
頭をかしげてオデコに右手を当てたまま、うつむく。
ハッと頭を上げた。
<<皆、さぁ書くぞ!!>>と思うが・・・
井山さん・・・
今度は座椅子に思い切ってのけぞる。
再び、頭を垂れて目をつぶる。
ハッと頭を上げた。
<<今度こそ、書くぞ!!>>と皆期待・・・
井山さん・・・打たずに
ジュースをストローでちゅうちゅうやる。
飲み終わって頭に手をやりながら首を振る。
15分経過
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井山さん、きっぱりうなずいて、立会人に封じる意志を示す。
爺様の顔がぱぁっと明るくなった。
さぁさぁ~この紙に、ハイハイってな具合。
井山さん、別室で封じ手を書き込んでいる。
その間に高尾紳ちゃん、背広を着込む。
同時にカメラマンが対局室に雪崩れ込む。
井山本因坊戻って
立会人に用紙を手渡す。
この場面をカメラに収めようとフラッシュが煌く。
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実況中継すると、こんな風情でした。
碁の優劣はさっぱり判りませんでしたが
封じ手間際の人間心理がモロに出て
やたらと面白かった。
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さぁ~どぉなるか第五局
本日夕刻には決着。
そして、その根底通りに事象が進まないこともまたよくある話で。
そのときに、どう行動するかで、いろんなものが変わってくる。
しかし、対局者の頭の中には何万通りものヨミが渦巻く。
でも、打てる手はその時の一手だけ。
素人が打ってもプロと同じ座標に石が置かれることがある。
プロがその手を打つ背景にある深淵のようなヨミは素人にはないのです。