私は若い頃に、それはそれで無茶苦茶な生活をしてきました。
どの様に無茶苦茶かと言えば、深夜まで会社に泊まり込み、朝方に一旦は家に帰りますが、仮眠をとってシャワーを浴びて、そのまま出勤するという事をしていたり、土日も会社で仕事なんて事も良くありました。また地元のちょっとした青年部の活動もしていた時期があり、そこでも深夜まで打合せだとか何だをしていたので、30代半ばには「こりゃ俺は長生きできないな」と感じても居たのです。
でも三十五歳で結婚して、子供も大学生と高校生の娘二人にめぐまれ、様々な病気をしてきましたが、何とかこの年齢まで生きてきました。
今年(2022年)の9月に会社で健康診断がありました。私は仕事も忙しいので、いつも申し込みは適当にしていましたが、今回は会社でも委託先を変更していたらしく、毎年入っていない「腹部エコー診断」が標準メニューに入っていました。
「そういえば今の会社では、エコー検査してなかったな」
何気なく思っていましたが、やけに念入りな検査をしているので気になり「何かありましたか?」と検査担当に聞いても「後ほど先生から結果の総評がありますので」と何かはぐらかされ、釈然としない感じでした。
健康診断のメニューが一通り終わると、医者から呼ばれて診断結果が言われました。
「様々な指摘項目がありますので、それらは確認して処置をお願いします。あと今回、腹部エコーで右腎臓に腫瘤らしきものが見つかりましたので、そちらも専門機関で精密検査を必ず受けてください。」
人間、サラリとこういう事を言われると、一瞬どう反応してよいか、わからなくなります。
「腫瘤ってなんですか?」と医者に聞くと「恐らく癌だと思いますが、しっかり検査を受けてください。以上です。」
なんとも健康診断のアルバイトやっている事務屋の様な医者やな!もっと説明の仕方くらいあるやろ。と憮然として診察室を出ると、事務方らしき女性がきて「紹介状が必要ならご準備しますが、いかがですか?」と聞いてきたので、結構ですとお断りしていました。この段階で私の頭の中は「恐らく癌」という医者の言葉が反響し始めていて、他の説明の言葉は一切入りませんでした。
ただ会計の際には、今回検診オプションの腹部エコー検査を申し込まれていて、お支払いが七千七百円になりますと言われた時に少しもめてしまいました。何故なら例年は無料コースを会社で申し込んでいたので、腹部エコー検査が無かったのですが、今回は委託先会社が変わっていて、申込みフォームの初期値が「腹部エコー検査申込」になっていました。だから結果として申込した事になっていたため、手元に現金を持っていなかったので、クレジットカード決済したのです。
ああ七千七百円。。。
そんな事を此時は考えていたのですが、今から考えたらこれはとてもラッキーな事でもあったわけです。やってなければ見付かってなかった訳ですからね。