追憶の堕天使たち
第二話④
宇宙。
空と表現されたり、海と表現されたり、空間と表現されたりと、色々な顔を持つ場所。
その宇宙に私は僕君と二人きりで居る。
アルゴーの艦(ふね)のメインコックピットから眺め、見下ろす私たちの故郷(ふるさと)火星が一際、紅く輝いて見える。
三日目の朝を迎えた。
「ガブリエル。そろそろ火星へ帰るとしよう。」
「それで、ガブリエルにはワルキューレたちを引き連れて、火星に降下(おりて)欲しいのだけど、やってくれるか?」
「ワルキューレ?」
「そう。ワルキューレたち。」
「認識番号だけと可哀想だろ!?」
「だからワルキューレと名前を与え、それに番号を加える事にしたんだ。」
「……。」
私は僕君の話を目を「パチクリ」させて聞いていた。
「ワルキューレは、今のガブリエル。君とは違い量産型のアンドロイドなのは解るよね!?」
「うん。解るわ。」
「量産型だけど、この子たちの名前の由来は諸説ある中の一つに「戦死者を見極める者」という意味があるんだ。」
「戦死者を見極める者…。」
「そう。戦死者を見極める者。」
「僕を苦しめるゼウスを倒す為のアンドロイドたちだけど、倒した事が解らないと、永遠に屍を攻めるからね。」
「それでは、何時に成っても僕は安心出来ない。」
「ガブリエル。君も夢の中で苦しんだだろ!?」
「その苦しみが永遠に続くのは嫌だろ!?」
「うん。嫌。」
「だからワルキューレという名前と番号が必要なんだ。」
「例えば、ワルキューレNO.00が僕を苦しめるゼウスを倒した。と解れば、もう戦う必要は無くなるからね。」
「…うん。解ったわ。」
僕君は笑顔を覗かせた。
「ガブリエルはキマイラで、ワルキューレたちはヘルハウンドで、火星に降下する練習を兼ねて降下(おりて)欲しいんだ。」
「…僕君は降下(おり)ないの?」
「心配はいらないよ。ガブリエル。」
「僕はガブリエルたちが降下したのを練習を見届けたら、すぐに降下(おりる)よ。」
「解ったわ。」
私は五体のワルキューレたちを従え、格納庫へ足を運んだ。
フライト手順に従い、何時でも発艦出来る体制を整えた。
「グォン。」と音とともに機体がハンガーに吊り上げられた。
カタパルトに接続され、射出角が調整されてゆく。
射出角。45度を超えた辺りから身体にキツさを感じた。
まだまだ、下がる。
射出角65度でカタパルトは停止した。
ここから"ジェットコースター"で下る数倍の体感がはじまる_。
「射出角65度。射出進路に障害物無し。」
「パイロットはアフターバーナー点火スタンバイ!」
「オールグリーンを確認!射出っ!」
半端無いGが身体に、のし掛かる。
「大気圏突入30秒前!全機、ブラスターシールド膜展開ッ!」
機体が対大気圏摩擦熱用・液体流動保護膜に覆われてゆく。
【戦闘A.I搭載・分離ウイング可変ブースター型格闘機ヘルハウンド/特別仕様キマイラ】
・自立型A.I搭載(ヘルハウンド量産機)
※ガブリエル専用機キマイラには搭載されていない。
射出から25秒後、大気圏に突入した。
摩擦熱による機体温度が、みるみるうちに上昇してゆく。
さらに10数秒が過ぎ、この機体の特徴でもある可変ブースターを降下する地上へ向け可変、降下速度を落とす為ブースターを噴射した。
数秒後、視界が開けて来る。
眼下には浮遊大陸が見える。
真上から浮遊大陸を線で結び見ると、正五角形に浮遊する大陸の中央にもう一つ、浮遊大陸が解る。
【浮遊大陸摩天楼】
今のところ摩天楼は五つ。
北側に【水の摩天楼】。
西側に【風(気)の摩天楼】。
東側に【地(土)の摩天楼】。
南西側に【火の摩天楼】。
南東側に【械(機械)の摩天楼】。
中央はまだ、建設途中みたいだ。
「凄~い!」
「たった三日でこんなにも。」
「流石は僕君が信頼するミカエルさんね。」
私は心の中で呟いた。
まもなく着陸だ。
雲を掻き分け、降下する。
メガロポリスを避け、旧市街地へ機体を向けた。
私たちの拠点とする区画に五機のヘルハウンドを従え、私はキマイラを着陸させた。
可変ブースターをノーマルの位置に戻し、着陸した。
機体から降りた私たちを出迎えたのは、僕君だった。
「お帰り。ガブリエル。」
私は目をパチクリさせた。
「あっ!テレポテーション!」
「僕君、ズルい。」
「ズルくないさ。ちゃんとガブリエルたちの練習を見届けて、約束通り僕も降りて来た。」
「アハハ。」
「あのさぁ。僕君、あの五つの摩天楼の塔の中って見学は無理なか!?」
私はダメもとで話題に出してみた。
返事はあっさりと「二日後ならOK」だった。
それどころか、完成した各塔の管理人を紹介して貰える事に成った。
【火の摩天楼の管理者サラマンダー将軍】
【サラマンダー】
四大精霊のうち、火を司る精霊・妖精(elementals)である。
サラマンデル、サラマンドラとも呼ばれる。
炎を操る特徴からファイアー・ドレイクと同一視されることもある。
後世には羽の生えたドラゴンの姿で描かれ、しばしば紋章のモチーフにもなった。
飛竜の姿であるサラマンダー(ファイアー・ドレイク)とは、自然現象をドラゴンの姿で表現したものだと考えられている。
そのためか、出典のはっきりしない伝承であるが、熱い雲と冷たい雲が交わって生まれたとも言われている。
溶岩やマグマの中を水中のように泳ぐこともできる。それゆえ、「火の精霊」もしくは「死者の魂」と同一視されることもある。
イギリス諸島の湿地や沼地または北ヨーロッパの山の洞窟に棲んでいるとされる。
また、財宝を守っていると言われており、財宝に近づく者を絶対に容赦しないとされる。
「火の竜」を意味する名前の通り、炎をまとい、口からも炎を吐く。
空を飛び、それが現れる時は辺り一面、昼のように照らされる。
曇天の空に不思議な光が走る時は、サラマンダー(ファイアー・ドレイク)が飛んでいるのだとされた。
【水の摩天楼の管理者ウンディーネ将軍】
【ウンディーネ】
四大精霊のうち、水を司る精霊(elementals)である。
語源は羅: unda(「波」の意)である。他言語では、仏:Ondine(オンディーヌ)、英:Undine(アンダインまたはアンディーン)、伊:Ondina(オンディーナ)。
湖や泉などに住んでおり、性別はないが、ほとんどの場合美しい女性の姿をしているとされ、人間との悲恋物語が多く伝えられている。
パラケルススによると、ウンディーネには本来魂がないが、人間の男性と結婚すると魂を得る。
しかしこれには大きな禁忌がつきまとう。
ウンディーネは水のそばで夫に罵倒されると、水に帰ってしまう。
夫が不倫した場合、ウンディーネは夫を殺さねばならない。
水に帰ったウンディーネは魂を失う。
【風(気)の摩天楼の管理者シルフィード将軍】
【シルフ】(Sylph)、あるいは【シルフィード】(sylphid)とは、四大精霊のうち、風を司る精霊・妖精(elementals)である。この言葉の起源はパラケルススであり、その著書の中でシルフについて、空気の要素を持つ目に見えない精霊であるとしている。
その姿を現すと、ほっそりした優美な人間の少女に似ているされた。
【地(土)の摩天楼の管理者グノーメ将軍】
【ノーム】(英: Gnome)は、スイスの錬金術師パラケルススが提唱した四大精霊のうち、大地を司る精霊・妖精(elementals)である。
主に地中で生活しており、鉱脈の場所などにも詳しいとされる。
派手な色の服と三角帽子を身につけているとされた。
手先が器用で知性も高く、優れた細工品を作る。
ゴブリンやドワーフ(ドヴェルグ)、ノッカーと近い関係にあるともいわれ、近年では多数存在する地中で暮らす精霊の一種族として扱われることも多い。
「ノーム」は英語読み。
語源はギリシア語の「ゲノーモス(Genômos, 地中に住むもの)」で、「グノーム(Gnom)」の女性形「グノーメ(Gnome)」が本来の読み。
土鬼とも和訳される。
【械(機械)の摩天楼の管理者サタナキア将軍】
【サタナキア】
ヨーロッパの伝承に伝わる悪魔の1人。
魔術や悪魔学に関して記したグリモワールと呼ばれる一連の文献においてその名前が見られる。
プート・サタナキア(Put Satanachia)とも呼ばれる。
18世紀もしくは19世紀に民間に流布したグリモワールの1つである『真正奥義書』によれば、サタナキアはルシファーの配下の悪魔であり、ルシファー、アガリアレプトとともにヨーロッパ・アジアに住まう。
Sergutthy、Heramael、Trimasel、Sustugrielをはじめとした45もしくは54の悪魔を従えている。
『真正奥義書』と関連があると考えられている大英図書館所蔵の文献、ランズダウン稿本1202『アルマデルによるソロモン王の真の鍵』(Les Vrais Clavicules du Roi Salomon par Armadel)にも、ルシファー配下の悪魔たちの首領としてSirachiとSatanachiという名前が挙げられている。
同じく18世紀以降に流布したと考えられているグリモワール『大奥義書』にも登場している。
『大奥義書』におけるサタナキアは、地獄の3人の支配者ルシファー、ベルゼビュート、アスタロトに仕える6人の上級精霊の1人である。
アガリアレプトとともに将軍を勤め、大将(総司令官)とされる。
プルスラス、アモン、バルバトスら3人の精霊を配下に持つ。
また、あらゆる女性を意のままに従わせる力を持つという。
【ルシファーの母の摩天楼の管理者デーメーテール将軍】
【デーメーテール】(古希: ΔΗΜΗΤΗΡ, Δημήτηρ, Dēmētēr)は、ギリシア神話に登場する女神である。
長母音を省略してデメテルとも表記される。
豊穣神であり、穀物の栽培を人間に教えた神とされる。
オリュンポス十二神の一柱。
その名は古典ギリシア語で「母なる大地」を意味する。
「掟をもたらす者」という意味の「デーメーテール・テスモポロス」という別名がある。
クロノスとレアーの娘で、ゼウスの姉にあたる。
ゼウスとの間に娘コレー(後の冥府の王妃ペルセポネー)をもうけたものの、その経緯はゼウスがデーメーテールに無理やり迫った挙句、無理やり子供を作らされたため、ゼウスにあまり良い印象を持っていなかった(ただし子供であるペルセポネーには愛情を注いでいた)。
さらに兄弟の海神ポセイドーンからも無理強いされ、秘儀の女神デスポイアと1頭の名馬アレイオーン(アリーオーン)を生んだ。
最も有名な恋人のイーアシオーンは愛する者をとられたゼウスの嫉妬によって稲妻に撃たれた。
普段は温厚だが怒ると飢餓をもたらすため、ゼウスも一目置いている。
テッサリアの王エリュシクトーンが屋敷を増築するため、デーメーテールの聖地である森の木を根こそぎ伐採したときには、彼の下へ「飢餓」を遣わしてエリュシクトーンをいくら食べても満たされないようにし、最終的にはエリュシクトーンが自身の体を貪り食う形で死に追いやった。
だが、彼の娘であるムネーストラーには同情し、恩恵を施した。
デーメーテール信仰の歴史は非常に古く、紀元前10世紀(紀元前17~15世紀頃からデーメーテールの祭儀であるエレウシスの秘儀が始まっていることからさらに古い可能性もある)にも遡ると考えられる。
デーメーテールの名前も後半「メーテール」は古代ギリシャ語の母を意味する言葉である。前半の「デー」ははっきりとはしないが、大地を意味する「ゲー」(ガイア)が変形したものであるとの説が有力である。
この名前が示す通り、彼女は本来、ギリシャの土着の農耕民族に崇拝された大地の女神、豊穣の女神と考えられている。
後世にギリシャに侵入した遊牧民族(と考えられる)は農耕民族を征服し、被征服民族のこの信仰を弾圧した。
デーメーテールがゼウスに辱めを受ける神話は豊穣の女神に奉じる農耕民族が雷の神を奉じる遊牧民族に征服されたことを、ペルセポネーが攫われた事でデーメーテールが放浪する神話は彼女の信仰の拠点が弾圧によって各地を転々とした事を示していると考えられている。
しかし結局、被征服者のデーメーテール信仰を無視できず自らの神である雷の神の姉(あるいは妹)であり愛人の地位を与えて取り込んだものと考えられ、神話でもデーメーテールは神々の始祖であるガイアからレアーに続く地母神の正当な後継であり、数多の女神の中でも最高位の存在とされ「大女神」と呼ばれている。
【暗黒の魔将軍(バベルの塔の管理者)ハーデース】
【ハーデース】(古希: ΑΙΔΗΣ, Ἅιδης, Hādēs) は、ギリシア神話の冥府の神。日本語では長母音を省略してハデスとも呼ばれる。
クロノスとレアーの子で、ポセイドーンとゼウスの兄である。
妻はペルセポネー。
その象徴は豊穣の角及び水仙、糸杉。
ポセイドーンと同じく馬とも関連がある。
オリュンポス内でもゼウス、ポセイドーンに次ぐ実力を持つ。
後に冥府が地下にあるとされるようになったことから、地下の神ともされる。
普段冥界に居てオリュンポスには来ないためオリュンポス十二神には入らないとされる場合が多いが、例外的に一部の神話ではオリュンポス十二神の1柱としても伝えられてもいる。
また、さらに後には豊穣神(作物は地中から芽を出して成長する)としても崇められるようになった。
パウサニアースの伝えるところに依ればエーリスにその神殿があったといわれている。
第三話へ
つづく。
ーあとがきー
この物語りは、趣味を含むオリジナル作品です。
冒頭に引用書きした闇の柊焉
RETURNER~闇の終焉~
作詞:Gackt.C 作曲:Gackt.Cの曲を視聴した時、"これだ"と感じた、この物語りのヒントと成ったのをきっかけに加え、古の神話を今時風の神話を書いてみたいとの思いから、書いてみる事にしました。
使用している画像は挿し絵的イメージです。
また、一部の画像は、インターネット内に出回っている数有る画像から引用したものです。
※一部、Wikipedia及びYouTubeより引用。