ー希望の継承者サーシアー
宇宙戦艦ヤマト2202外伝
第八話
「……クッ。総統はまだ戻らぬか……。」
「通信オペレーター!もう一度、もう一度、呼び出すんだ!」
慌てた口調でタラン参謀長が命じた。
「総統!至急、お戻り下さい!」
FS宙雷艇に戻るなり、緊急通信が飛び込む。
「タラン君。参謀である君が慌ててどうする?」
「私の艦(ふね)を除いても七十隻以上も艦隊だったと思うが。」
「お言葉ですが、総統!敵は、1.000を超える艦隊!」
「1.000!?たかが1.000ではないか。何の為のデスラー砲艦なのかな?」
「とにかく、直ぐに戻る。」
「時には女神様も歴史を間違って認識する事もあるようだ。」
「いいえ。総統、それは誤りです。」
「私がわざと誤認するように話をしたのです。」
「わざと?」
「ええ。わざとです。」
「させれば、貴方は真実と異なる事の真相を突き止める為、シャンブロウに赴くはずと。」
「成る程ね。」
「流石はセレステラ。私の性格を良く知っている。」
◆◆◆◆
今から26年前(西暦2189年)__。
ー小マゼラン銀河外縁部:惑星ジレルー
「第7.8.9.12防衛衛星消失!!」
「我々の戦力では最早太刀打ちが困難!!」
この年、新たな主導者と成る種族長が誕生した。
同時に、惑星外から侵略されると云う動乱の時を迎えた__。
制宙権を僅か24時間で奪われた惑星ジレル。
「防空宙隊:隊長!!全戦力を防空へ回せ!!」
「レーレライ様が一部の民と巡礼に出ている時に……。」
ジレル自衛軍。
第343自衛空宙隊は、種族長代行セレナの命(めい)により、防宙を放棄、惑星内防衛へとシフトした。
ジレル自衛軍防空宙隊には、戦闘機部隊の1つ九尾隊がある。
部隊名は、この惑星(ほし)に古くから伝わる《神獣:九尾の狐》から由来する。
◆
《惑星ジレル:神話(神獣)九尾の狐》イメージ
◆
太古の昔、1度だけ行く先々で侵略を繰り返し、その惑星(ほし)の利用価値が無くなると次の惑星へと渡り歩く侵略惑星国家に、このジレルも侵略をされかけた事があった。
だが、神の惑星:アケーリアスの女神の守護神の1つ九尾の狐によって、この侵略惑星国家は撃退され、窮地を救ったと言い伝えられている。
その事から、このジレルの最強を誇る自衛軍:防空宙隊:隊名に代々使用している。
九尾隊:隊長:コドー・ウーは陽動撹乱を主とした大気圏内でガトランティス侵略軍を迎え撃つ為、遊撃隊を編成、迫り来るガトランティス侵略軍に食らい付く。
「我ら九尾隊はこれより、迫り来るガトランティス侵略軍を迎え撃つ!!」
「セレナ様が神の艦(ふね)を起動させ、民を引き連れ脱出するまでの時間稼ぎが主の目的である!!」
「皆!!無駄死にはするな!!」
「無理と思えば、直ぐに戦線から離脱せよ!!」
「一人でも多くのジレルの種を残す為にも!!」
ジレル自衛軍防空宙隊:隊長コドー・ウーは大気圏突入時を狙うように指示を出した。
いくら高性能な攻撃力で高機動力であっても大気圏突入時は、一時的ではあるが性能は落ちるもの。
大気圏突入速度を安定させる事で、精一杯の状況で、攻撃されれば、回避運動はレーダーが効きにくい事もあり、ヒットしやすい。
ましてや反撃にしようにも、同等な理由から中々、直撃弾を喰らわす事もままならないのだ。
「全機!大気圏突入時を狙え!!」
「了解!!」
「それより、隊長!撃墜スコア大金星ですね!!」
「駆逐艦タイプの撃破おめでとうございます!」
「オキィ!そんな事より、次、降りて来るぞ!!」
「セレナ様が発進するまであと、21分だ!油断するな!」
「チッ!本隊は軌道上で高みの見物かよ!」
「格闘型=デスバテーターの厄介なヤツが降りて来やがった!!」
「隊長!格闘型=デスバテーターだ!!」
「ああ。それと駆逐艦タイプが二隻、大気圏内に突入した!」
「なんとしても、この二隻と格闘型は排除する!!」
迫り来るガトランティス侵略軍。
大気圏内に突入した二隻のククルカン級は、突入と同時に無差別に地上攻撃に移行した。
幸い、ジレルの人々たちは侵略が始まった直後から、地下都市へと避難を開始、地上施設には誰一人として居ない。
地上から2.000メートル以上掘り下げられた地下の岩盤が屋根代わりの縦、横、200.000メートル以上のドーム内が地下都市。
ククルカン級のビーム弾やミサイルによる空爆が相次ぐ。
天井や壁面の内側から、小石程の大きさの岩盤がパラパラと落ちる。
「キャー、キャー」と悲鳴も岩盤ドーム内のあちらこちらで、飛び交う。
「いくら地上都市を空爆しても、誰一人としても居ないよッ!!」
「墜ちろッ!!蛮族!!」
九尾隊が使用する防空宙戦闘機は、主翼がエンジン寄り、胴体部やや後方にある。
その主翼後部には縦二列、左右に高性能エンジンが合計四基、装着されている。
そのエンジンの横にハードポイントが左右に三基つづ、合計18基のミサイルが装着されている。
更にエース機は主翼先端部が15度下方に折れている。
その下部には、12.000発を発射可能とした固定武装:25mm8連装バルカン砲を装備。
機体の特徴としては、機首の下部に垂直尾翼にあたる安定翼がある。
我が物顔で暴れまくる二隻のククルカン級と、それを護衛する15機のデスバテーターを相手にエースを含めて20機の九尾隊。
「あと3分だ!!あと3分でセレナ様の宇宙船が発進する!!」
「なんとしても墜とすぞ!!」
たかが3分、されど3分であった。
僅か3分がこれ程までに長く感じた事はなかった。
この3分の間に6機の友軍機が新たに撃墜された。
郊外にある旧市街地首都200.000メートル四方に仕掛けられた爆薬が一気に爆破され、導火線のように発火された場所から連動、旧市街地首都にそびえる宮殿が崩壊する。
崩壊する瓦礫を押し退け、このジレルの王家に代々伝わる神の船=アケーリアスから伝わったとされる船。
《ジレル・インペリアル・スターシップ》
全長:1.000メートルを超えるほぼ非武装の宇宙船。
九尾の狐と共にやって来たこの宇宙船。
超アウトレンジから撃つ事の出来る主砲=超量子レーザー1門と、八連装:量子魚雷発射管を両舷側に装備する。
主機関は不明だが、超空間跳躍=連続ワープが可能で、一定時間のバリアを張る事が可能である。
グングンと大気圏内を上昇するインペリアル・スターシップ。
4機のエース機を残し、九尾隊10機が護衛に付く。
逃さんとばかりに回頭するククルカン級二隻。
「よし!セレナ様が脱出なされた!」
「ガトランティスの艦(ふね)を引き付ける!!」
「弾幕を避けつつ、ブリッジを狙え!!」
縦横矛盾に飛び回り、ククルカン級二隻のブリッジを目指す九尾隊エースの4機。
だが、そんな中、三番機:ヒューイ・ジィ機が被弾してしまう。
脱出レバーを引くヒューイ・ジィ。
そのヒューイ・ジィに容赦なく襲い掛かるデスバテーター機。
脱出したヒューイ・ジィのランドパラシュートを撃ち抜くデスバテーター機の機銃。
「やめろーーーッ!!」二番機:オキィが叫んだ。
瞳を閉じ、口からは血へどを吐くヒューイ・ジィ。
ランドパラシュートから黒煙を撒き散らして急降下するヒューイ・ジィは地面にそのまま叩きつけられる。
「うわあぁぁぁーーーッ!!」
「よくもヒューイ・ジィをッ!!」
ヒューイ・ジィを打ち落としたデスバテーターを追撃するオキィ。
そんなオキィを他所にインペリアル・スターシップを追撃するククルカン級二隻とインペリアル・スターシップにハイエナの如く群がるデスバテーター機。
大気圏を離脱したジレル・インペリアル・スターシップ。
行く手を阻むように、ガトランティス侵略軍:旗艦:試作型メダルーサー級ヘル・ハウンドが立ち憚(はばか)る。
《旗艦:ヘル・ハウンド艦長兼艦隊司令:ロジアーノ》
「逃がしゃしないよ!!」
だが、更に遥か前方に30隻あまりのワープアウト反応をレーダーが捉えた。
「くっ!ここまで来て新手か!」
識別灯からして、ガミラスの艦艇だと分かった。
これに過剰なまでに反応したガトランティス侵略軍:指揮官:ロジアーノは、ジレル・インペリアル・スターシップを盾にする事を思い付く。
全長:1.000メートルもあるスターシップ、間違っても3、4発の直撃弾を食らっても沈む事は無いと踏んでいた。
ワープアウトするや否や、ガミラス:ゼーリック上級大将航宙部隊:小マゼラン監視艦隊:ゲール艦隊司令は、識別灯の確認もそこそこに攻撃を開始した。
反撃するガトランティス侵略軍。
旗艦:ヘル・ハウンドはスターシップへの攻撃を一時的に取り止め、盾にする為、後方へ下がった。
「青虫のガミラスよ!これでも喰らうがいいッ!!」
「空間跳躍レーザー波送射!!」
「五連量子衝撃波砲!!撃てーーーッ!!」
ヘル・ハウンド前部に装備された五連装:量子衝撃波が撃ち放たれると同時に空間跳躍レーザー波が、そのエネルギー弾を包み込む。
ロングレンジ攻撃に度肝を抜くガミラス:ゲール司令。
ここで、艦隊がこのまま潰滅してしまっては、後からやって来るガミラス総統:デスラーに顔向け出来ない。
そんな思いから、ゲールは艦隊を後退させる。
だが、ヘル・ハウンドの撃ち放つ、空間を跳躍する五連装量子衝撃波砲の餌食と成ってしまう。
焦るゲール。
空間跳躍する攻撃にワープアウトして僅か2分で、8隻を失うゲール艦隊。
僅か3隻のガトランティス侵略艦隊に、精神的に追い込まれるゲール艦隊司令に、朗報とも言える報告が飛び込む。
それは、デスラー総統、自ら戦果状況を視察に赴きと云う事もあり、ゼーリック上級大将は、援軍と云う訳ではないが、自身の総統忠誠心の現しとして、もう一部隊を派遣していたのだ。
その数、更に30隻あまりの艦艇であった。
とにかく、その艦隊が到着するまで今の艦隊数を維持する為、更に後方へ下がり、陣形を解き、バラバラに展開させた。
この事に寄り、複数の艦(ふね)が空間跳躍する攻撃に沈む事は避けられた。
援軍とも言える30隻あまりの艦艇が、ワープアウトする。
だが、その時であった、誰一人と武装用端末キーボードに触れてもいない状況で、ジレル・インペリアル・スターシップの主砲塔が独りでに動きはじめたのだ。
「砲術士!誰が主砲を動かせと言った?」
「いえ!自分は何も!」
「船が勝手にッ!!」
「セレナ様!!シッ、シールドが勝手に解除されています!!」
「何だと!?」
セレナをはじめ、同乗するクルーたちも、何が起きているのか困惑していた……
「何が起きている?」
「オペレーター!即座に制御せよ!!」
困惑するクルーたちに対し、口調が荒くなるセレナ。
そんなセレナを他所にインペリアル・スターシップはまるで自身の意思で動くかの如く、主砲にデータ送信とエネルギーチャージを行っていた。
ジレル・インペリアル・スターシップの中核:マザーコンピータ室。
この部屋は、この船が飛来してからこのかた、誰一人として入室した事が無い。
した事が無いと云うより、誰一人として入室が出来ない状態であった。
あらゆる方面の専門家によって幾度となく、入室を試みたが入室出来た者はいない。
1万年以上もの間、誰一人として入室出来た者はいないのだ。
「コノ私ニ攻撃トハ愚カナ者達ヨ!」
「オモイシルがヨイ!!」
マザーコンピータの意思により、装備されている主砲が動き出す。
「左舷角176度、右舷角150度、仰角32度、インプット完了!!」
次の瞬間、主砲=超量子レーザーが放たれた。
左から右へと主砲塔が旋回、レーザーの刃が30隻あまりものワープアウトしてた来たガミラス艦隊を凪ぎ払う。
左から右へと輝いては消える輝かしい光はやがて悪魔の光へと変わる。
8割以上のガミラス艦隊は宇宙の藻屑と消え、残り2割は航行不能となった。
叫び声と怒号が響き、交差する。
「フッハッハッハッ!!」
「コヤツら青虫のガミロンを凪ぎ払ったぞ!!」
「コヤツの艦(ふね)を大帝に献上する!!」
「攻撃は最小限にとどめよ!!」
「拿捕する!!」
旗艦:ヘル・ハウンド艦長兼艦隊司令:ロジアーノは、ジレル・インペリアル・スターシップ撃破の命令から拿捕へと切り替えた。
だが、インペリアル・スターシップの中核:マザーコンピータはガトランティス侵略艦隊も排除すべき者と認識、量子魚雷を撃ち放つ。
両舷側から撃ち放たれた16発の蛍光ピンクに輝く光弾が各ガトランティス艦に食らい付く。
インペリアル・スターシップの前方に陣取るヘル・ハウンドに8個の光弾:量子魚雷が狙い、後方から迫り来るククルカン級二隻には各4個の光弾:量子魚雷が狙う。
インペリアル・スターシップから撃ち放たれた量子魚雷はマザーコンピータの意思により、まるで獲物を狙うコブラのように回避運動するヘル・ハウンド、ククルカン級二隻にしっかりと射程に捉え、食らい付く。
三艦の轟沈を確認したマザーコンピータは、何事も無かったかのように、その機能を停止、再び眠りについたのだ。
機能を停止した事により、インペリアル・スターシップは機関も停止、宇宙を漂う。
攻撃から逃れたゲール艦と数隻のガミラス艦は、自軍の負傷者の救助をそっちのけで、インペリアル・スターシップを取り囲み、拿捕した。
「よくも我々、ガミラスを攻撃してくれたな!」
「お前らは死罪に値するッ!!」
「一生、奴隷としてこき使ってやるから覚悟しておけッ!!」
唾を撒き散らし、いきり立ちながら自分の感情を撒き散らすゲール准将。
「ゲール准将!デスラー総統が御到着致しました!」
「うむ。」
「出迎えだ!急げ!」
◆
「ゲール准将。出撃させた艦の数が合わないな。」
「蛮族の艦(ふね)の残骸の数より、コチラの艦の残骸がやたらと多いのは気のせいかな?」
ゲールはその質問に冷や汗をかきながら、言い訳を陳(の)べた。
主導者を奴隷にし、他の民は収容所惑星送りにしたと告げた。
「ゲール君。ガミラスに奴隷など不用だ。」
「君の処分と、あとの事は君の上官であるゼーリック上級大将に任せるとする。」
「私はこれから収容所惑星へ赴く。」
「下がって良いぞ。ゲール君。」
デスラーは自ら収容所惑星に赴き、収監された少女たちを連れ出した。
左 少女時代《ミーゼラ・セレステラ》
右 少女時代《ミネーレル・リンケ》
収監された少女の内、一人はデスラー総統の側近として自身を確立した。
それが、ミーゼラ・セレステラ。
そして、そのミーゼラ・セレステラの直属の部下としてミネーレル・リンケ特務少尉を配置し、他の少女たちは各前線へと送り出した。
後に、ミーゼラ・セレステラとミネーレル・リンケはバラン星:宙域にて宇宙戦艦ヤマトと交戦、精神攻撃を仕掛け、勝利まであと一歩のところで破りれ妹のように可愛がっていたミネーレル・リンケは戦死した__。
◆◆◆◆
第九話へ
つづく。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち》の二次創作です。
一部、公式より引用。
また、プレイステーションゲーム版設定資料より引用。
使用している画像はイメージです。また一部、拾い画を使用しています。