宇宙戦艦ヤマト2203
ー新たなる航海ー
第七話
宇宙戦艦ヤマトと入れ替わるように、ディアーブーロはイスカンダルマザータウンを後進しながら離脱してゆく。
「主砲、発射よーい!!」戦術長の南部が告げて来る。
「待て!撃つな!」
だが、古代の待ったが掛かる。
「何故です!奴の行動を見たでしょ?」古代の"待った"に問いかける南部。
「あの艦の動きが変わった。後進しながら離脱している。」
「あの動きからまだ、あの艦の艦長と対話の可能性が残されている。」
「今は、撃つな。」
血の色に染まったマザータウンの大地。
小枝や木葉、小石が転がるように、何の罪を犯したでもないガミラスの臣民たちの屍は、大地と同化して見えた。
ほんの僅かに生き延びた臣民たち、そして負傷しながらもガミラスの少女イリィを庇い、助けたメルダをヤマトは収容、艦を預かる古代は、この惑星イスカンダルの女王スターシャと映像回線を繋いだ。
「……ヤマト。」
「スターシャさん。貴女に尋ねたい事が幾つかある。」
「その中で先ず、お聞きした事は、あの艦(ふね)は、何です?」
「……あの艦(ふね)は、イスカンダルの古の戦闘艦。」
「古のデータがそのまま引き継がれた存在してはいけない艦(ふね)。」
「わたくしが甦らせた艦(ふね)。」
「………貴女が、貴女が甦らせた艦(ふね)。」
「何故……。」
「あの艦(ふね)は本来、古のデータが起動後、削除され、貴方のお兄様の記憶から造られたクローンが制御するはずだった艦(ふね)……。」
「ですが、意思を持つメインコンピュータの制御が不完全でコントロールを失った艦(ふね)と成ってしまったのです。」
「どうやら今は、覚醒したクローン、即ち古代 守がコントロールしているようです。」
「しかし、そう長くはコントロール出来ないでしょう。自立型コンピュータが再起動するまでの僅かな時間しか残されていないのです。」
「あの艦(ふね)を沈めなければ……」
「惨事は繰り返されてしまう………。」
「スターシャさん。お話は解りました。」
「あの艦の艦長に連絡を取って頂きたい。」
「艦長とクルーをお連れして、沈めます。」
「……古代艦長。それは出来ない。」
「出来ないって何故です!」
「クローンではあるものの守が、艦を降りれば、時間(とき)を待たずして、自立型コンピュータは再起動します。」
「………。」古代は返す言葉を失っていた。
「……俺は、俺はクローンではあるものの守兄さんに引き金を引かなくてはならないのか……。」
心の中で自問自答する古代は、何時しか拳を握っていた。
そして・・・
「スターシャさん。これからヤマトのクルーを降ろします。」
「どうかヤマトに万が一の時は、地球へ送り届けて欲しい。」
「あの艦との一騎討ちを申し込む!」
ざわつく第一艦橋内。
「……解りました。古代艦長。」
その言葉を最後にスターシャとの回線は途絶してしまう。
何度、回線を繋ごうとしても、アクセスエラーと拒否されてしまうのだった。
王宮まで後退したディアーブーロ。
◆
「古代艦長。完全ではないが、あの艦のデータを予測してみた。」
「先ず、戦闘力は1.000年も前の代物とは思えないほど高性能である事は、想像がつく。」
「おそらくヤマトと同等かその上を行くだろう。」
「ヤマトで言う波動砲や波動防壁は、確実に装備されている。」
「それに加えて、これを見てくれ。」
真田は退艦命令が、古代の口から発せられる前に意見具申として、話始めた。
「本体と波動砲を繋ぐようにヤマトの倍以上の口径を有する衝撃砲だ。」
「これらには、接合器具らしきものが見当たらん。」
「ここからは自分の推測だが、あの戦闘艦は分離が可能だ。」
「おそらく超磁力浮遊連結基(機)によるものだ。」
「ヤマトで言うマグネトロンウェーブだ。」
「遠隔操作が可能だと推測した。」
「元々は自立型コンピュータのみで、本体も衝撃砲も波動砲も操れる仕組みなはずだ。」
「て言う事は真田技術長。」
「あの戦闘艦に乗り込み、メインコンピュータを破壊すれば……」
「いや、破壊はあくまでも最終手段だ。」
「此方でコントロール可能にすれば、事は足りる。」
「しかし、どうやってコントロールを掌握するのです?」
「ウィルスだよ。コンピュータウィルスだ。」
「コンピュータウィルス?今時、コンピュータウィルスなんてブロックされてしまうでしょ!?」
「それにはちょっと考えがある。」
「古代。イスカンダル航海時、オルタの事を覚えているか?」
「アナライザーとオルタの事は覚えています。」
「まさか!」
「そう。そのまさかだ!」
「アナライザーに注射して貰うのさ。」
「互いにイスカンダル内では、決戦兵器とも云える波動砲は使えない。」
「通常兵器のみでの殴り合いだ。」
「向こうは分離して来るだろうから、その時がチャンスだ。」
「ワープで相手の懐に飛び込み、白兵戦の要領で内部へ侵入、アナライザーを送り届けて我々は撤退する。」
「撤退するまで相手はヤマトを撃つ事も出来ないからな。」
「それに何もブリッジを制圧する必要はない。端末機があれば、あとはアナライザーがウィルスを注入、コンピュータを掌握、コントロールするだけ。」
「と云う事だ。これで"総員退艦"の命令を出さなくて済むだろ!?」
「流石です!真田さん。」
「総員!第一級戦闘配置!」
「砲雷撃戦よーい!」
「相原。あの艦に一騎討ちを申し込む!回線を繋いでくれ。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/56/d2b2b2ea124cb2174e18a69ecb707291.jpg)
「此方、イスカンダルのイスク・ディアーブーロ艦長、ロックス・イスカンダル。」
「自分は地球連邦防衛軍所属、宇宙戦艦ヤマト艦長、古代 進。」
「手合わせを願いたい。」
「一対一の艦(ふね)と艦(ふね)の勝負。」
「古代艦長。了承した。受けて立つ。」
こうして、宇宙戦艦ヤマト対ディアーブーロの艦と艦の戦いの火蓋は切られた・・・
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つづく。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち》の二次創作です。
一部、公式より引用。
また、プレイステーションゲーム版設定資料より引用。
使用している画像はイメージです。また一部、拾い画を使用しています。