◇星の守護神◇
宇宙戦艦ヤマト2199サイドストーリー
エピローグ
「大気圏を離脱!」
「うむ。」
「各typeシュデルグへ通達!全ゼードラー機を発艦ッ!!」
それぞれのtypeシュデルグから一度、回収されたゼードラー(ワン)50機が、補給を済ませ発艦した。
「全機!鬼神に攻撃開始せよ!」
ニンギルスを取り囲むゼードラー50機から対空ミサイル100発が、撃ち込まれた。
恐ろしい程の輝かし光の環。
爆煙で景色は嵐の前の黒々とした入道雲を連想させた。
その入道雲は霧が少しずつ晴れてゆくかのように、風に誘われるがままに散ってゆく。
朧月を思わせる景色が浮かんでいた。
「……鬼神の姿が確認出来ます……。」
唾を呑み込んだオペレーターの一人が、呟くように口を開いた。
「ばっ、バカな!」
「100基(発)もの対空ミサイルが効かないだと……。」
ニンギルスの周りには6基のポッドがプラズマ波を共振させながら「くるくる」と回っていた。
煙の隙間から紅く光る目が不気味に死に神を連想させた。
◆
宮殿内に侵入したメルバー2両は進撃の足を止めた。
33mm機関砲を装備したキューポラ=司令塔のハッチが開き、車両隊長が双眼鏡を片手に辺りを索敵した。
「…妙に静か過ぎる。」
「罠かも知れん。我らは此処に待機。」
「この先はアンドロイドたちに進撃させる。後部ハッチ、開け!」
二両のメルバーから下車するガミラスアンドロイド兵16体。
「女王は生け捕りに、他の奴らは抵抗が激しい者は殺せ!」
「あとは捕虜にする。」
「進撃せよ!」
二列縦隊に整列したアンドロイド兵たちが、行軍を開始した。
「ザッ!ザッ!ザッ!」と足音を響かせ、宮殿の奥へと消えた。
その足音はやがて、悲鳴と怒号そして連射される銃声に変わった。
「破散弾ッ!!」
「…こやつら呪札が効かぬ。」
「人間ではないのか?」アヌビスは得意とする科学術を手を変え品を変え、幾度も発するも機械で動くアンドロイド兵には、かすり傷程度が関の山だった。
「ならば剣で倒すまで!」
「オオオォォォォォォォォーーッ!!」
◆
「ララシャ様!やはり波動エンジンが悲鳴を上げましたわ!」
「このままではラガシャ(ビーメラⅣ)に墜ちます!」
「……ん!?4時の方向で激しい戦闘が確認出来ます!」
「このままですと霞めてラガシャに突入する事に成ります!」
「ええ。かまわないわ。そのままラガシャへ!」
「承知致しました。」
「あっ!待ってイヴ!」
「アレを何時でも起動出来るようにセットしておいて下さいな。」
「…アレをですか?」
「そう。アレをね。なんて云うか保険ね。万が一の時の。」
「かしこまりました。ララシャ・イスカンダル。」
その数分後、ララシャのシュヘラザードは戦闘宙域を霞め、ラガシャ(ビーメラⅣ)の大気圏を突入した。
だが、イヴの警告通り、ララシャのシュヘラザードはエンジントラブルを起こし、岩山に囲まれた草原地帯に不時着した。
土を抉り、草花を蹴散らし、大きな一直線を大地に刻みながら数百メートルを進んだところで、漸く停止した。
「あたたたたた…。」片目を瞑り、腰に手をあてがい立ち上がったララシャは、イスカンダル近衛隊に古くから代々、長(ちょう)を継ぐ者だけに持つ事を許される刀をケースから取り出した。
その握り部分=柄(つか)には"正村"と彫られていた。
ララシャは、一緒に携帯したガントレットを装着、正村を握りシュヘラザードを降りると宮殿へと足を向けた。
「古の伝説通りなら、あの機動兵器は最早、人は乗っていない。」
「宇宙空間で戦っているということは、地上では被害が甚大に成るとの判断なのか?」
「なら、市街地や宮殿の周りに民の一人でも居ても不思議ではない。」
「けれど、まるでゴーストタウン。」
だから、ララシャはまだ、地上でも進撃が続いていると思い、空間戦闘を横目に降りたのだ。
ララシャの感は、当たった。
宮殿内に入ると直ぐに叫びや怒号、銃声までもが耳に飛び込んで来た。
「ん!?あれはガミラスの戦車。」
戦車=メルバーの上にはガミラス兵が見える。
ララシャは正村をギュッと握りしめ、走り出した。
「タッタッタッタッタッタッ。」と靴音に振り返るガミラス兵、「ハァァァァァァーーーッ!!」と気合い声と同時にジャンプしたララシャは正村を頭上高く振りかざすと、そのままの勢いで振り下ろした。
「ゴロゴロ」と床に転がるガミラス兵の頭。
ララシャは間髪入れずに、開いているハッチから携帯したボタン型の小型プラズマ弾を投げ入れ、ハッチを閉めた。
閉ざされた空間内に鈍い悲鳴が充満した。
静まり帰った事を確認するかのようにハッチに耳を当て、様子を伺った。
「念のため、もう一個、入れてと。」ハッチを開け、プラズマ弾を放り込むと素早くハッチを閉めた。
「バチバチ」とショートする音だけで、悲鳴などは聞こえて来なかった。
ララシャはハッチを開け、中に乗り込むと33mm機銃砲塔を旋回、隣のメルバーに打ち込んだ。
無人のメルバーは炎上、黒煙を吹き上げると真っ赤な炎に包まれた。
「この先に臣民たちが居る。」そう心に思うララシャは、メルバーを降り、奥へと走り出した。
◆
「ガガガガガガガガガガガガッ!!」無数の弾痕が刻まれ、ニンギルスの頭部は吹き飛び、二対の腕が大破した。
「怯むな!!艦砲射撃も加えよ!!」
「堕ちろ!化け物ッ!!」
「ゼェゼェ」と肩で息をするかのような仕草を見せるニンギルス。
「…もう残された武器は此れしかない。」
「使いたくはなかったが……。」
「我がラガシャと親愛なる臣民たちの未来の為にッ!!」
「コスモブレイク発動ーーーッ!!」
ニンギルスの腹部に装備された大型ビーム砲、砲口が蒼白い輝きに満たされてゆく。
反物質エネルギー粒子が渦を巻き、解き放たれる時を待っている。
「すべてを凪ぎ払らえーーーッ!!」
目も開けれぬ程の光の塊はニンギルスの手前で炸裂、数百メートル四方にプラズマ波が拡がる。
そのプラズマが数百メートルの空間を一瞬にして呑み込んだ。
真っ白な空間。静けさが保たれるが二秒後、衝撃波がニンギルスを含め襲い掛かる。
その勢いはラガシャ(ビーメラⅣ)をも呑み込んだ。
◆
◆
「遅すぎた……。」涙を浮かべるララシャ。
ララシャのシュヘラザード=イヴはララシャの言い付けを守り、ララシャの記憶を詰め込んだエナジーボールを核(コア)にコスモリバースを発動と同時に長き眠りについた_。
ニンギルス=イシスの発動させた反物質エネルギー粒子砲=コスモブレイクを終息させる事と引き換えにララシャ・イスカンダルも高度な文明も、臣民たち、そしてガミラス公国軍も全てを風化させた_。
◆
◆
「…哀しい過去……。」
「…明るい未来……。」
「歴史は繰り返すわ。」岬百合亜は呟くように言った_。
~fin~
この物語りは私設定が混ざった宇宙戦艦ヤマト2199第16話「未来への選択」のサイドストーリー(二次創作)です。
使用している画像はイメージです。
「宇宙戦艦ヤマト2199」から引用、使用しています。(一部の画像を除き)