ガトランティス戦役から半年、宇宙戦艦ヤマトは時間断層消滅と引き換えに帰還した_。
同盟を結んだガミラス、地球連邦軍、双方にとっては、この半年間で持て余す程の艦隊を手に入れたが、それだけの軍備の維持と復興した都市、企業、生活を支えるエネルギーは時間断層があった頃のように賄(まかな)える程の余裕はなかった。
そこで地球連邦政府が中心となり、ガミラス軍の技術を取り入れ、水星軌道上にスーパーソーラーシステムによる巨大なエネルギープラントを建設、水星から水星軌道上に展開させた反射衛星をリレー中継させ、地球側に建設したメガ発電所にて電力に変換、供給する事で気候や天候に左右されず、地上設置型のソーラーパネルより、遥かに安定して供給が可能と成った。
だが、その安定した暮らしを脅かす事件が発生した。
時に西暦2203年12月_。
◇義手のエースパイロットⅡ◇
宇宙戦艦ヤマト2202サイドストーリー
極東重工業社と両サイドに書かれた民間企業の宇宙船は地球圏を離脱、水星軌道上に建設されたスーパーソーラーシステム・エネルギープラントへ定期点検の為、赴いていた。
連邦政府の管理運営の施設であるが、メンテナンス等は施工会社に任せている。
そう、この事件は、いや事件というレベルを通り越したクーデターである。
メンテナンスを任された彼らメンテナンスクルーによるクーデターである。
地球軌道上に建設する案も議論されたが、二度に渡り恒星間国家による侵攻された経験から、巨大なエネルギープラントは格好の標的に成りかねない事を懸念して水星軌道上に決定された。
反射衛星に関しては、防衛兵器として代用が可能な事から予備基(機)を打ち上げて置くことで、エネルギーの供給も止まる事なく対応可能とした。
更に地球上には無人艦を上下左右及び前後に配置、防衛を強化、侵略者の目を艦艇に向けさせる狙いも兼ねている。
「船長。目的地まで何れくらいだ?」
メンテナンスクルーのリーダー桑田はウイスキーグラスを片手に訪ねた。
「あと4時間くらいだ。」船長の湯川はヘッドセットに手をあてがいながら返事を返した。
湯川は船長で唯一、紅一点でスペースクルーザーのライセンスを保持する同クルーの一人である。
他にクルーは二人居る。
ひとりはPCに精通している。
ハッカーを名乗るに相応しい程の腕前の男で湯川に惚れているが未だに実らず。
もう一人はメカニックとしは、このメンバーの中では右に出る者はいない。
材料さえあれば一応、リクエストに応える器用さがある。
リーダーの桑田は腕力だけが自慢の飲んだくれだが、頭のキレは早い。
「しかし、何故、この時期を選んだの?」
「二ヶ月前にメンテナンスして「また!?」って思われませんかね?」大まかな行動予定しか聞かされていない湯川は、リーダーである桑田に訪ねた。
「思われようと思われまいと、そんな事は問題じゃない。」
「今年のこの時期だからこそリスクが少ない。」
「二ヶ月前じゃ、惑星直列が起きないからな。」
「惑星直列?と、この革命と何の関係が?」
「惑星直列と言っても僅かだがズレがある。」
「エネルギープラントから地球まで惑星の邪魔は無いからな。」
「あとは本番の時のお楽しみだ。」
「本番のお楽しみか。」と心に思う湯川。
「みんな!船外温度が上がりはじめたわ。」
「船外服に着替えた方が良いかも。」
水星が近づくにつれ、船外温度の上昇も速さを増した。
既に船外温度はプラス278度を指していた。
白い船体はオレンジ色に染まっていた。
「防御スクリーンON!」
スペースクルーザーのコックピットをはじめ、窓という窓には耐熱性防御スクリーンが、装着されている。
ブラインドカーテンのように「パタパタ」と降りてゆく。
「プラス302度まで上昇。」
「船内、外冷却装着、正常と。」
「さて、私も船外服に着替えなきゃ。流石に蒸し暑く感じて来たわ。」
「オートパイロットに切り替えてと。」
湯川は搭乗時に着用していたジャンプスーツを一度抜き、船外服を着こんだ。
20世紀や21世紀の頃のゴッツイ感じの宇宙船外服とは異なり、22世紀に入る頃から飛躍的な開発が進み、スリム感を感じる宇宙船外服である。
「水星軌道上に到達。プラントまであと15分!」
「よ~し。チャッチャと片付けちゃうからな。」
「気、引き締めろよ。」リーダーらしく振る舞おうと、桑田は鼻息荒く告げて来る。
◆
同じ頃、地球では最新鋭軽空母アークトゥルース級一番艦アークトゥルースの処女航海の見送りパレードが、盛大に行われる中、処女航海へとアークトゥルースは出航した。
アークトゥルースはガミラス多層式航宙母艦をヒントに建造された宇宙軽空母だ。
これまで地球連邦政防衛軍には宇宙空母という概念はなかった。
宇宙戦艦ヤマトやアンドロメダのように戦艦に搭載スペースを設けるタイプで、事は足りるとされていたからだ。
今でも軍上層部の中には、これを推す者も多い。
だが、新しい試みを取り入れる事で戦略の幅が広がるのでは?との意見を尊重し、アークトゥルースは誕生した。
但し、ガミラス軍のような実用経験が無い事から、正規空母ではなく軽空母で様子を見ようと成った。
アークトゥルース級一番艦アークトゥルースの特徴としては、全通甲板を持たない。
カタパルトデッキ方式を採用している。
これはヤマトやアンドロメダといったタイプをわざわざ武装を一部撤去してまで、全通甲板にこだわる事は無いと上層部に押しきられた為だ。
簡単には言えば船体下部に格納庫を抱えている感じだ。
艦載機は全てハンガーに吊るされる感じて固定され、発艦時にハンガーごと移動、カタパルトに接続され、射出される。
また、着艦時は船体後部から飛行速度を落とし、カタパルトデッキに侵入し、ホバーリング体勢で待機、ハンガーに固定される。
もう一つの特徴としてメインエンジンを二基搭載している。
エンジンとエンジンの間にカタパルトデッキ(格納庫兼用)があり、その上部に兵装とブリッジ(コックピットタイプ)がマウントされ、メインエンジンとサブエンジンで挟むように安定翼がマウントされている。
更にメインエンジン下部に垂直尾翼のように安定翼が付く。
着水は出来るが着陸は出来ない。ドッキングベイに接続する事で乗艦、下艦が可能である。
基本的に宇宙での運用がメインである為、この設計と成った。
【宇宙軽空母アークトゥルース級一番艦アークトゥルース】イメージ
◆
「天城大尉。アタッカー隊隊長就任おめでとう。」
「急な転属と処女航海が重なって、君の就任祝いを出来なかったのでな。」
「ささやかだが、祝いの席を設けた。オートパイロット空間の僅か時間しか無いが、許してくれ。」
「許すも何も、わざわざありがとうございます!」志鶴は元気な返事を笑みを浮かべ返した。
第二話へ
つづく。
~あとがき~
この物語りは二次創作「宇宙戦艦ヤマト2199」サイドストーリーの続編です。
先日、投稿致しました「義手のエースパイロット」で登場しましたパイロット天城の活躍がもっと読みたいと、多数のメール(TwitterのDM)が有り、続編を作る事に致しました。
使用している画像はイメージです。
一部使用している画像は「プレイステーションゲーム フィロソマ」より引用、加工してます。