二次創作
宇宙戦艦ヤマトreborn後編
【奪還の果て】
「艦隊を失ったなどと、報告は出来ん!」
「反射衛星砲で、ロングレンジ攻撃で沈めてくれるわ!!」
「奴の、ヤマトの射程圏外からな!」
「ガンツ!反射衛星を展開せよ!」
「ヤマトを、奴の射程圏外から仕留める!」
「反射衛星砲、発射ッ!!」
◆
「ヤマト上空より、高出力エネルギー弾!!」
「直撃します!」
「なっ何ッ!?」
「右舷、パルスレーザー砲群損傷!!」
「第22移住区に火災発生!区画隔壁閉鎖ッ!!」
「艦内、ダメージコントロール急げ!」
「……この攻撃。」沖田は呟くように心の中で云った。
◆
「主力六番艦!轟沈ッ!!」
「なっ!何ッ!?」
「レーダー士!今のは何処からだ!」
「はっ、ハイ!それが零時の方向です!」
「…真上か!?」
「真上に艦影は?」
「あ…ありません……。」
「…ん!?」
「…今度はまっ…真下からです!」
「…艦長!艦隊を散開させよ!」
「了解ッ!」
目まぐるしくブリッジ内には状況報告と指示、命令が飛び交っていた_。
◆
「あの時の攻撃と同じだ…。」そう確信した沖田であった。
「戦術長。航空隊を何時でも冥王星に降下出来るように散開、ヤマトから離れて待機させよ。」
「これよヤマトは、揺さぶりを仕掛ける。」
「航海長。コース258冥王星へ降下、全速で突入せよ!」
古代も島も、両名共に何をやらかすつもりなのか解らないまま、命令に従った。
古代は島の方を向いた。
島は島で、「やるしかないだろう。」と顔を覗かせていた。
だが、そのヤマトの動きに合わせ、無数に打ち上げられた反射衛星もまた、動く。
シュルツは複雑に高出力ビーム光弾を反射させ、ヤマトに直撃させた。
「ふん。」
「いくら全速で逃げても所詮、図体のデカイ戦艦。小型戦闘機のように飛び回れる訳なかろう。」
「やはり、猿以下だな。」
「反射衛星砲!次弾装填!」
「発射ーッ!!」
「…3.2.1.着弾!ヤマト左舷後方に命中!」
「ヤマト黒煙を撒き散らし、"冥府の海"に沈んで行きます!」
「うむ。」
「諸君。ご苦労であった。」
「シュルツ司令。上空に散らばるヤマトの艦載機は放っておくのですか?」
「母艦を失ったんだ。いずれ死を迎える。」
「無理に突入などしようものなら、ビーム砲台の餌食だ。」
「放っておけ。」
「了解であります。」
◆
「シンマイ。例の高出力ビーム光弾の録画は全て、出来ているか?」
「聞こえないのかシンマイ?」
「艦長。お言葉ですが私はシンマイと書いてアラコメと読むのです。新米と。」
「…済まなかった。」
「で、新米、録れているか?」
「勿論、全ての戦闘記録は録画も含め、出来ています。」
「今、ヤマトが冥王星の海に沈んでいる場面も。」
「しかし、冥王星の分厚い氷の下にこんな海が存在したとは…新たな発見ですね。」
「コポン。…新米少尉。」
「あっ!?余計でしたね。」
「これが録画したものです。」
解析室中央に映し出された空間モニタにいましがた録画された冥王星攻略戦の一部が、映し出された。
「見ての通り、あの高出力ビーム光弾は反射され、ヤマトに命中している事が解ります。」
「つまり、ヤマトが冥王星上空の何処に居ても、反射させて直撃させる事が可能です。」
「ですが、このポイントから全て高出力ビーム光弾は発射されます。」
「うむ。」
「話は変わるが、新米。少尉はメガネを外した時の方、可愛いく見えるな。」
「…コポン。」
「艦長。今のセクハラに成りますよ。」
「いや、済まなかった。」
「戦術長。上空のコスモタイガー隊に陽動を仕掛けさせよ。」
「無数にあるビーム砲台に攻撃を仕掛けさせるんだ。」
「但し、全てを破壊出来なくとも構わんと伝えろ。」
「ヤマトはこれより浮上する。」
「浮上と同時に戦術長。君と椎名のゼロで、この座標を空爆せよ。」
「戦術長。了解。」
こうして、改めて冥王星攻略作戦が、開始された。
五月蝿いくらいに飛び回り、氷岩に設置されたビーム砲台に陽動攻撃を仕掛けるコスモタイガー隊。
そのコスモタイガーの攻撃に気を取られている合間にヤマトは浮上、古代と椎名のゼロを発艦、反射衛星砲台を破壊すべく超低空で侵入させた。
「アレだな。」
「これでも喰らいやがれッ!!」
ありったけの対地ミサイルをぶっぱなした椎名。
「南部!ヤマトは艦砲射撃で支援!」
「島!高出力ビームを捉えたら再び海へ潜れ!」
「了解!」
数分後、侵入した椎名から「高出力ビーム砲台」=反射衛星砲、破壊の報告を受ける。
その報告と同時に上空を飛び回るコスモタイガー隊が一気に雪崩れ込み、ヤマトと共にガミラス冥王星基地を壊滅させた。
24時間後、修復を終えたヤマトは、遅れを取り戻す為、ワープを行った。
◆
「クルーの諸君。艦長の沖田だ。」
「あと数日で、最初の目標地「バラン星」である。」
「諸君らの活躍で占領された冥王星は解放する事が出来た。」
「そして、もう二度と遊星爆弾は地球に落ちることは無くなった。」
「感謝する。」
「バラン星到達までの間、各科で調整を取り、休息を取れ。」
人類滅亡まで、あと290日と迫っていた_。
◆
ーバラン星宙域・ガミラス制宙権エリアー
「ん!?」
「…隊長。あれはヤマト。ヤマトをキャッチした。」
「バラン鎮守府に連絡を入れる。」
「コチラ、パトロール艇963。ヤマトをキャッチした。鎮守府方向へ向かっている。」
◆
「ドメル閣下。」
「何か?」
「パトロール艇より入電、ヤマトを捕捉したとの事です。」
「何ッ!!あのシュルツを倒し、占領地、冥王星基地を壊滅させたヤマトか!」
「飛んで火に入る何とやらだな。」
「ゲール君。全艦艇を出撃させよ!」
「私も出る!」
「お言葉ですが、全艦艇でありますか?ヤマト一隻に。」
「ん!?不満か?」
「全艦艇で出迎え、戦意を奪う。」
「降伏か死か、好きな方を選ばせる。」
「御意。」
◆
「居た!居た!ヤマトを捉えた!」
「ガミラス艦隊ワープアウト!」
コスモレーダーに捉えたガミラス艦隊。
緊急報告に度肝を抜かれるクルーたち。
うろたえるクルーたち。
「ガミラス艦隊!百を超え、尚もワープアウト!」
「ヤマトは包囲されつつあります!」
慌ただしく告げる相原。
「ガミラス艦隊!発砲!!」
「また、ワープアウト!」
「ガミラス艦隊総数…。」
「ガミラス艦隊総数500!!」
「……島航海長!ワープだ!」
「緊急ワープだ!」
「ワーーープッ!!」
ー次元断層空間ー
緊急ワープにて、ドメルの艦隊から逃れる事に成功したヤマトであったが、"次元断層空間"=時空間の狭間に墜ちるというトラブルに巻き込まれていた。
【スターシャの宇宙船ゴッド・ウイング】
「……ん!?」
「あの宇宙船は、何だ?」
次元断層空間にヤマトが落ちて、いの一番に口を開いた古代が云った。
「あの宇宙船も、何かの拍子で落ちて来たと考えてるのが妥当ね。」
「他の彷徨う宇宙船や宇宙艦みたく朽ち果てない事から、落ちてそんなに時間が経ってない感じね。」
古代の問いに答える新米。
「古代。なんとかあの宇宙船と接触出来んか?」
「此方に敵意が無い事を伝えて、接触を試みよ。」
「了解。」
百式偵察機で横付けした古代は椎名を随行させ、彷徨う宇宙船内へ侵入した。
「我々は地球人。君を傷付ける気はない。」
「君と話がしたい。」
「………。」
「やっぱり、言葉が通じないか。」椎名が呟いた時であった、優しい声で言葉を返す少女。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/b8/93dd107f7e287125ee62261da7e7d55e.jpg?1580134539)
「私はイスカンダルのスターシャ。」
まだ、幼さが残る少女は古代たちの耳を疑う言葉を発した。
古代が一歩、歩みはじめた時であった乗り込んだ宇宙船が、大きく揺れた。
◆
「謎の宇宙戦艦よ。聞こえているか?」
「貴艦の星籍と所属を名乗れ。」
「その宇宙船(ふね)に手を出すな。」
「言っておくが銃を抜くなら、止めておけ。貴艦に勝ち目はない!」
◆
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/a8/75a65dacb03e476d44350d7e9d4a85f7.jpg?1580134406)
【デス・シャドウ】
※旧太陽系連邦艦隊・冥王星戦隊旗艦デス・シャドウ
・時空間戦闘を得意とする宇宙戦艦。
元々は、他の宇宙船、艦同様に時空間での航行は出来なかったが、次元断層空間に墜ちた際に、何度が脱出を試みるも失敗に終わり、諦め掛けたある日、同乗する※大山敏郎が見た夢を実行したところ、脱出に成功。
その後、通常空間と時空間(亜空間)での航行を可能にするシステムユニットを造り、デス・シャドウに搭載した。
旧太陽系連邦艦隊所属。
艦種:宇宙戦艦
艦級:ア・ドミラル級
全長:286.00m
全幅:40.00m
全高:70.00m
推進機関
次元流動型ヒート機関×1基
武装
主砲:48糎・三連装パルサーカノン砲×3基(9門)
四連装艦首ミサイル×2基
舷側ガトリング速射パルスレーザー砲×4
重力波短魚雷管×12門
八連装重爆雷投射機×1基
艦長:ハーロック(ファントム・F・ハーロック)
他、不明。
◆
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/c1/37c6080b5d9db7ae2e8e755cba51a2c0.jpg?1580134468)
【ゴッド・ウイング】
スターシャ専用の宇宙船。
この時代、最速の宇宙船。
非武装船だが、搭載する4機の小型自立思考近衛機がガード(盾)とアタック(攻撃)を担う。
現在、少女時期のスターシャが使用している。
全長:180.00m
主機関:波動ターボチャージャーエンジン×2基
非武装宇宙船。
4機の小型自己思考・近衛機を搭載している。
この4機がガード及びアタックをする。
スターシャが直接、命じる事も可能。
防御膜で宇宙船全体にコーティングを施している。
波動エネルギーを転用(波動フィールド)する事で「波動砲」クラスのエネルギー光弾をも弾き返す。但し、最大値で転用する為、一度、弾き返すとエネルギー回復まで8時間を必要とする。(通常航行は可能)
【小型自己思考・近衛機バスター・ガード】
・オールレンジ対応。
攻撃、防御共に4機で賄(まかな)う。
・ショックカノン級のエネルギー光弾発射から陽電子パルスレーザー砲クラスのエネルギー光弾を発射する事が可能。
各機、波動フィールドを展開する事でゴッド・ウイングを守ると同時に自己も守る事が可能。
全長:7.2m
全幅:1.8m
主機
波動粒子流動式コスモエンジン×2基
武装
・陽電子パルス機銃モード
・陽電子衝撃砲モード
※機首に装備された砲口に集約されるエネルギーをモード切り替えにより、パルス状に発射する機銃クラスから陽電子衝撃砲(ショックカノン)級のエネルギー光弾を発射する。
・波動フィールド
波動エネルギーを粒子状に流出させ、機体全体に膜を張ることでコーティングされ、一定時間、全ての攻撃から守る事が可能。
◆
【再会】
次元断層空間に落ちた、宇宙戦艦ヤマトのクルー古代と接触したイスカンダルのスターシャ。
そのスターシャの乗船するゴッド・ウイングの真横に、浮遊する宇宙戦艦ヤマトの目と鼻の先ほどの距離に着弾した高エネルギー光弾。
警告射撃なのだろう。
「その宇宙船(ふね)に手を出すな。」と告げて来た。
そして、星籍と所属を教えろと_。
「私は、この艦(ふね)の艦長沖田だ。」
「この艦は、太陽系第三惑星地球所属である。」
「我々は旅の途中でワープトラブルでこの空間に落ちてしまった。」
「そして、脱出方法を探っているところに、眼前の宇宙船と遭遇、もしかしたら生存者がと思い、使者として私の部下を派遣した。」
「貴艦とやり合うつもりもない。」
「以上だ。」
◆
「なるほど。」
「我が艦(ふね)はデス・シャドウ。」
「貴艦と違って、星籍を持たない艦(ふね)だ。」
「脱出したいのなら、このデス・シャドウが手を貸そう。」
「早々にあの宇宙船から使者を引き上げさせろ。五分だけ待つ。以上だ。」
そこで一旦、音声通信は「通信不可」と表示され、通話が出来なく成った。
一方、ゴッド・ウイング内では、敵意を感じない事から、スターシャを名乗る少女から、衝撃的な話を古代らは聞かされていた。
「…今、何と?」古代は再び聞き返した。
「私はイスカンダルのスターシャ。」
「私はイスカンダルを脱出し、別の銀河へ赴く途中でした。」
「そして、あのバラン星宙域で"バラノドン"たちに襲われる一隻の軍艦と遭遇したのです。」
「私は、それを見過ごす訳には行かなかった…。」
「たとえそれが、私の故郷(ふるさと)イスカンダルを窮地に追い込んだ者たちの艦(ふね)でも…。」
「イスカンダルを窮地に追い込んだ者たち?」古代よりも先に椎名が云った。
「そうです。イスカンダルを窮地に追い込んだ者たち、ガミラスです。」
その言葉に古代も椎名も、驚いた顔を覗かせ後退りした。
「…ガミラス。」
「我々も自分たちの星をガミラスによって滅ぼうされかけている。」
「我々が向かうとしているイスカンダルから使者が訪れ、地球を救えると…。」
「…地球……。」スターシャは古代の眼を見つめた。
「古代さん。貴方方に会わせたい方が居ます。」
そう云ってスターシャは、右手の手の掌をそっとコックピットの奥をかざした。
すると、人が一人入れるくらいのカプセルが現れた。
「カチッ。」と音が成ると、カプセルの上の部分が「スー」と開いた。
湯けむりのような気体に包まれ、もやもやする湯けむりのような気体から見栄隠れする姿は、人のように思えた。
髪は肩の辺りまである栗毛色したセミロングの髪で、スラッと伸びた手と足、そして、何も纏わない美しい裸体をさらけ出した一人の女性が現れたのだ。
古代も椎名も、目を丸くした。
「……女の人………。」
「綺麗……。」目を「ぱちくり」させ、頬を紅く染めた椎名が、ゆっくりと彼女に近づいた。
「……貴女、人間…。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/ea/a66fe2526a8ad6054a3712aee3d53f52.jpg?1580134298)
「クスッ。」と笑顔を覗かせて綺麗な裸体をさらけ出した女性は、こう告げた。
「驚かして、ごめんなさい。」
「わたし、人間よ。」
「地球人よ。」
まじまじと見つめる古代に気がついたようで、その女性はとっさに胸に手を宛がい、しゃがみ込むと頬を紅く染めた。
「…きゃぁぁぁ。」と後ろ向き、左手に着けているブレスレットのようなものを弄った。
裸体だった身体は何かに包まれていった。
太陽系連邦軍の制服に似た服を纏った女性に変わった。
「驚かして、ごめんなさい。」
「私は地球人。」
「森雪。」
「これでも、わたし、軍に籍を置いていたのよ。」
「太陽系連邦軍のね。」
「ミサイル駆逐艦:雪風、衛生長だったの。」
「…雪風の…雪風の生き残りなのか?」
「雪風の艦長、古代守はどうなったのです?」
そう古代が訪ねた時であった、またもや宇宙船が激しく揺れた。
そう、デス・シャドウが再び警告射撃を撃ったのだ。
「キャプテン!撃ってはいけない!」スターシャは叫ぶと同時に感応波を飛ばした。
「ピタリ。」と砲撃は止んだ。
「キャプテン。この方たちは地球の民。」
「撃ってはいけない。」
「わたしに危害を加える事はないわ。」
そんな中、ヤマト艦内で一人黄昏ていたサーシャが、動きはじめた_。
「もう。ハンデは要らないわね。」
「私の実態がバレるのも時間の問題かしらね。」
「本物のスターシャが、現れたのね。」
「少し、様子をうかがいましょうかね。」
「あの、次元断層空間を自由に航行出来る宇宙戦艦も、気になるし。」
◆
古代らは、スターシャの提案で、スターシャが今、一番安全場所であるゴッド・ウイング内で、対面して話し合いをする事と成った。
ヤマトからは真田少佐とアナライザーが加わり、デス・シャドウからはキャプテンと呼ばれるハーロックと随行員として、有紀螢が話し合いに参加した。
古代は参加者が揃ったところで、改めて自己紹介を済ませ、話を切り出した。
「自分たちは地球人で、宇宙戦艦ヤマトのクルーです。
今、地球はガミラスを名乗る異星人の侵略を受け、我々、地球人類はもう一年以下という僅かな日数で死滅する程にまで、追い込まれました。
ですが、イスカンダルのスターシャと名乗る方から救いの手を差しのべられ、サーシャと名乗る妹から、今の地球では造り出す事の出来ない"波動エンジン"を入手、地球を地球人類を救う為、イスカンダル星を目指していました。」
「何らかの拍子で、この次元断層空間へ落ちた。」
古代の話に割って入ったハーロック。
「そうです。それからはご存知の通りです。」
「…なるほど。」ハーロックは一通り、集まる顔ぶれを見た。
「真田。アナライザー。久しぶりだな。」
ハーロックは唐突に話を振った。
「わたしも気がついていたわ。ロボちゃん。」
ハーロックも雪も、真田、アナライザーは繋がりがあるようだった。
そう、ハーロックと真田は同期で、アナライザーは雪が雪風に配属に成るまで、連邦政府管理の中央病院にて、雪の助手をしていたのだ。
「ユキ。オヒサシブリデス。デス。」
「アハハ。」と笑うハーロック。
「話は分かった。」
「だが、古代進と言ったな!?」
「はい。」
「時、既に遅しだよ。」
「イスカンダルは、最早、女神スターシャの住む惑星(ほし)では無い!」
「君たちの目の前に要るスターシャこそが女神スターシャの末裔で、本物のスターシャだ。」
「今から、そう、ガミラスと地球が戦争に突入した頃、イスカンダルもまた、別銀河の異星人によって侵略され、このスターシャを残し、先代のスターシャ、この娘の母親は、この娘を助ける為、犠牲に成った。」
「丁度、俺たちが第一次冥王星奪還作戦を遂行している頃だ。」
「俺たちは、デス・シャドウは轟沈寸前、不思議な現象により、一度、この次元断層空間に落ちたんだ。」
「だが、ある日、俺の親友で真田や守の親友でもある大山敏郎が脱出する事に成功させた。」
「それからは、俺たちは軍を無許可だが抜け、ご覧の通りだ。」
「そんなある日、このスターシャの宇宙船が、バラン星に生息する普段はおとなしい宇宙生物バラノドンたちに襲われているところを発見、救助した。」
「それからは、付かず離れず見守っているというわけさ。」
「話は変わるけど、進さんってキャプテンに勝るとも劣らず、イケメンね。」
「私の理想(タイプ)かも。」
「えっ!?だめ!古代さんはダメ!」
「駄目なんだから!」
顔を紅く頬を膨らませ口を尖らせ椎名が慌ただしく言った。
「…椎名。落ち着け。」
「うふふ。残念ね。」
「話がそれたが、事は一大事だぞ。戦術長。」
「ヤマトに乗艦しているサーシャは、イスカンダルいや、スターシャとは何らか関係が無い事に成る!」
「……真田さん。」
「進さん。先ずは目の前の危機を排除しては?」
「雪さんは、私がお守り致します。」
「キャプテンは、進さんに力を貸して差し上げて。」
「うむ。」
「どうする?古代。」ハーロックは古代を見つめながら告げた。
「…目の前の危機を排除し、イスカンダルを目指す。」
「キャプテン。力を貸してくれませんか?」
「話は決まりだな。」
【反乱】
一旦、話し合いを終え、それぞれが艦(ふね)に戻り、その時を待った。
古代は艦長沖田の意見を伺う為、報告を兼ね艦長室で報告をする事にした。
「…うむ。」
「大まかな話は分かった。」
「だが、古代。仮に、この話が本当だとして、サーシャをどうやって孤立させるかが問題だ。」
「その事ですが、ハーロックに協力を要請したいと思います。」
「ハーロックたちとの話し合いは決別し、白兵戦を仕掛けられた。という筋書きです。」
「そして、彼女サーシャはアナライザーに保護という形で営倉区へ移動して貰います。個室営倉にて確保、アナライザーによる暗号キーロックします。」これが自分たちが考えた案です。
「うむ。」
数分後、宇宙戦艦ヤマト艦長沖田は、決断を下し、古代から提案された案を実行に移した。
「艦長代理の古代だ。」
「全艦に達する。」
「全艦、戦闘配置!各位、白兵戦に備えよ!」
「繰り返す。全艦、戦闘配置!各位、白兵戦に備えよ!」古代はわざと、この艦内アナウンスが、偽りである事を示すアナウンスを流したのだ。
末端のクルー、一人一人に説明している時間が無いからだ。
だが、これは、この時代の軍属を目指した者なら、初期の段階で教わる共通した科目の一つなのだ。
これは"スパイ"が潜入しているまたは、その疑いがある者が、紛れていると判断した場合、該当者=スパイに気づかれない内容で伝えられる。
今回、古代が伝えた内容は、初期の初歩の内容である。
「艦長代理の古代だ。」これで、"ピン"と来る。
何らかの事情で艦長が不在であるならば、先ずは船務長が指揮を取るのが、通常で、更には船務長も不在ならば、次に階級が高い者が指揮を取る。
確かに現在、ヤマトは船務長は不在ではあるが、次に階級が高い者は機関長の徳川又は解析・技術長の真田が指揮を取るのだが、いきなり古代が艦長代理を名乗った事で、クルーは"スパイ"が存在すると感じ取る。
訓練とは違い、実戦での"このアナウンスは緊張感を高めていた。
「第一主砲、初弾撃て!」沖田の命令が飛んだ。
青白エネルギー光弾がデス・シャドウを掠めてゆく。
これを合図とし、デス・シャドウからチューブアンカーが打ち込まれた。
「有紀。本気でゆけ。」
「了解。」
ヤマト艦内に緊急アラートが響き渡る。
同時に左舷艦首、第一主砲塔下に突き刺さるチューブアンカーの先端が、植物が開花するように開いた。
数秒後、軽武装したゴッド・ウイングで紹介された有紀蛍を先頭に血気盛んな白兵戦慣れというか、戦闘、格闘に精通した十数名が、若き指揮官:有紀蛍の指揮の下、統制を保ち侵入した。
「早い!ものの数分で、第一、第二主砲塔が制圧された!」艦内モニタを覗く、相原が告げた。
「アナライザー!サーシャさんを保護、営倉区へ移動せよ!」この案(策)を練った古代は、スムーズに策を進める為、次の段階へ駒を進めた。
「不愉快ね。」
「…ソウイワレマシテモ……。」
「ソレヨリ、アナタヲ、オマモリスルコトガ、ユウセンデス。」
「あら、それなら尚更ねッ!!」その言葉と入れ替わるようにサーシャは変体、アナライザーをショートさせ、機能停止させた。
「悪いわね。私、か弱い人間じゃないのよね。」
「このまま「はい。そうですか。」と拘束される訳にはいかなのよ。」
【共闘】
古代、ハーロックらと共闘でスパイを排除する策が実行される中、全てを見抜いていたかのようにサーシャは、アナライザーをショートさせ、反撃に打って出た。
「コイツの端末から艦内の様子を掴むとするかね。」
ショートさせたアナライザーの頭部を外し、艦内の動きを探る為、サーシャは自身の腕を外し、配線端末ケーブルとアナライザーの端末コネクターを接続、生きているコンピュータチップから艦内情報にアクセスした。
「℃¥#_$:……ワカリマシタ。」
「サーシャサンヲ、エイソウ……℃$¥#$/℃」
「ハーロックタチはハ、ミカタ…℃¥¥#$#/℃……℃$¥…ワカリマシタ。」
「やはりな。」
「ブリッジを墜しちまえば、あとは楽勝ってところだな。」
◆
「雪。貴女(あなた)にコレを授けます。」
「地球の未来を貴女が変えてゆくのです。」
「でも、強制は致しませんわ。」
「…私が地球の……。」
「地球の……地球の未来…。」
「そう。貴女が新しい地球の未来。」
「エレメントとして生きてゆく事に成る。」
「レナトゥース・エネルギー・エレメントとして生きてゆく事に成るのです。」
「エレメントと云っても、姿は人間のままで、過ごせるのだけどね。」
「そうね。特殊能力を備えた人間。」
「…ただ、雪。貴女の死と共にその効力は消えてしまうの。」
「でもね。貴女の子供にも、この能力は受け継がれるわ。ただし、受け継がれるのは、女の子だけ。」
「イスカンダルが王制なのは、この能力によるもの。"スターシャ"を守る事は未来永劫イスカンダルは浄化された大気が失われる事はなく、繁栄されるとされたからなの。」
「……でもね。今のイスカンダルは文化や文明は地球人類の予想を遥かに超えたものにこそ成ったけど、それでも侵略され、民は殺戮され滅んだわ。」
「まもなく、イスカンダルの大気も汚染された時代と変わらない程に、汚い惑星(ほし)に戻るわ。」
「私が脱出したからね。」
「だから、偽りのスターシャは私を連れ戻す為、アンドロイドの民を造ったの。」
「そして、自分が、自分の子孫が守られるように"スターシャ"を守れ"とインプットしたの。」
「それが"ガミラス"よ。」
「私は薦めたけど、最初に云ったように、雪。貴女自身で決めなければ成らない。」
「地球の未来は解らない。」
「イスカンダルが辿った路を歩むかも知れないし、いままでのような路を歩むかも知れない。」
「未来は変わるから……。」
「…サーシャさん。私、受け入れるわ。」
「今の地球が、地球人類が救われるなら。」
「分かったわ。」
そう云うと一錠の風邪薬ほどの小さなカプセルを手渡した。
「それを飲むと良いわ。受け入れる為の準備の薬よ。」
「貴女方で云うビタミン剤みたいなものよ。」
サーシャは笑顔を見せた。
雪はカプセルを口に含み、水で流し込んだ。
ビタミン剤と云われて飲んだカプセル、それは即効性の睡眠薬であった。
雪は液体ベッドに寝かされ、施術を施された。
手の小指の爪ほどの錠剤のようなものを子宮内に埋め込まれた。
◆
「古代。アナライザーからの連絡はまだか?」
艦長沖田が口を開く。
「確かに遅いですね。」
「此方からは連絡を入れられませんので、自分が様子を見て来ます。」
「うむ。」
「…思い過ごしかも知れないが、胸騒ぎがするのでな。古代、コスモ銃(ガン)を携帯してゆけ。」
「了解しました。」
営倉区を目指す古代。
途中、有紀たちと鉢合わせした古代は理由(わけ)を伝えた。
「なるほどね。」
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーッ!!」
突如、響き渡る悲鳴、鉢合わせした古代たちは目を丸くし、悲鳴が上がった方向へ顔を向けた。
「……何者?」
右舷陽電子粒子速射砲(パルスレーザー)塔群制御室から走り去る黒い人影。
古代らを見るなり、不適な笑みを見せつけた。
【自沈・宇宙戦艦ヤマト】
逃げてゆく黒衣の人物を目で追いながら、古代はインカムで第一艦橋へ報告をいれ、陽電子粒子速射砲塔群制御室に向かった。
「………。」言葉を失う古代。
「…なんて惨(むご)い……。」制御室のクルー八名の変わり果てた姿を見た古代に動向した有紀が、小声で口を開いた。
古代たちが駆けつけた時には、息をしている者はなく、それどころか残虐な殺し方をした割には、壁や床そして計器類にはそれほど血痕はなかった。
どの遺体も切断された部位には焼かれたような跡が、見られた。
熱伝導式の鋭い刃物のようなもので、殺害されたと推測出来た。
「艦橋!艦内モニタを全てチェック、黒衣の人物の居場所を突き止めて欲しい!」
「現在、黒衣の人物は八名を殺害、中央エレベーター方向へ逃走した!」
「……コチラ……相原…現在、らしき人物と………。」
「…ガガガ…ッーーーッーーー……。」
「艦橋?第一艦橋、相原!」
「返事をしろッ!!」
「沖田艦長!此方、古代!」
「……艦長ッ!!」
古代の呼び掛けに誰も応答する者が居なかった…。
「…古代。艦橋は諦めろ……。」
そばに居た有紀が告げた。
「…お前に、お前に何が解る!?」
「…解るさ。この無線のやり取りを見れば……。」
「古代と言ったね。艦橋の次にアイツが狙う場所を特定して、その場所にアイツがたどり着く前に仕留めるしか方法は無い!」
「認めたくないのは、解らないでもない。受け止めるしかないんだよ。」
「……。」
古代は愕然と肩を落とし、返事を返せずにいた。
そんなに矢先、有紀のインカムには、ハーロックから報告が、届いていた。
「有紀。落ち着いて聞け。」
「次元断層空間の時間の流れが変わろとしている。」
「その兆しが現れた。急いで帰投せよ。」 であった。
有紀は、すぐさまヤマトの状況を報告すると同時に、デス・シャドウから偽りのサーシャの居場所を特定して欲しいと具申した。
ハーロックは解析が得意なクルーにスーパーサーモグラフィックセンサーを使わせ、偽りのサーシャの居場所を特定させた。
2~3分が過ぎ、デス・シャドウのクルーから有紀に連絡が入った。
「現在、エレベーターにて下を目指しているようだ。」
「おそらく、機関区を目指していると思われる。」
「追跡を続行します。」
「了解。」
「古代。アイツは機関区を目指してる。」
「機関区に入る前にアイツを倒さなければ、ヤマトが沈むぞ。」
「…古代!艦橋の様子が気になるのは解らなくもないけど、今はアイツを倒す事が先決なんじゃないのか?」
有紀は、無言な古代の肩を掴み、揺さぶった。
「…解っている……。」
「ボソッ」と返事を返すと、制御室のコンピュータから機関室入口のメイン通路の隔壁を閉鎖、偽りのサーシャが、この通路に入ったところで、もう片方の隔壁を閉鎖する準備に入った。
「有紀隊長。例の人物は機関区メイン通路に入った。」スーパーサーモグラフィックセンサーで追跡するクルーから報告が入る。
有紀は、その報告を聞きながら古代に偽りのサーシャが、通路に入った事を伝えた。
間髪入れずに古代は隔壁を閉鎖した。
「有紀さん。ピンポイントでデス・シャドウから砲撃を頼めないか?」
古代は赤く点滅するヤマトの図面モニタを指、指した。
「出来なくはないが…。」
「ヤマトを修理している時間は無いぞ。」
「この次元断層空間の時間の流れが変わろとしているからな。」
「…構わない。吹き飛ばしくれ……。」
「解った。」返事を返した有紀はデス・シャドウにピンポイント攻撃を要請した。
デス・シャドウに装備される四連装艦首ミサイル1発が、指定座標に発射された。
大きく揺れるヤマト。
勢いよく流出する爆炎と黒煙。
見るも無惨な満身創痍のヤマト。
デス・シャドウに牽引され、次元断層空間から脱出したヤマト。
だが、そんなヤマトに襲いかかるドメル艦隊主力部隊。
包囲しつつあった陣形を緊急ワープで脱出されたドメルにとっては、屈辱でしかなかった。
ドメルは半数近い200隻を率いり、逃がしたヤマトを捜索していたのだ。
「見つけたぞ。ヤマト!」
「バラン鎮守府と目と鼻の先に隠れていたとはな。」
「灯台下暗し。とはこの事か。」
「全艦!戦闘配置!」
「目標!ヤマト!及び星籍不明艦二隻!」
その時であった、突然、短距離ワープしたゴッド・ウイングのスターシャから古代に通信が飛び込む。
「古代さん。私の船、ゴッド・ウイング目掛け、波動砲を発射して!」
「時間が無いわ!急いで!」
満身創痍のヤマトを預かる古代も、デス・シャドウのハーロックたちも、耳を疑った。
だが、躊躇している暇はなかった。
ヤマトが波動砲発射体制を整える間、デス・シャドウがドメル主力艦隊に砲火を浴びせた。
「古代!俺たちも、時間稼ぎに出撃するぜ!!」
加藤率いるヤマト航空隊第一戦隊戦隊長:加藤の無線だった。
「だけじゃないぜ!!」
第二戦隊戦隊長:山本も、椎名や阪本、揚羽も、加藤の後に続いた。
「波動砲発射10秒前!」
「波動砲薬室内、エネルギー充填120パーセント!」
「波動砲、セーフティロック解除!!」
「対閃光、対ショックよし!」
「発射5秒前!」
「4.3.2.1.発射ーーーッ!!」
「波動フィールド最大展開!」
ヤマト艦首から発射された一条の超高出力波動エネルギー:波動光弾は、慈悲の心を持たない悪魔の吐き出す業火の如く、
波動フィールドに包まれたスターシャのゴッド・ウイング目掛け、突き進む。
「あの大砲か?何処を狙ってるんだ。恐怖で気でも狂ったか?」
ドメルの副官ゲールが失笑しながら云った。
だが、それはすぐに青ざめた顔を覗かせる事に成る。
ヤマトの撃ち放った超波動光弾は波動フィールドを最大展開するゴッド・ウイングに当たると人工太陽に反射させ、ドメル主力艦隊の背後から何倍にも過剰した超波動光弾が襲いかかる。
瞬く間にドメル主力艦隊は消滅、また人工太陽を失った事により、バラン星の大気は急激に冷やされ、分厚い雲が形成され、超嵐を発生させた。
大雨により、バラン星ガミラス鎮守府は水没、同時に残りの艦隊も水没、バランの海の藻屑と消えた。
◆
デス・シャドウのハーロックをはじめ、クルーが右舷側から見守り、スターシャと雪がゴッド・ウイングから見守る中、偽りのサーシャの犠牲者と成ったクルーたちと、ドメル戦で命を落としたクルーたちの宇宙葬が行われていた。
・艦長:沖田十三
・航海長:島大介
・解析・技術長:真田史郎
・通信長:相原義一
・砲雷長:南部康雄
・副航海長:太田健二郎
・機関長:徳川彦左衛門
・機関士:藪助治
・戦術科航空隊第一戦隊戦隊長
加藤三郎
・戦術科航空隊第二戦隊戦隊長
山本明
・他、各科クルー104名。合計114名。
◆
「どうしても、ゆくのか?」
「もう、ヤマトも修復は不可能、波動エンジンも使い物にはならんだろ?」
「キャプテン。私がゴッド・ウイングで古代さんを乗せてゆきます。」
「私たちの未来の為にも。」
「そうか。ならば、ヤマトの負傷者はオレが太陽系まで送る。そこからは救命艇で向かわせる。」
「古代。また何時の日か遭う時があるかも知れん。」
「死ぬなよ。古代。」
【秘宝レナトゥース・エネルギー・エレメント】
偽りのサーシャとの白兵戦、バラン星沖での戦いで多くの犠牲者を出し、希望の艦(ふね)であるヤマトも失った古代は、スターシャに救いの手に差しのべられ、スターシャの宇宙船(ふね)ゴッド・ウイングで惑星イスカンダルを目指す事と成った。
あれから80日が経過した_。
ゴッド・ウイングは大マゼラン銀河外縁部に到達した。
古代はゴッド・ウイングに乗船してから少しずつ、森雪と過ごす時間が長く成って行った。
スターシャの思惑はここにあった。
二人が仲良く成り、愛を育む。それが狙いなのだ。
だから、古代だけを乗せ、イスカンダルへゆくと云ったのである。
イスカンダル到着後、大した妨害や障害がなければ、あと160日後には地球へ到達する。
人類滅亡まで50日を残し、救う事が出来る日程だ。
「あと2日もすればイスカンダルよ。」どこか懐かしさを浮かべるが、すぐに済まし顔を見せるスターシャ。
そのスターシャは、話はじめた。
「私の母、スターシャに成りすます者。"ビーメラ星人"。
彼女の暮らしていたビーメラ星は120年に一度、星を統治する代表者が選ばれるの。
成りすましのビーメラの女王アシュラは交代を拒み、女王の座を譲らなかった。
それに反発した民は、アシュラに対し、「法と秩序を守れ!」と詰め寄ったの。
アシュラは話し合いも拒み、任期が数日、ある事を盾に詰め寄った民を拘束、裁判も無しに処刑した。
それをきっかけに「暴挙を許すな!」と、ビーメラ星の各地区で暴動が発生、やがて内戦と発展したわ。
そのお陰で、ビーメラ星の大気は汚染され、植物は枯れ、大地は腐敗していった_。
ビーメラの文明は滅びの路を歩みはじめたわ。
そんなある日、アシュラは「私を女王と認め、私に従えば嘗(かつ)てのような豊かな暮らしを再び、与える!」と。言い放ったの。
アシュラには考えがあったわ。
それは私の母から「レナトゥース・エネルギー・エレメント」を譲り受ける事。
レナトゥース・エネルギー・エレメントを譲り受ければ、生き延びた民の前で"奇跡"を起こすと称し、汚染された大気と腐敗した大地を"浄化"させようとね。
でも、その目論みは叶わなかった。
私の母が「私欲の為には譲れない。」と。
「ならば、奪うまで!」とアシュラは刃(やいば)を母に向け、暗殺、偽りのスターシャを名乗り、成りすました。
母は殺害を察知し、私にレナトゥース・エネルギー・エレメントを託し、脱出させてたの。」
「それからは雪や古代さんが知っている通りよ。」
「……このまま放っておいても、やがてイスカンダルは滅びる…。」
「でも、彼女、アシュラが造り出したデスラー=ガミラスが残っている限り、この宇宙は侵略され続ける…。」
「それを阻止する為に古代さん。貴方はイスカンダルへ、いえ、ガミラスへ赴くのでしょ!?」
「だから私は、古代さん。貴方に手を貸す事にしたのよ。」
「ありがとう。…でも、スターシャさん。貴女は俺をイスカンダルへ下ろしたら、立ち去ってくれ。」
「雪を地球へ送り届けて欲しい。」
「貴女は手を血で汚してはいけない。」
その言葉にスターシャは古代の目を見つめるだけで、無言だった_。
◆
「…あの宇宙船(ふね)戻って来たのか。」
「まぁ。戻って来たところで、最早、お前の返り咲く場所など無いのだよ。」
「お前の始末は、"あの"スターシャに任せ、私は見物させて貰う。」
「遅かれ早かれ、イスカンダルはイスカンダルではなくなり、ガミラス即ち、我がデスラーの惑星(ほし)と成るのだからな。」
◆
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/83/f2ca37102260f730e9e0a806fb0876c1.jpg?1580135543)
「ん!?」
「あの小娘。戻って来たか。」
「ワタシがくたばったとでも思ったか?」
「まぁ。いい。」
「どちらにしても、あの小娘は必要だからな。」
偽りのスターシャ=アシュラは、もう以前のスターシャに成り済ました面影もなかった。
自身が造り出したデスラーに惑星(ほし)の半分を与えた事が、仇に成っていたのだ。
A.Iによる大気浄化制御衛星によって、浄化された大気をイスカンダル側は、維持してはいるものの、毒素を含んだウィルスまでは、全てを浄化出来ずであった。
その事は、じわりじわりと侵食されたアシュラには、感じ取れなかったのだ。
眼は常に充血し、透き通るような白い肌、金色に輝く長い髪も失い、毒素に侵食された肌は青紫化していた。
ビーメラ星人としての面影もなく…神話に登場する悪魔ような容姿に変わり果てていた。
【決戦の地・イスカンダル】
「古代さん。ここから先、暫くは私のやり方でやらせて貰うわね。」
「雪を無事に地球へ送り届ける為にね。」
「…お任せしよう。」
「だけど、さっきも云ったように俺を下ろしたら、速やかに地球へ向かってくれ。」
「ええ。そうするわ。無事に下ろしたらね。」
「ガミラス側から侵入するわ。」
「先にデスラーを倒しておかなくては、古代さん。貴方を無事に下ろせないからね。」
「…しかし、スターシャさん。このゴッド・ウイングは非武装の宇宙船でしたよね!?」
「ええ。そうよ。」
「でも、四人の精鋭が守ってくれるわ。」
「四人の精鋭?」
「そう。四人の精鋭よ。」
「このゴッド・ウイングの近衛(兵)たちよ。」
「ゴッド・ウイングには四機の近衛機が搭載されているの。」
「この四機は、それぞれ自立した思考を持つ小型の格闘機。」
「それぞれが盾であり、剣でもある最高の近衛兵よ。」
「……それぞれが自立思考って事は、A.Iか?」
「そうね。ヤマトにも乗艦してたでしょ!?」
「アナライザー。アナライザーみたいなものか。」
「そうか。そんな凄いものが、搭載されていたんだ。」
「見えて来たわ。」
「……あれが、あれがイスカンダル星!」
「あんなに綺麗な星にデスラーが!?」
「そうよ。言わばイスカンダル側が表の顔かな。」
「あの裏側がガミラス。」
「イライザ。クローキングデバイス・フィールド展開!」
※イライザ=ゴッド・ウイング・マザーコンピュータ。
※Cloaking Device(クローキングデバイス)=光学迷彩。
◆
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/67/d703f0b29244c85418dac38a41ddbb98.jpg?1580133995)
※可視化されたホログラムイメージ=イライザ。
「オーケー。スターシャ。」可視化されたホログラムイメージのイライザは、ゴッド・ウイング全体に液体状の薄い膜を張り、クローキング・デバイスによる光学迷彩化、空間に同化させた。
「あれがガミラスよ。」
「突入するわ。」
「惑星に穴が…穴が開いてるのか?」
「そうよ。兵器実験を繰り返した結果、海は枯れ、大地は腐敗、腐敗した大地が陥没、大気は汚染されたわ。」
「イスカンダル側との境界上空には幾つものA.Iでコントロールされた浄化用衛星が浮遊しているの。それで辛うじてイスカンダル側は防護服無しでも、平気だけどね。」
「もう、惑星(ほし)としては終焉を迎えたに等しいわ。」
「スターシャ。今は少し、状況が変わったようです。ワタシのセンサーが微量ながら毒素系ウィルスを検知しています。」
「ガミラス側から胞子が紛れ込んでいるようです。」
「今、映像を出します。」 イライザは、そう告げると、サブモニタに毒素系胞子を散布する不気味な形態をした植物を映し出した。
「……あれは、あれは、地球に突然、生えた植物じゃないか!」目を丸くし、古代は驚いた顔を見せた。
「…じゃぁ地球も既に毒素のウィルスに犯されているって事か……。」
「コダイさん。今、解析してみましたがワクチンは作れます。」
「やっぱりイスカンダルと言うかスターシャさんの持つ科学力は凄いものだな!」
「しかし、星全体が地底と言うか鍾乳洞のような場所だな。」
「スターシャ。デスラーの存在を確認出来ない。」
「何処か違う場所に身を隠していると判断する。」
「解ったわ。イライザ。」
「このままイスカンダル側へ突入、マザーの海へダイブして。」
【reborn】
ーイスカンダル星マザーの海ー
「トラップを感知したわ。」
「それと高速で接近する物体を二つ捉えたわ。」
「識別データから照合して、ガミラスの空間駆逐戦闘機DDG110ゼードラーⅡ!」
「トラップは、どうやら機雷のようです。その数1.000!」
「海の中、水中に機雷だと!?」
「しかも、深海と呼べる深度に数量が尋常じゃない!」イライザの報告を聞いていた古代が慌ただしく口を開いた。
「イライザ。近衛機=バスター・ガードを全機発進させて!」
船底部から射出された四機のバスター・ガード。
各機が干渉しない距離を保ち、母船ゴッド・ウイングの周りを自機を「くるっくるっ」と自分の位置と向きを確かめるように、ロールさせながら回っている。
イライザは各機をグースαアルファ・β
ベータ・Γガンマ・Δデルタと呼んでいる。
グースたちはGOサインを待っているようだった。
直接、スターシャが指示を出した。
まるで猟犬が、「待っていました。」と獲物に向かって走り出すかのように見えた。
「スターシャ。海上(うえ)の二機は強化アンドロイドが、搭乗しているようだ。」
「いままで遭遇したガミロイドらより、反応(うごき)が機敏だ。」
「デスラーも一応は格好を付けたってところかしらね!?」
「そうみたいね。水中機雷が幅を狭めつつあるわ。」
イライザが、そう告げた時であった、古代と雪は、いままでに見せた事がない言動を繰り返した。
「えっ!?何?」
「古代さん。雪。しっかりしてか……。」
その直後、スターシャにも異変が見られた。
何かを感じたイライザは可視化を止めた。
「…これだけの感応波…ワタシが全てをコントロールするしかない!」
「ゴッド・ウイングのセキュリティーを強化!ゴッド・ウイング及びスターシャの保護を優先。」
「船内冷却。冷凍催眠用ガス注入!」
◆
「あら、我々の感応波を見抜く人間が居たとは。」そう口を開いたのは、デスラーによって復活した惑星シャンブロウの古の種族長ミュラ。
「でも、お母様。相手は既にわたくしたちの術の中。」そう返事を返した、ミュラの長女キュラ。
「そうですわ。わたくしたちの三位一体の攻撃を交わせる人間など、居ないのだから。」キュラに同意するキュラの妹ビュラ。
「小型の戦闘機はお母様とお姉様に、お任せしますわ。」
「わたくしは水中の母船をやりますわ。」
そう云うとビュラは再び感応波を張り巡らせ、1.000もの水中機雷を巧みにコントロール、ゴッド・ウイングの逃げ道を塞いでゆく。
「では、わたくしは小型の戦闘機、四機を相手させて頂くわ。」
「お母様はデスラー様と見物なさっていて下さいな。」
「まぁ。二人とも欲張りね。良いわ。二人に任せて、キュラの云う通り、デスラー様と見物させ貰うわ。」
◆
ゴッド・ウイング、マザーコンピュータ:イライザはスターシャ、雪、古代の三人を眠らせるとガード重視のモードからアタック重視のモードに切り替えた。
四機のグースを巧みにパターンを組み合わせ、格闘させた。
三機が攻撃、一機が防御またはその逆のパターンや二機づつのパターンなどを縦横無尽に飛び回らせながら操る一方で、ゴッド・ウイングの行く手を拒むかのように動き回る水中機雷。
二手、三手先と先回りする機雷に苦戦するイライザは、ある一手を思いつく。
再びホログラムイメージを現すイライザ。
「ふ~ん。そんなところに隠れていたんだ。」
「でも、もう"かくれんぼ"も終わりよ。」
イライザは、クローキング・デバイスによる光学迷彩を解除、波動フィールドを最大展開させ、自転をはじめた。
自転するゴッド・ウイングに動きを合わせ、水中機雷もまた、回りはじめた。
「ハイ。チェックメイトよ。」
ゴッド・ウイングに同調する水中機雷群、その中の一基にイライザはわざと接触、爆発させた。
その一基の爆発が集まった水中機雷群に誘爆を招き、トルネード状の爆焔がゴッド・ウイングに襲いかかるが、爆焔は波動フィールドに反射され、水中機雷をコントロールする母機雷=ビュラの機雷を爆焔の渦に沈めた。
爆焔の勢いは衰える様子は伺えない。
海底水脈源の眠る海底岩盤をえぐり、凪ぎ払う。
湧き水程度で流出していた水は、受け皿を失い、一気に放流、水位上昇を加速させた。
枯れ果て干上がったガミラス側の海へと雪崩込む。
「このまま放っておいてもガミラス側は水没ね。」
「さて、海上(うえ)の応援に行きますかね。」
「鬼ごっこは終わりよ。」
「グースたちの光弾チャージは完了と。」
「二機纏めて墜とします。ショックカノン級をプレゼントするわ。」
最大限にチャージされた陽電子衝撃砲モードによって撃ち放った光弾は、二機のゼードラーⅡを貫き、イスク・サン・アリアの宮殿を吹き飛ばした。
「グースたちよ帰還せよ。」
「離脱します。ワープ!!」
◆◆◆◆
「どうやら、私は君たちを買い被りし過ぎたようだな。」
「感応波攻撃も地に落ちたようだね。」
「君にはもう、用はない。宙雷艇を一艇プレゼントする。この改・デスラー艦から立ち去れ。」
「ゴッド・ウイングも本物のスターシャも逃がしはしない!」
「目標!ゴッド・ウイング!空間磁力波、送射!」
「ドン!」とゴッド・ウイングは大きく揺れた。
「えっ!?何?」
冷凍睡眠を解かれたスターシャが云った。
「後方に星籍不明艦が潜んでいたみたい。」
「光学迷彩でカムフラージュしていたみたいで、ワタシとした事が油断しました。」
「強力な磁場に捕らえられ、思うように動けない!」
「グース=近衛機たちも射出出来ない!」
◆
「デスラー砲、発射ーーーツ!!」
「なっ!何が一体!?」
ブリッジのメインモニタに強制的介入したミュラ。
「デスラー。わたくしの力を甘く見ないで欲しいわね!」
「道ずれよ。」
「所詮は傀儡に過ぎないのよ。お前は。」
ミュラは侮辱された事で、デスラーを裏切ったのだ。
宙雷艇で離脱して直ぐに、感応波でデスラーの電脳を一瞬、遮断、幻影を観せいたのだ。
その隙に宙雷艇でデスラー砲の砲口を塞いだ。
デスラーは気がつく事なく、デスラー砲の引き金を引いてしまったのだ。
偽りのスターシャ=アシュラによって、機械生命体兵として造られた自己思考型アンドロイド=デスラーは、座乗する戦闘艦=改・デスラー艦と共に宇宙の海の藻屑と消えた。
◆
西暦2199年11月15日、僅か46日という日数を残し、宇宙戦艦ヤマト戦術長:古代進、及び元太陽系連邦艦隊第二駆逐戦隊ミサイル駆逐艦:雪風・衛生長:森雪、地球に帰還。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/05/c20408e47e2949ee45cb84548a86b71e.jpg?1580134607)
ー太陽系・地球軌道上ー
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4d/c4/6a7d98f5e8dc0f817cedbef9219d2e0e.jpg?1580134100)
「あんなに綺麗な惑星(ほし)だったのね。」
「あの惑星(ほし)なら、私も暮らしてゆけそうね。」
「そうは思わない?イライザ。」
「スターシャ。…ワタシはオススメ致しません。」
「ワタシの情報が正しければ、地球は既にイスカンダルの辿った路を歩みはじめたようです。」
「ふ~ん。」
スターシャの宇宙船ゴッド・ウイングは、静かに地球圏を離脱した_。
~完~
【改・デスラー艦デスラーズⅡ(ツゥ)】
全長:285m
全幅:74.6m
主機関
イスカンダル製波動エンジン改・コスモブースター×1基
兵装
デスラー砲×1門
ミサイル発射管×8門
瞬間物質移送器×1基(2基で1組)
三連装無砲身陽電子衝撃波砲塔×3基
三連装陽電子粒子速射機関砲×8基
磁力波発射基×2基
搭載機(艇)
ゼードラーⅡ×12機
宙雷艇×4艇
◆
【空間駆逐戦闘機DDG110 ゼードラーII】
分類:戦闘機
全長:17.2m
乗員:不明
武装
7.9ミリ機関銃×2(機首)
13ミリ機関銃×2(主翼兵装ポッド)
47ミリ機関砲×4(主翼兵装ポッド)
空対空ミサイル×6(主翼兵装ポッド)
◆
【宇宙戦艦ヤマト】
艦種:超弩級宇宙戦艦
星籍:地球
所属・部隊:地球連邦
(太陽系連邦艦隊とは別)
全長:390.00m
艦体幅:43.60m
最大幅:61.77m(安定翼展開時:87.72m)
艦体高:94.54m
最大高:99.47m
最大速力
(通常航行時) 亜光速
乗員:300名
主機関:ロ号艦本イ400式次元波動缶(通称:波動エンジン)×1基
副機関:艦本式コスモタービン改(74式推進機関)×8基・2軸(核融合推進方式)
兵装
波動砲×1門
主砲:46糎・三連装陽電子衝撃砲塔×3基(9門)
副砲:15.5糎・三連装陽電子衝撃砲塔×2基(6門)
亜空間魚雷発射管×12門(艦首および艦尾両舷)
八連装ミサイル発射塔×1基(煙突部)
ミサイル発射管×16門(両舷側)
八連装空間機雷発射機×2基(艦底部)
94式爆雷投射機(マスト付け根)
12.7糎・四連装陽電子パルス高角速射砲塔×8基
8.8糎・三連装陽電子パルス高角速射砲塔×2基
12.7糎・連装陽電子パルス高角速射砲塔×8基
7.5糎・連装陽電子パルス高角速射砲塔×10基
7.5糎・三連装陽電子パルス速射機関砲塔×4基
司令塔近接防御火器×2基
艦載機
艦載艇
艦載車両
零式52型空間艦上戦闘機 コスモゼロ×2機
1式空間戦闘攻撃機 コスモタイガーII×32機(+予備機4機)
100式空間偵察機×2機
キ8型宙艇×1機
90式内火艇×2隻
作業用装載艇×6隻
特2式多目的換装車×6両
特殊装備
亜空間ソナー
◆
【ガミラス・ドメル艦隊旗艦ドメラーズ】
艦級:改・ハイゼラード級
全長:390.20m
主機関:ゲシュ=タム機関=ガミラス式波動エンジン(イスカンダル製を量産化し、改良を加えた。)
武装
330mm三連装陽電子カノン砲塔×4基(艦上3基艦底1基)
280mm二連装陽電子ビーム砲塔×4基(艦尾)
近接防御火器(単装)×32基
近接防御火器(四連装)×8基(艦上6基、艦底2基)
亜魚雷発射管×12門(艦首)
短射程ミサイル発射管×21門(艦底)
※元々はガイデロール級に座乗していたが、バラン星ガミラス鎮守府の司令官に拝命後、専用艦として最新鋭艦ハイゼラード級の特別仕様を造らせた。
艦体カラーは、ホワイトをベースにジャーマングレー/ライトグレーの三色迷彩カラーで施してある。
戦闘時には、両舷側のインティークが蛍光ピンクに光る。
特別仕様のみ330mm三連装陽電子カノンが4基に増設され、脱出用ブリッジ仕様である。
元々、使用していたガイデロール級はシュルツに払い下げられ、シュルツ艦と成る。
~あとがき~
使用している画像はイメージです。また一部、Ps版「宇宙戦艦ヤマト・ イスカンダルへの追憶」等の設定資料から引用。拾い画を使用しています。石津嵐氏小説版や松本零士氏のコミック版、2199等を私的に再構築した《宇宙戦艦ヤマトreborn》です。
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト》の二次創作です。