宇宙戦艦ヤマト2203
ー新たなる航海ー
第十二話
電光石火の如く、デスラー総統の救出劇を他所に、イスカンダルではイローゼの撃ち放った波動砲によって窮地に追い込まれていた。
そのイスカンダルは、もはや人の力では制御出来ないほど、死星に向かっていた。
急激に活発化した地殻変動の影響で、津波を誘発する大型地震、数少ない山岳部を含め、海底に沈んだ火山帯はところかまず、噴火した。
そして周回軌道を外れたイスカンダルに、追い打ちを掛けるように、更に加速させた。
ゴルバが崩壊し、ガミラスの援軍が到着し、歓喜にわく戦士たちの士気を崩壊してゆく。
崩壊するゴルバの中から現れた超大型戦闘艦。
そして、イスカンダルの豹変した姿であった。
だが、それではだけでは無かった・・・
ガミラス艦隊、ヤマトのメインモニタに強制介入し映し出された、まだ幼女と思われる女の子を抱き抱えるスターシャの妹ユリーシャの姿であった。
「フッハッハッハッ!」
「ガミラス、地球の戦艦ヤマトそしてイスカンダルの女王よ!」
「これを見ろ!」高笑いしたメルダーズがメインモニタに映し出された。
「このイスカンダルの姫を助けたくはないか?」
「イスカンダルが保有するコスモリバース・システムを差し出せ。」
「さすれば、この者たちを解放してやる。」
「コスモリバース・システムさえ手に入れば、このイスカンダルの姫たちもイスカンダルにも、用はない!」
「それにイスカンダルとて、もはや惑星(ほし)としての機能はない。」
「あと10分だけ時間をやる。それまでにコスモリバース・システムを渡せ!」
◆
「新見大尉。アナライザーと連絡を。」
アナライザーとのアクセスを試す新見。
だが、アナライザーからの返信は無い。
無いと云うよりはアクセスエラーが表示されるだけであった。
しかし、ディアーブーロを捉える信号は正常で、此方(ヤマト)に再度、攻撃を仕掛けて来る様子は伺えない。
王都イスク・サン・アリアと重なるように位置を知らせる信号は点滅を繰り返していた。
艦長席に腰を下ろす古代は沈黙した。
◆◆◆◆
「……アア…。」
「サーシア………ユリーシャ。」
第一波と思える大型地震と十数メートルを超える津波には、耐えたイスク・サン・アリア。
しかし、身体に感じる地震を含め、大きめな地震は、絶えず起きていた。
そんな中、スターシャは意を決意する。
「暗黒星団帝国を名乗る者よ。」
「あなたの望むコスモリバース・システムをお渡し致します。」
「ですが、私の娘サーシアと妹のユリーシャの解放が条件です。」
「これから私はイスカンダルを脱出します。」
「よかろう。この二人は解放しよう。」
「これで、あのイスカンダルのスターシャが媒体と成り、コスモリバースが発動すれば、まだまだ資源が豊富な惑星イスカンダルが手に入り、無限に兵器を産み出す事が可能な"時間断層"も手に入るというもの。」そう心に思うメルダーズは左の口角を上げた。
「地球とガミラスの生き残りの者よ。」
「聴いての通りだ。これ以上、我々、暗黒星団帝国に構うな。」
そう言い放つメルダーズは、全長1.000メートルを超える重戦闘母艦プレアデスをゆっくりとイスカンダルを背にしたまま、降下させた。
艦長席で沈黙する古代もまた、意を決意するかのように口を開いた。
「メルダーズと名乗る彼が、素直に約束を守とは思えない。」
「囚われたユリーシャとスターシャの子供の救出に向かう!」
「島!急降下の準備だ!」
「我々が人質が居る限り、手出し出来ないと思い込んでいる今がチャンスだと、俺は考える!」
古代の作戦はこうだ。
手出し出来ないと思い込んでいるメルダーズが最も、油断するタイミングは大気圏突入時だ。
この僅か数十秒だけがチャンスだと。
プレアデスが大気圏に突入する時を見計らい、ヤマトで急速急降下、プレアデスのブリッジへ突入、二人を救出し離脱するというものであった。
失敗は許されない一か八かの掛けである。
「真田副長。ヤマトをお願いします。」
「航空隊、椎名へ。」
「コスモゼロ:アルファ・トゥ、スクランブル発艦準備、急げ!」
「第一格納庫へ!」
「コスモゼロ:アルファ・ワンも同様にスクランブル発艦準備を!」
古代はそれだけを告げると黒い艦長コートを脱ぎ、艦長席に置いた。
「古代……。」静かな口調で真田が声を掛けた。
古代は無言で真剣な眼差しを見せるだけだった。
「島!今だ!!」
「森船務長は佐渡艦医と第二格納庫で待機せよ!」
「急速急降下!!」
「古代、椎名、両機発艦ッ!!」
イメージ曲宇宙戦艦ヤマトーヤマトよ永遠にーより。
プレアデスの大気圏突入を見計らいヤマトもまた、急速急降下にて大気圏へ突入、古代と椎名の搭乗した二機のコスモゼロをスクランブル発艦させた。
大気摩擦が激しさを増してゆく。
古代と椎名はプレアデスのブリッジへと操縦桿を切る。
プレアデスと並走するように椎名のコスモゼロ。
古代のコスモゼロはそのまま、プレアデスのブリッジに機体ごと突っ込み、風穴を開けた。
吸い出す気流と摩擦熱で熱っせられた気流が乱舞する。
古代は携帯した耐火ヘルメットと耐火スーツをユリーシャに渡し、サーシアに着せると複座にユリーシャとサーシアを乗せ、逆噴射でゼロをブリッジから離脱させた。
古代機の脱出を確認した椎名は、プレアデスのブリッジ目掛け、ありったけの対艦ミサイルを射ち込んだ。
摩擦熱の気流とミサイル被弾により、プレアデスのブリッジは吹き飛び、黒煙を撒き散らせながらマザーの海に水没した。
◆◆◆◆
プレアデスの爆発で更にイスカンダルの急激に活発化火山帯は勢いを増して噴火した。
その後、スターシャとクローンではあるが古代 守の姿を見た者は、誰一人としていない・・・
イメージ曲薬師丸ひろ子より。
ヤマトに救護されたユリーシャとスターシャの娘サーシアをはじめ、救助されたガミラス臣民たちはデスラーに預けられ、この宙域から姿を消した。
「さらばだ。古代。」
「いつの日かイスカンダルを再生する時が来るだろう。」
「そして我々、ガミラスもまた・・・」
「ヤマト。地球へ向け発進!」
エンディングイメージ曲
~fin~
この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2202愛の戦士たち》の二次創作です。
一部、公式より引用。
また、プレイステーションゲーム版設定資料より引用。
使用している画像はイメージです。また一部、拾い画を使用しています。