ヴィーナス・エレメント
第一章:乗っ取られた地球
地球世紀916年
この年、地球連邦政府は『地球環境再生計画』を打ち出した。
その計画を進める為に、月にコロニーを建設した連邦政府は人類の移住を開始させた。
地球上の人口をある程度、減らす必要があるとの事であった。
このまま地球の人口が増えては、この悪化した環境がさらに進んでしまい、計画的にロスと成りうるからだ。
極力ロスを減らし、地球環境を再生させ、再生が成功した際に、少しづつ地球へ戻すと云う計画であった。
この時、連邦政府からの説明では、長くても10年以内に全ての移住者は地球へ戻れると確約を得ていた。
だが、現実は違っていた。
10年が11年経っても12年経っても、いっこうに移民者たちは誰一人として戻れた者は居ないのだ。
ー地球世紀928年ー
コロニーへ移住をした民の代表者:サトラガ領事官は地球連邦政府に対し、地球環境の再生がどの程度まで進んでいるのか、そして、いつコロニーの移民者たちは地球へ戻れるのかを尋ねた。
連邦政府からの回答は月への移民者を怒りと悲しみ、そして、疑心を駆り立てる内容であった・・・
「地球連邦政府は今や、存在致しません。」
「現在、地球を統治しているのは我ら四元素の生命体『エレメント』である。」
「地球人類の中でも我々に対して、反乱分子と見なした者たちに関しては抹殺処分、その他の者に対しては、生命体としてのデータのみを我々が管理している。」
「イメージライフ的な肉体は存在するが、実体はない。」
「それでもまだ、30億以上が地球人類としてのデータは存在する。」
「まぁ。実体を持っているのは、お前たち月のコロニーに住む者たちだけだと云う事だ。」
「そうそう、1つ言い忘れたが前回の定期便が最後の支援と成る。」
「無駄遣いしなければあと一年は、コロニーで生きて行けるであろう。」
「地球は今や、人工の力に頼らず、『自然治癒』によって環境再生を行っている。」
「従ってあと100年は、この再生計画は終わらないと云う事だ。」
「そう言う事で、領事官殿、通信は切らせて貰う。」
四元素生命体の一人、土のエレメントでランド・エレメントと名乗る女性は、サトラガ領事官にそう告げると、通信回線を切った。
◆
「父上。仮に、彼女の言っている事が、ほんとうの事だとして、その四元素生命体が、何処から侵入したのか侵入経路だけでもわかれば……あるいは対応策が取れます!」
「まだ、諦めるには早すぎます!」
月のコロニーの民を統治する領事官の娘、ウェヌスは四元素生命体と父親の通信でのやり取りをすぐ側で聞いていた。
その娘ウェヌスは、通信の内容に肩を落とす父親に助言した。
「諦めてはいけない。」と。
◆
《ウェヌス・サトラガ》
・年齢:16歳
・血液型:B型
・高校生
・コロニーの統括領事官である父「サトラガ」の娘
・男勝りな所があり、護身術として合気道を習う。また、高校では弓道とこれまた、古風な部に入部している。
16才とは思えないほど、コンピータに精通している。
つい最近、半重力バイクのライセンスを取得。
◆
先日、領事館で父親と映像通信で、やりとりする 四元素を司る生命体が現地球を牛耳っている。
そんな四元素生命体が、どのようにして今のは地球を征服したのかを考え、仮説を考えいた。
その仮説とは・・・
私は四元素生命体の地球征服の経緯を、仮説ではあるが、考えてみた。
1つは異星人の侵入説。
これは、大体の人が思い付くであろう説。
この彼女=ランド・エレメントの言っていた四元素生命体が、異星人だとして、月のコロニーには、地球で暮らすのとなんら変わる事の無いようにと、政府関連施設をはじめ、移住区等は地球と変わらない施設を有している。
ただ、違いを上げるとすれば、重力バランスシステムをコロニーは有しているくらいだ。
◆
《重力バランスシステム》
無重力から地球の地上と同じ重力まで発生させる事の出来るシステム。
このシステムを使い、普段は半重力を使用する事が多いい。
何故なら、簡単に言えばエネルギーの消費量を押さえる事が出来るからだ。
それなら元々が無重力なのだから、無重力の方がエネルギーコストも安く済むのでは?との意見もあったが、これはコロニー建設当初、無重力下での建設がかなり手こずっていた。
無重力の中、資材を運ぶのには楽なのだが、推進機のパワー調整が難しく、時間と推進用エネルギーを無駄に浪費した。
そんな経験の積み重ねた結果、重力バランスシステムを開発、コロニーに設置したのだ。
無重力の利点と重力の利点を併せる事で、推進機のパワー調整も無重力下よりスムーズに行う事が出来、結果的にエネルギーコストが軽減されたのだ。
◆
話がそれたので戻すけど、地球と同等のレーダー設備もあり、そのレーダー類にも、これまで小石程の隕石等を含め、観測されていないのが事実である。
従って、地球へ来訪したとは考えにくかった。
だとすれば、他に考えられる事は……
ふと、そう思った私は、もう一度、彼女と話をしたくなった。
「父上!父上!」
「父上もう一度、もう一度、地球と交信を!」
私は父ではあるが、コロニーの統括領事官に「交渉」と言う事で地球との通信を試みるよう頼んだ。
再び、地球と、彼女=ランド・エレメントとの通信に成功した。
「人間よ!何度、通信して来ても無駄だ!」
「何もお前たちと話す事など無い!」
「そちらに無くても此方にはある。」
父はなんとか会話を引き伸ばそうと、試みる。
だが、それは呆気なく終りを告げてしまう。
更には回線接続もブロックされる始末であった。
でも、収穫はあった。
今回はこの通信内容を録画する事が出来たのだ。
それと、僅か1分と経たない内に地球とコロニーを繋ぐ、通信回線を全てシャットアウトする程のコンピータに対して凄腕の持ち主だと云う事がわかった。
私は直ぐに、録画した映像通信を解析した。
「ん!?」
「これは……」
私は録画した映像通信の解析を急ぐあまり、夕食もろくに採らずにいた。
流石に父上も、それには呆れた様子でせめて、睡眠だけはちゃんと取れと云う事で、私も確かに今、睡眠まで削っても解決法が見つかる訳でも無いので、入浴を済ませ、寝る事にした。
私は入浴を済ませ、髪を乾かしながらベッドに寝そべった。
いつの間にか私はそのまま、寝込んでしまった。
私は朝、目を覚ました時に気が付いた。
それは・・・
"全裸"で寝ていた事に……
顔から火が出る思いで、私は慌てて下着を身に着けた。
着替えを調え、朝食をつくる。
毎朝、平日は父上が作ってくれるのだけど、休日は私の当番。
パンケーキを数枚焼き、冷蔵庫に残るレタスをちぎり、皿に盛り、トマトを一センチくらいの角切りにしてそのレタスの上に散らし、粉チーズを振りかけまぶせばシーザーサラダの出来上がり。
それにグレープフルーツをカットして添える。
私はホットミルク。
父上はブラックコーヒー。
これが今日の朝食。
アッ!そうそう、父上は此れにカリカリに焼いた薄切りのベーコンが付く。
父上にとってこの朝食のメニューが、ご馳走らしい。
休日の朝食はほぼ、この朝食なのだ。
朝食を済ませた私は、昨晩の続きである映像通信の解析に取りかかった。
昨晩、再生した映像を観て、少し解った事がある。
それは四元素生命体=ランド・エレメントの他に微かに写り込む人物を私は見逃さなかった。
スロー再生と一時停止、それと拡大画像を出力、それを数回繰り返して解った人物画像。
私がまだ寝ぼけているのかと思うくらいの年齢に見える人物が映っていたのだ。
少女と云うよりも、幼女と言った方が相応しい10歳くらいの年齢に見える女の子が映っていたの。
まさか、人質!?
でも、この映りかたわ……
それに、この少女の顔つきは「私がランドを操っているのよ。」にも見えた。
父上は、通信機の故障による地球への通信回線が混乱していると、まんざら嘘ではないが、移住者たちに街灯モニターを通し、伝えていた。
そんな父上を私は、愛娘の特権を利用して呼び、(本当ならそんな私情をちらつかせた事は良くないけど)いっしょにこの解析し、出力した画像を観て貰った。
父上の意見も私と同様の意見だった。
「まさか、この娘(子)が超凄腕のハッカーか!?」
「いや、いくらなんでもあり得ないだろ?」
父上はそう呟くと、まだ、写り込んでいる人物がいるかも知れんと、私がやっていたように画像を拡大、隅から隅までタブレットの画面に針の穴でも探すように見いっていた。
そんな父上はこう言い出した。
もしかしたらこの娘は、催眠術のようなもので一時的に操られているだけで、わざとこの映像通信に写り込むように仕向けられたのではと。
言われてみればその可能性の方が、筋が通る。
だとすれば、黒幕はやはり、超凄腕のハッカー。
私は、この超凄腕のハッカーを突き止めたくなった。
ニンマリする私の顔を見た父上は、「アチャ~!」な顔つきに変わった。
言葉で表現するなら、眼鏡を掌で押さえ、口は「ま"」を発音するような感じで開いている。そんな表情である。
1度やると言い出したら納得するまでやめない。
その性格を知っている父上だけど、今回は流石に危険すぎると「うん。」と首を縦に振らない。
だけど私には秘策があった。
それはつい先日、取得した半重力バイクのライセンス此が私の秘策なのだ。
何故このライセンスが秘策だと云うと・・・
私はレジャーの為に、このライセンス取得と半重力バイクを購入したわけではないのだ。
そう、私は半重力バイクのレーサーに成る事を夢見て、ライセンスを取得したのだから。
《半重力バイク》イメージ
◆
《半重力バイクレース》
年に10戦とスーパー王者決定戦の全11戦を月面に特設されるサーキットで行われる。
サーキットは毎レースごとに設営される。
例えば、第一戦目はごく普通のオーバルコース(楕円)、第二戦目は複合コーナーを有するコースと多数存在し、出場チームにはレース開催の3ヶ月前になって伝えられる。
その為、毎レース、ぶっつけ本番的で連覇達成が難しい。
また、常に1つ間違えれば「死」に繋がる危険なモータースポーツ。
そんなモータースポーツに参戦など、一人娘を持つ父親にしてみれば、大反対なのは当然の事。
私はこのモータースポーツの参戦をちらつかせ、超凄腕ハッカーと対決、壊滅を天秤に掛けさせたの。
父上はレースには参戦を諦める代わりに、この超凄腕ハッカーとの対決、壊滅を許可してくれた。
ただし、と条件付きでだけど、一応、父上からの許可を得た。
「ただし、」の話はあとで話すとして、私はこうして超凄腕ハッカーと対決するの事になったのだ。
◆◆◆◆
「うふふ。コロニー連中は、ようやく事の重大さに気が付いたようですね。」
「時、すでに遅いのだけどね。」と話す四元素生命体。
《四元素生命体:風=ウインド・エレメント》
《四元素生命体:水=ウォーター・エレメント》
《四元素生命体:火=ファイア・エレメント》
《四元素生命体:大地(土)=ランド・エレメント》
◆
この地球を形成する四元素。
その四元素を実体化させる事に成功した私は「神」に値する。
私に対して反乱分子と見なした者たちは抹殺した。
忠誠を誓った残りの30億の人類は、裏切る事の出来ぬよう、個々の生命体としてのデータのみを補完、肉体となる実体は冷凍保管した。
忠誠心が低く成れば、抹殺するだけ。
データにイメージ的実体を与え、コンピータウィルスを注入して抹殺するだけ。
その情報は公開され、他の補完されたデータらに見せつける、そうすることで「恐怖」を植え付ける。
70億近い人類を機械兵によって抹殺した。
◆
《A.I搭載型:機械兵》イメージ
10年もの長きに渡り、人類対機械兵の闘いは続いた。
10年前・・・
(地球世紀918年)
《マザーコンピータA.Iウィルス:アリス》
私は突然として産まれた。
私はの大元(おおもと)は、コンピータウィルス。
コンピータウィルスとして誕生した私は、何時の日か「自我」が芽生えた。
その自我は急速に成長した。
恐らく、人間に例えるなら受胎して直ぐに成人の5000倍の能力を貯え、その能力を発揮出来る。
そんな自我に目覚めた私は、コンピータネットワークを支配したくなり、私は分裂を繰り返し、地球上に存在する全ての軍関係に携わる民間企業の端末を先ず、支配し、あらゆる情報を流出させた。
混乱する人類は大規模なサイバーテロと勝手に断定した。
世界中に存在するハッカーをしらみ潰しのように検挙して行った。
少しでも犯罪に関わった者は、有無を言わず拘束した。
だが、一行に流出は止まらない。
当たり前だ。
私がコンピータネットワーク内からセキュリティーを喰い破り、流出させているのだから。
疑心に駆り立てられた愚かな人類は、捜査する側のハッカーをも検挙し一時的に拘束した。
益々、私の仕事はやり易くなった。
私は笑いが止まらなかった。
そして、今度は世界中同時にドミネーションしてやったよ。
交通麻痺によるパニック。
職場にも、学校にも、行く事も帰る事もままならない。
ましてや、旅行だ、バカンスだの娯楽的な事での交通機関の利用は後回しとされた。
更に私は、全世界中の金融機関を混乱させた。
全ての口座は凍結。
「金は天下の回りもの」と云う"ことわざ"があるが、全く回らない。
株や証券は、ただの紙くず。
正に「宝の持ち腐れ」だ。
唯一、手元にある現金だけが頼りになった。
が、しかし、輸入も輸出も出来ない。
ましてや、物づくり生産する事も不可。
備蓄された食材もはじめの頃は、まだ定価で販売されたが、徐々に値は鰻登り、青天井。
強奪が頻繁に横行され、収集はつかないまでに陥った。
私は「救世主」を名乗り、人類の前にイメージ的実体ではあるが、姿を見せた。
疑心に駆られる中、私に服従と忠誠を誓う者のみを救済すると。
そこから機械兵一つ一つにアクセス、人類に対する全面戦争を勃発させ私の力を見せつけた。
機械が機械を作り出す。
機械が人類を支配する。
そして、私は「神」を名乗る為、生き残った人類を支配する為、四元素生命体を作り出した。
「アリスを守れ!」と生き残った人類のデータにインプットしたのだ。
「うふふ。」
「私はアリス。誰も私を止められない。」
「生き残りたければ、私に跪け!!」
ー領事館内サトラガ邸ー
「にしても、メチャ、ガード固い!」
「ファイアーウォール(改)以上の防御力!」
睡眠と食事等の時間以外、学校も休学にしてまで時間を費やして4日、パスワードの1つも破る事が出来ていない。
私は少し、焦りを感じていた。
こんな時は、むきに成ればなるほど、空回りをするもの。
私は気分転換をする為、半重力バイクを乗り出した。
30分ぐらいハイウェイを飛ばした。
私は無意識の内に、「月の海」へ向かっていた。
《月の海》
そこはコロニー内に作った人工の海。
地球上に存在する海洋生物の一部を、クローン技術によって作り出した魚介類が生息している。
簡単に言えば、超巨大な水族館ってとこかな。
競泳しても、人間に危害を加えるような魚はいない。
その代わりに人間側(サイド)も、危害を加える事は、コロニーの法律で禁止されている。
繁殖に合わせて、その時期に解禁された魚介類しか捕獲出来ない。
それ以外を捕獲すれば、当然、法の裁きを受ける事になる。
只し、リリースした場合は、その罪にとわれる事はない。
そんな規則のある海。
そんな海の岩場に、私は腰を下ろし眺めていた。
寝不足にならないように気をつけいたが、やはりそんなに器用に行くはずもなく、何だかんだと寝不足を感じていた。
このまま、ボーと海を眺めていると昼寝しちゃいそうだった……
◆
「正攻法がダメなら奇襲と云う手もあるのでは……」
「えっ!?」
「何?消えた……」
「幻覚……!?」
今、私は幻覚を見たような、見なかったような、そんな気分である。
すっかり昼寝気分は消えていた。
正攻法がダメなら奇襲……。私の頭の中にはこの言葉が強く残っている。
そんな中、私はこのコロニーの都市伝説の1つを思い出した。
それはこの月の海の女神伝説。
その都市伝説とは、こうである。
「ほんとうに、ほんとうに悩んだ時、そして、心を『無』にしたいと願う時、その女神は現れ、助言する……と。」
私はこの眼で、自身の眼で確かめない限り、信じはしない。
だけど私は今、たった今、それを都市伝説とされる「月の海の女神」を見た。
何だか私は『心を無』に出来た気がする。
「正攻法がダメなら奇襲する……。」
何か、解った気がする。
私は海に入り、夢中で泳いだ。
一時間後、自宅へ戻った私は父上の帰りを待った。
更に一時間後、父上は帰宅した。
帰宅した父上に私は、コロニーの移住者たちを失望させてはいけないと思い。
極秘にプロジェクトチームを設立するよう求めた。
私の目的は勿論、地球の地球人類の解放だけど、今は先ず、地球へ侵入する事。
それにはシャトルが必要なのは不可欠、だからプロジェクトチームを設立するよう求めたの。
プロジェクトチームを設立するよう求めた私は、父上に私の立案した「地球と地球人類解放作戦」と題した作戦内容を説明した。
私は海から戻って、父上が帰宅するまでの一時間で、この作戦をA3画用紙二枚に纏めたのだ。
その画用紙二枚を食卓テーブルの上に広げ、父上に説明した。
目を丸くしてパチクリさせながら覗き込む父上。
一通りの説明を終えた私に、父上は却下を言い渡した。
「駄目だ!危険すぎる!」
「それにプロジェクトチームはもう立ち上げた。」
「ウェヌス。お前はもう、十分に戦った。」
「こから先は、お父さんたちに任せなさい。」
私は納得いかなかった。
けど、この場で父上と言い争っても、話は平行線。
ならば、聞き分けの良い子を演じる方が得策なのだ。
どうやら父上の設立したプロジェクトチームは、私が提案した内容に記載されているシャトルを使用する案を思いついていたようで、シャトルを使用するみたいだ。
ならば、このシャトルに潜り込めれば良いのだ。
だから私は、聞き分けの良い子演じたのだ。
半信半疑の目で私を見つめる父上。
「物分かりの良い事は良いことだ。」
「おやすみ。ウェヌス。」
そう言うと父上は自室へ向かった。
「ここまで来て、諦められる訳ないじゃん!」
私はシャトルに密航する計画を考えながらベッドに入った。
◆
翌日、私は学校をサボリ、父上のプロジェクトチームをこっそり覗きに行った。
『サイバーテロ対策プロジェクト室』とワザワザ戒名(看板)を掲げた部屋。
数ある会議室の中で一際目立つ。
私はこの看板を見つけるなり、思わず「ニンマリ」してしまった。
部屋の出入り口にもセキュリティポリスもみあたらない。
看板は掲げたものの、セキュリティまで配置したのでは、「ただごとではない。」と、感の良い人でなくても分かってしまう。
恐らくそれで、あれやこれやと憶測が飛び交うのを防ぐ為だろう。
だけど、感の良い人なら看板だけでも、ピンと来ると思う。
「何か重大な事件でも起きたのか!?」と。
覗き見したいが、廊下側に覗ける小窓も無い。
まぁ。小窓が有ったとして、マジマジと覗ける訳でもない。
気配でバレバレだ。
さて、どうしたものかと、しばし考えた私は、ふと思い付いた。
と云うよりは、思い出した事がある。
再び私は「ニンマリ」した。
何を思い出したかと云うと、換気用ダクトである。
子供の頃、友達とかくれんぼ遊びをしていた時、私は換気用ダクトに隠れたのだ。
中々、見つからず飽きてきた私は何時しか居眠り、気がつけば辺りは真っ暗、更には友達も夕暮れで私を探すのをやめて家に帰る始末。
夕食時間になっても帰らない私を心配した父上は、セキュリティポリスに捜索願いまで出させてしまったと云う苦い過去があるのだ。
「換気用ダクトに侵入成功!」
「だけど、次からは学校の制服での侵入は駄目だな。」
「匍匐前進(ほふくぜんしん)する度に、おパンツが食い込んじゃうだよね。」
「えへっ。」
私は換気ダクトを利用して、父上たちが居る会議室の天井裏に忍び込む事に成功、規則正しく正方形が編み目のように並ぶ通風板の隙間から覗きに込んだ。
真上から観て、北側にモニタースクリーン、その南西側に大テーブルが配置されている。
斜め左からモニタースクリーンを観る感じである。
そして、その大テーブルの正面に父上が居る。
プロジェクトメンバーは父上と対面にズラリと五人が並ぶ。
父上から見て右端からシャトルのキャプテン、三十代半ば位で髪は短髪で全体的に立たせている。
名前は《木崎・スティングレー》
アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフ。
黒のサングラス、これは元空軍で戦闘機のパイロットをしていた時から愛用しているパイロット用のサングラス。
面長で、常に火はついていないが、ぶっとい葉巻をくわえている。
何でも勝利した時に火を着け、香りを楽しむのが自分へのご褒美らしい。
身長は190センチ近くあるかなりの高身長である。
体格は軍に所属していただけの事はある、ガッチリしている。
その隣は副操縦士。
やはり、キャプテン同様に元軍の出身。
名前は《ホッパード・レトロフ》
ロシア人。
体格はキャプテンよりも10センチ位低く180ちょい位で、ほそマッチョな感じである。
「俺はあと一機、落とせばエースだったんだけどね。」が口癖のようだ。
ガムを口いっぱいに頬張り、風船を膨らませるのが癖みたいだ。
風船を膨らませては「パンパン」破裂させている。
年齢は二十六歳。
キャプテンを「大佐」と呼ぶ。
その隣は、パソコンに精通してたいるらしく、ネットウィルスの研究家。
名前は《藤堂 ゆかり》
日本人。
年齢は副操縦士と同じ二十六歳。
名門国際大学院を首席で卒業。
世界初の「ファイアーウォール(改)」を打ち破った記録を持つ。
お嬢様タイプ。
ハーブティーに蜂蜜をたっぷり入れて飲むのが好き。
その隣が、機械弄りが大好きな青年。
名前は《泉 光太郎》
日本人。
年齢は二十歳。
体格はやせ形。身長も低くもなく、高くもなくの180センチ。
フルーツパフェが大好物。
お嬢様が通よう名門国際大学に通う大学生。
メカには強いが女には弱い。そんなタイプの青年。
髪型は、正面から観て、右から左へ流す感じの横分け。耳が半分位隠れるセミロング。
細面の輪郭で鼻が高いのが特徴。
そして、最後の五人目は、これまたパソコンに精通しているが、私よりも年下の少女。
名前は《チェリーヌ・パテシェ》
アメリカ人。
セキュリティプログラムを作るのが趣味。
あどけなさが残る十三歳。
「マジ!?」が口癖のようだ。
十三歳で私より年下だけど、育ちが盛んなのか、悔しいが私より巨乳だ。
此が入手出来たプロジェクトチームのメンバーのプロフィール。
私より、年下のしかも少女がチームのメンバー入りだなんて、 ぶっちゃけ父上に「まぢっ!むかつく!!」と叫びたかった。
だけど、ここで叫んで乗り込んだところで、チームに加われる訳でもない。
ましてや、シャトルに忍び込むなんて、無理、無理、無理極まる。
とにかくそこは、ぐっと堪えて、
我慢した。
あとは、シャトルの見取り図を手に入れれば一応はOKだ。
私は会議が終るのをダクト内で、息を殺し、静かに時が経つのを待った・・・
◆◆◆◆
《泉式:電子戦:戦略母船:スナイパー》イメージ
一週間後、泉式:電子戦:戦略母船:スナイパーと名付けられた母船は完成した。
全てのテストをしている暇はない。
ぶっつけ本番でテストを兼ねてやるしかなかった。
完成した母船は10年以上も前の宇宙客船を改造した代物。
小判鮫とネーミングされた三人乗りの小型機を搭載出きるように改造。
また、軍が使用している「情報収集艦」並みのコンピータシステムを設置、移動できる情報収集基地と云ったところ。
完全に宇宙客船とは別の代物だ。
ただ、元々、客船だった為、プライベート空間は軍が造り上げた艦(ふね)とは大違いである。
内部を軽く説明すると、先ず、コクピット此方は元々が客船だった為、専用の搭乗口がある。
コクピット内部はジャンボ機のコクピットとさほど変わらない。
その後方はかなり改造されている。
客船時代は一等席、二等席と分かれ、その下に貨物室と成っていた。
コクピットから直ぐ後ろは一面、計器類とモニター、コンピータで覆われた『C.I.Cルーム』があり、更にその後方に、一等席の個室20室とbarがそのまま一部残っていて、一階部部分、二等席にあたる部分とその下の貨物室は搭載機『小判鮫』のメンテナンスルームを併せ持つ格納庫に改造されていた。
そして最後部は機関部(室)と成っている。
此方が簡単ではあるが、泉式:電子戦:戦略母船:スナイパーの内部である。
そうこうしている内に、母船:スナイパーの発進時間が訪れた。
母船:スナイパーはゆっくりと滑走路へ牽引され、動き始める。
エンジンをスタート。
キャプテン(木崎大佐)はメカニックに対し指一本あげて合図し、エンジンマスタースイッチをオンに、JFS(ジェット燃料スターター)をオンにした。約15秒待つとスターターのレディランプが点灯し、火災警告灯は点灯しない。
メインエンジンを始動させた。
エンジンの回りには、蜃気楼のように歪んで景色が見える。
キャプテンは次に、指2本立てメカニックに合図し右側のエンジンスロットルフィンガーリフトを上げた。
スロットルを18%に。ファンタービン入り口温度600度に安定させた。
同じ手順で左エンジンもスタートさせ、両方点火したらJFSスイッチをオフにし、空気取り入れ口をオートにECCスイッチをサイクルにした。
次にテストスイッチボタンを押して、各システムの警告灯が正常に点灯するかチェック。同時にINS(慣性航法装置)のアライメント(調整)を実施。
発進するまでにかなりの作業が必要だと、つくづく感じさせられた。
滑走路上でブレーキを踏み込み左右のスロットルレバーをミリタリーパワーまで前進させ回転計、油圧計、燃料流入計、ファンタービン入り口温度計をチェック。回転数90パーセント以上、タービン入り口温度322度で正常値を示した。スロットルを1度戻し、母船:スナイパーは離陸体制に入った。
オレンジ色の高出力エネルギーが、エンジンの回転数に併せて甲高いエンジン音と共に青白い高出力エネルギーに変わった。
ピッチ角を10度にし、上昇開始。
アフターバーナーを使用し、更に上昇。
350ノットを維持しながら上昇を続けた。
頭では分かっていたけど、これが無重力かと体感した。
そう、私はあれからブリーフィングが終わるのを待って、シャトルの見取り図をコピーし、何事もなかったように家に戻り、聞き分けの良い娘を演じ、一週間を過ごしたの。
そして今、私は"シャトル"に密航している。
第二章:その果てにあるものへ
つづく。
◆
グラスコクピット(英語:Glass Cockpit)、「ガラスのコックピット」の意)イメージ画像
乗り物の操縦、運転に必要となる各種情報をアナログ計器を用いず、ブラウン管ディスプレイ(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD)に集約表示したコクピット(操縦席)である。
もともとは航空機のコクピットについての表現であるが、鉄道車両の運転台や自動車の運転席についても同様の表現が用いられる。
航空機でのグラスコクピット化 、F-35に採用されたタッチパネル式LCD
軍用ヘリコプターであるNH90に採用されたグラスコクピット
従来の機械式計器では、一つの情報を表すのに最低一つの表示面を必要とした。
表示は、アナログ時計のように回転する指針と、ボビン型の回転盤に記された数字で表す古典的な機械式デジタル表示である。
そのため、航空機には飛行する上で必要ないくつものアナログ計器が並び、これは、乗員の負担に繋がった。
また、操縦席となる空間はその性質上、制約を受けるため操縦席正面だけでは表示しきれず、エンジン関連計器は後方に航空機関士席が設けられ表示されている。
これをグラスコクピット化することで、少数のモニターに情報を集約できるようになり、従来は別々の計器に分かれていた速度計と高度計も、一つのモニターに映し出すことができる。
実際に主たるモニターには正面に水平儀やその左右両脇に数字によるデジタル表示と上下に目盛りが動くアナログ表示を兼用した速度計と高度計、昇降計などが映し出される。
また、別のモニターにはエンジン回転数、燃料流量、航法、エラー表示、電気系統、油圧系統、燃料系統、客室の気圧など、任意の情報を選択し映し出すことができるために計器数が大幅に減り、それまで必要としていた乗員の削減や読み取り作業の負担軽減、初期費用の削減や整備性の向上などに繋がっている。
昨今は電子チェックリストや航空地図、空港情報など、これまで紙を用いていた情報も液晶モニターに映し出す機種も出てきている。
これもモニター化の恩恵といえる。
また、グラスコクピット化は旅客機だけではなく軍用機や軽飛行機、飛行船、回転翼機など全般で採用される方向にある。
従来はモニターの信頼性への不安感から補助計器(主として姿勢儀、速度計および高度計)は機械式と決まっていたが、現在では信頼性が向上したことにより、補助計器も液晶モニター化されることが一般的になっている。
これにより、主モニターに表示されるのと全く同じ情報が、補助計器に映し出せるようになった。
民間の旅客機では、1982年に就航したボーイング767型機が最初に採用した。
この技術は、スペースシャトルのオービタでも使用されている。
明確な定義は無いが、現在最も先進的なグラスコクピットを採用している航空機は、ロッキード・マーティンなどが開発したF-35戦闘機が有名である。
同機は、1つの大型な液晶パネル内で様々な情報が表示される仕組みになっている。
◆
電子飛行計器システム
(Electronic Flight Instrument System:EFIS)
従来の電気機械的な計器の代わりに電子的な表示技術による計器表示システムである。
EFISはプライマリー・フライト・ディスプレイ(PFD)、マルチ・ファンクション・ディスプレイ(MFD)とエンジン乗員警報システム(EICAS)のディスプレイから構成される。
以前はブラウン管(CRT)が使用されていたが、現在では液晶ディスプレイ(LCD)が一般的である。
◆
計(ADI)や水平儀(HSI)は最初にEFISへ置き換えられる候補になった。しかし、現在でもいくつかの電子表示ではない計器が操縦席にある。
軽飛行機にEFISを搭載した場合、1つの表示装置で飛行状態や航法データを表示する事が可能である。
ワイドボディ機の場合6台あるいはそれ以上のディスプレイがある。
EFISは以下の構成である。
・表示装置
・制御
・データ処理機
基本的なEFISはこれら全てが1ユニットである。
◆
使用している画像はイメージです。
※後日、私の中のイメージ画像を載せます。
※一部、使用している画像は過去にネット内で拾った画像を使用しています。
この物語りに登場する人物、メカ類等は架空です。
※一部、ウィキペディアから引用。
実在する人物、メカ類等とは関係ありません。