space.battleship.yamato
ー新たなる戦士たちー
西暦2200年9月
宇宙戦艦ヤマトは地球圏に到達。
ヤマトを追って来たデスラーガミラスとの激闘の末、デスラーガミラスと共に消滅した・・・
その24時間後、地球の大気を浄化する能力"スターシャ"を授かった森 雪を含む十数名の生存者は脱出艇にて、地球へ帰還した。
そして、時は流れて・・・
西暦2220年
二十年の歳月を掛け、地球は壊滅した都市、防衛艦隊を再建した。
今では、更なる発展を成し遂げようと、資源を地球外からも取り寄せていた。
太陽系最外縁部に十一番の惑星として発見された星をも開拓、資源採掘基地と都市までもが建設され、地球から移り住む人々も年々、増えて行った。
"異星人"の能力を授かった森 雪とその子は、地球を救った"英雄"ではなく迫害され、地球では暮らしにくい面も有り、この第十一番資源惑星での暮らしを余儀なくされていた。
ただ、彼女らにも救いはあった。
それは今年で軍を退役するが、あの沖田と同期の土方上級中将が駐留軍司令部に司令として赴任、森たちに援助していた。
「大地!そんな事では明日の卒業試験にパス出来んぞ!」土方の激が飛ぶ。
土方上級中将に直接、指導を受ける大地は森 雪の息子で19歳。
この第十一番資源惑星に新設された宇宙軍士官学校に通う士官候補生。
月面都市にある上級士官学校とは違い、卒業しても階級は准尉で、少尉へ昇格出来るのは、一年後に昇格試験に合格する必要がある。
実戦でもあるなら戦果を上げれば、それだけ昇格も早いが、"ガミラス"との戦争を最後に戦争は起きていない。
いわゆる叩き上げのコースである。
皮肉混じりに月面都市の上級士官学校を"お墨付き"と呼ぶ。
ここを卒業すれば少尉からスタートがはじまり、大尉までは三年あれば無試験で昇格する。
まぁ。入学は18歳からで、卒業するまでに四年間も訓練生期間がある事を考えれば、この時代では妥当な待遇なのだろ。
そんな大地が目指すものはエース、それも"トップガン"だ。
母親譲りなのだろ。
トップガンに選ばれれば二階級特進が約束されているのだ。
エースパイロットの中の超が付くエースと云ったところだろう。
大地も訓練学校を卒業出来れば、トップガン試験を受ける最低の条件は揃う。
銀翼に朱(あか)い機尾、そして二枚ある垂直尾翼に地球連邦防衛軍のマークを下地に白い虎の描かれたエンブレムを施したコスモタイガー・Ⅱ(トゥ)。
更にエース以上に成れば、パーソナルカラーに機体をカラーリング出来る。
だが、大地はトップガンの称号を持ちヤマトと共に運命を共にした亡き父である進が愛した"コスモ零"で大宇宙(そら)を飛翔する事が夢である。
卒業試験前夜
時計の針が午前零時を少し回った頃、それは突然、起こった・・・
深夜、都市部から数キロ離れた駐留軍施設とその周辺は、まるで祭りや夜市、真夜中のカーニバルを開催しているかの如く、輝かく赤く燃え上がる炎の火柱を幾つも上げ、周りを照らし、打ち上げ花火のような音色を響かせていた。
やがてそれに付け加え、怒号と悲鳴、緊急車両のサイレンの音が混じる。
卒業試験前夜とあって、普段より早く就寝した大地が目を覚まし、事の重大さに気がついたと同時にけたたましいサイレン、空襲警報が惑星全土に響き渡った。
大地の母、雪はこの日、愛した人古代 進や沖田艦長、同じ志で地球の為に戦い、惜しくも命を落とした戦士たちの命日であり、地球が地球人類が救われた記念日でもある式典に参列する為、地球へ赴いていた。
式典と言っても、同窓会程度の集まりに過ぎない。
ヤマトで"イスカンダル"へ航海して生きて帰還した者たちの集まりなのだから。
確かに帰還して、地球上の大気が浄化され、復興へ歩きはじめた頃は地球連邦政府、防衛軍、世界の人々から"英雄"と讃えられ言わば地球を挙げての記念式典が行われた。
だが、地球が地球人類が救われた真実を知った当時の防衛軍軍務長は、藤堂長官を"嘘つき呼ばわり"し、失脚させた。
"イスカンダル"も"ガミラス"も藤堂が沖田上級大将(提督)と作り出したものである事を知り、"売国奴""国賊"に当たるとしたのだ。
元々、森 雪は異星人で地球人に憑依したなどはでっち上げだと、全世界に発表してしまったのだ。
この事がきっかけで、英雄の丘と呼ばれる小高い丘に設置された沖田の象と記念碑は壊されてしまう。
そんな中、艦医を務めた佐渡を中心に帰還したクルーたちは一本苗木を植え"鎮魂の樹"と名付け、年に一度この丘に集まる個人レベルの式典を開催する事にした。
だが、この日を境に藤堂は軟禁、森 雪と子供である大地は幽閉された。
英雄扱いされたのは本の僅かな三年間だけであった。
幽閉から三年、新たに太陽系の惑星として発見された第十一番惑星に豊富な資源が埋蔵されている事を知った連邦政府は、資源採掘基地を建設、その二年後に軍の基地を建設した。
駐留軍創設と同時に、雪たちは幽閉を解く代わりに地球圏退去を命じられたのだった・・・
「……なっ!何が一体!?」
大地はベランダから身を乗り出し、軍施設のある方向に顔を向けた。
「土方司令は無事か?」と大地の頭を過る中、大地はドローン式ホバーバイクに飛び乗り、司令部を目指し疾走した。
道中、赤く燃え上がる炎の光に照らし出された見慣れない機体を目撃する。
その機体の形状は、円盤のような形に潜水艦のセイル(司令塔)のようなものが付いた機体だ。
小型で一人乗りに思えた。
「くそッ!」
「奴ら無抵抗な人たちまでも……。」
降り掛かる火の粉を振り払いながら、炎の街路地を駆け抜けてゆく。
大地が司令部に着いたときには、ここが昨日まで活気に満ち溢れていた場所とは、想像もつかない程に、瓦礫に満ちた荒れ果てた場所に変わっていた。
「……こっ。こんなに酷いとは………。」
4階から上は破壊されている施設の様子から大地は地下へと足を運んだ。
上級士官以上しか地下へは立ち入る事が禁止され場所。
階段を螺旋状に降りる大地の目に飛び込んだ黒鉄に聳える物体。
その物体の端にはコスモ零が見える。
「……あれは、あれは"零"じゃないか!」
「あれを拝借するとするか。」
大地はひたすら階段を下った。
第二話へ
つづく。
この物語は、もし私がspace.battleship.yamato(実写版)の続編を作るとしたら的に、二次創作したspace.battleship.yamatoの物語です。
私的設定が混ざっています。
使用している画像はイメージです。
また一部、過去に集めた拾い画を使用しています。