囚われのユリーシャー
宇宙戦艦ヤマト2199外伝ー
ー西暦2199年ー
宇宙戦艦ヤマトは「コスモリバースシステム」を受領し、惑星イスカンダルをあとにした……
この物語りは宇宙戦艦ヤマトが惑星イスカンダルを抜錨して、わずか一週間後の出来事の物語りである。
ー大マゼラン銀河サレザー太陽系・第五惑星エピドラ宙域ー
この宙域に隠れるように一隻の艦(ふね)の姿があった。
その艦は、ガミラス親衛隊直轄の情報部隊所属の艦である。
《情報収集艦phantom.eye艦長ハンニバル》イメージ
「定時報告。『白鳥』は湖に舞い降りた。」
「繰り返す。『白鳥』は湖に舞い降りた。」
phantom.eyeから発艦した空間偵察機スマルヒから暗号通信が発信された。
◆
※phantom.eye=亡霊の眼
ガミラス航宙艦ハイゼラード級の改良型である。
艦体は紺色に近いダークブルー。
格納庫を増設、艦載機及び艦載艇を搭載可能とした。
外観は艦体の色が違うだけで、他はハイゼラード級と、ほぼ変わらない。
《改・ハイゼラード級ファントム・アイ=phantom.eye》イメージ
艦級:ハイゼラード級
全長:392m
主機:ゲシュ=タム機関
副機:ゲシュ=ヴァール機関(無音航行用)※次元潜航用パーツは"デスラーの金庫"が開かず開発、製造が出来ない為、省かれた。
武装
330ミリ三連装陽電子カノン砲塔×2基(艦上)
330ミリ三連装陽電子ビーム砲塔×1基(艦底)→※砲身付きカノンに変更された。
280ミリ二連装陽電子ビーム砲塔×4基(艦尾)
近接防御火器(単装)×32基
近接防御火器(四連装)×8基(艦上6基、艦底2基)
魚雷発射管×12門(艦首)
魚雷発射管×21門(艦底)→格納庫の増設により、8門まで減らされた。
◆
phantom.eyeから発艦したスマルヒは、ここ数日、惑星ガミラスを監視、定時報告を行っていた。
何故、味方である、それも本国ガミラス星を監視していたのかそれは、ハンニバルに限らず前線に出ていた者、全ての者ではないが、「デスラー総統」が戦死し、「デスラー政権」が崩壊し、新たに暫定的ではあるがヒス副総統を首相とし、ガル・ディッツ提督がそれを支えているとの情報に納得が行かなかったからである。
ハンニバルはこの政権は「ガル・ディッツ提督」が企てたものに過ぎないと考えていたからである。
何故なら、この時、ハンニバルはデスラー総統の生存を情報部隊の空間通信報告で知っていたからだ。
デスラー総統は「テロン艦=ヤマト」を撃破せんと、自ら大マゼラン銀河と天の川銀河のほぼ中間点に位置するバラン星宙域を目指していたからである。
ハンニバルはこの事実を新政権を発足した者たちに突き付け、新政権は「売国奴らによる「でっち上げ」である事を暴露する。
その為の下準備をしていたのだ。
「白鳥が湖に舞い降りた。か。」
「よし。次に白鳥が現れた時が、実行の時だな。」ハンニバルはそう心の中で呟いた。
白鳥とは『ユリーシャ・イスカンダル』の事である。
ユリーシャが座乗する高速連絡船の形が、白鳥の姿に似ている事から便宜上、そう名づけられたのだ。
「機関始動。無音航行、進路:ガミラス星上空。」ハンニバルが下した。
「機関始動。無音航行、進路:ガミラス。ヨーソロ。」phantom.eye操蛇手が復唱、機関手が復唱に合わせ、機関を始動させる。
機関始動と同時に座標を入力し自動航行の操作を行う操蛇手。
静かに動き出すphantom.eye。
間髪入れずにハンニバルの命令が下る。
「亜空間遮蔽膜始動。姿を隠し接近する。」
その命令に従う第一オペレーターは亜空間遮蔽膜を展開させる。
僅か数秒で、phantom.eyeは周りの空間に同化した。
これでレーダーからも視界からも、完全に姿を隠した。
姿なき艦。正に亡霊である。
◆◆◆◆
ー惑星ガミラス上空ー
惑星ガミラス上空に到達した情報収集艦phantom.eye。
亜空間遮蔽膜を展開したまま、イスカンダル星第二皇(第三皇女)女ユリーシャ・イスカンダルが現れるのを待っていた。
「いくらとなりの惑星(ほし)だからと言って、皇女の座乗する船を随行する船(艦)も着けずに航海させるとはディッツも何を考えているのか。」
「まぁ。コチラとしては仕事がやりやすいがな。そう思わんか!?副長。」ハンニバルが投げ掛ける。
「確かに。」
ハンニバルと副長は静かに本国であるガミラス星を見つめながら、そんな会話をしていた。
◆
《キルメネル・リンケ》
※ミレーネル・リンケのクローン
ミレーネルがセレステラと共に、ガミラス中央情報部に配属されすぐに細胞核を採取され、創られたクローンの一人。
ジレル人として育てられた訳ではない為、命令が下らない限り感応波の使用を行う事はない。
ガミラス人として教育(洗脳)され、親衛隊とデスラー総統に対し服従と忠誠を徹底的に叩き込まれている。
「自分は特殊能力を有するガミラス人」と思い込んでいる。
階級は少尉。
当時、セレステラとミレーネルは自分達のクローンが存在する事など、知らされてはいなかった。
※ハンニバルは一兵器としての活用しか考えていない。
「中佐。感応波システムの準備が整いました。」感応波システムを調整するエンジニアが告げて来る。
「うむ。わかった。」
ハンニバルは待機するよう命じた。
ツヴァルケ2機が発艦準備に入る。
甲板オペレーターが慌ただしく作業を進めている。
一機のツヴァルケが艦首側の昇降機上へ牽引車に引かれ移動を開始、もう一機のツヴァルケが艦尾側の昇降機へと牽引され、あとは何時でも発艦命令が下れば射出出来る体制をとっていた。
そんな中、監視するスマルヒから定刻通り、ユリーシャの座乗する高速連絡船「スワン」が公務の為、イスカンダル星を出航したとphantom.eyeブリッジに連絡が入る。
「リンケ少尉は直ちにスワンに向け、感応波を送射せよ!!」
「繰り返す。リンケ少尉は直ちにスワンに向け、感応波を送射せよ!!」
通信オペレーターの慌ただしいアナウンスが艦内に響き渡る。
感応波システムに横たわるリンケ少尉は、脳波を強制的にコントロールされる為、何時しか険しい表情へと変わる。
下唇を噛み締め、苦痛に耐える。
時おり、感応波システムエンジニアが出力を上げ下げし、感応数値を安定化させる。
そして、リンケ少尉の容態を監視する看護カウンセラーが、鎮静剤を何時でも投与出来るようそばで待機する。
◆
感応波を浴びるユリーシャの随行員メルダ・ディッツ大尉。※デスラー政権崩壊後、二階級特進した。
幻影がメルダを襲う。
メルダは一瞬、意識がもうろうとするも、直ぐに意識は戻る。
が、しかし、幻影の世界へ引きずり込まれて行く……
「……まさか…ヤマト!?」
「私はまだ、ヤマトの中に居るのか!?」メルダは自分の心に問いかけるかのように、呟いた。
ふと、何かを感じたメルダは後ろを振り返った。
するとそこには、宇宙戦艦ヤマト戦術長:古代 進の姿があった。
だが、直ぐに古代の姿はメルダの前から消えてしまう。
不思議に思いメルダは古代が消えた辺りまで足を運んだ。
この不思議な現象は、ユリーシャにも襲いかかっていた。
突如、自分の目の前から姿を消したメルダの不可解な行動を目の当たりにしたユリーシャ。
そのユリーシャは何時しか、到着してまだ、数日しか経っていたない地球=極東管区中央司令部に自分が居る感覚を体感していた。
「雪!?」
「雪。雪なの?」
中央司令部に勤務する森 雪が自分に向かって「ニコリ」と笑顔を見せ、何処かへ行ってしまう。
思わず、雪のあとを追うユリーシャ。
「ハンニバル艦長。そろそろ"薬"感応波が効いてきたかと。」再び感応波エンジニアが告げて来る。
「うむ。わかった。」
「バトルコマンダーを送れ!!」
返事を返し、命令を下すハンニバル。
「ラジャー!!」部下たちの「待ってました。」との思いが伝わるような返答が返る。
「ツヴァルケ:α1(アルファ・ワン)及びアルファ・ツーは発艦せよ!!」
「繰り返す。ツヴァルケ:アルファ・ワン及びアルファ・ツーは発艦せよ!!」管制オペレーターの指示が飛ぶ。
その指示が下されると同時に飛行甲板のブラストデフレクターが起き上がり、ツヴァルケのエンジンから発せられる熱を遮る。
発艦準備を整えたツヴァルケ2機のエンジン音が高音へと変わる。
「発艦進路クリアー!!」
「アルファ・ワンより、順次発艦せよ!!」
発艦信号がレッドの点滅からグリーンの点滅へと変わり、最大出力へ足したツヴァルケ:アルファ・ワンが勢いよく飛び出す。
アルファ・ワンの発進後、それに続くアルファ・ツー。
2機のツヴァルケは牽引ワイヤーを「スワン」へ向け、射出。
ツヴァルケをイスカンダル星間シャトル(スワン)に固定、エアロック室から内部へ突入するバトルコマンダー。
◆◆◆◆
その頃・・・
惑星イスカンダルと大マゼラン銀河外縁部との、ほぼ中間地点を航行する宇宙戦艦ヤマト。
「次のワープで大マゼラン銀河外縁部だ。」
「なぁ。古代!?」
「ん!?なんだよ。島。」
「俺たちはほんとうに、ガミラスと和解出来たんだろうか?」
「……今は信じるしかない。」
「にしても、メルダのオヤジさんが、まさか提督だとは思わなかったよ。」
「あぁ。俺もだよ。」
この時、ヤマトのクルーたちは、まさかガミラスで一悶着(ひともんちゃく)起きている事など想像すらしていなかった。
ましてや、「ガトランティス」を名乗る戦闘民族との遭遇や、「デスラー総統」との死闘を繰り広げる等とは、夢にも思っていなかった・・・
◆◆◆◆
ーイスカンダル星間シャトル:スワン内ー
星間シャトル内に侵入したバトルコマンダーらは、複製声音変換器を使いメルダを誘う。
「メルダ。メルダこっちよ。」
何処からともなく聞こえて来る声。
「ユリーシャ様!?」
メルダは、とにかくユリーシャの声へのする方へと、足を運んだ。
だが、それは巧妙に仕組まれた罠であった。
背後からいきなり襲われたのである。
「残念だったな。ディッツのお嬢さん。そっちにはユリーシャは、いないよ。」
「貴様等ッ!!」メルダは抵抗を試みる。
「おっと!!騒ぐなよ。」
「大人しくしていて貰おうか。」
「さもなくば、大切なユリーシャの命は無いと思え。」
拘束されるメルダ・ディッツ。
「よし。あとはユリーシャを捕らえれば任務完了だな。」
「フッフッフッ。」
不適に笑うバトルコマンダーの二人。
一人はメルダを見張り、もう一人がユリーシャを捕らえる為、船内奥へと向かった。
「雪。雪、待って。」雪の幻影を追うユリーシャ。
それに答える雪の幻影。
「『芹沢軍務局長』が呼んでるのよ。」
「急がないと、あの方は気が短いのよ。」
「この先に、司令部の車を用意してあるから、それに乗りましょ。」
その言葉にユリーシャは『あの事故』を思い出したのだ。
「雪!!駄目よ!!」
「その車に乗っては駄目よ!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁーーーッ!!」
思わず悲鳴を上げるユリーシャ。
だが、それは全て幻影であった。
「ハイ。お疲れさま。」
「大人しくして貰いましょうかね。ユリーシャさ・ま。」
「メルダを助けたいでしょ!?」と声を掛けながら姿を現すバトルコマンダー。
卑劣な行為に屈する事に成るが、メルダに危険が及んでしまう事を避けるには、大人しく従うしかなかった。
ユリーシャとメルダを捕らえたバトルコマンダーは、それぞれを2機のツヴァルケに分乗させ、phantom.eyeへ帰還した。
◆
同時にキルメネル・リンケの感応波を停止させ、看護カウンセラーはリンケに鎮静剤を打ち眠らせた。
メルダ、ユリーシャを捕らえたハンニバルは、帝星ガミラス:総統府の通信回線をはじめ、ガミラス星全域のあらゆるスクリーンやモニター回線を掌握、強制的に通信回線を開いた。
映像通信が繋がるとハンニバルは、艦内に用意された演台に上がり、演説を始めた。
「帝星ガミラス総統府ならびにガミラス臣民の諸君。」
「我々は帝星ガミラス総統府に巣くう、売国奴たちに宣戦布告をする者である。」
突如、街頭やデスラー総統の演説やドメル将軍の国葬等が行われた、中央「バレラス」の巨大スクリーンに映し出される"ガミラス親衛隊女衛士(じょえいし)"を従えたハンニバル中佐の姿と台詞(ことば)に総統府の閣僚や臣民たちは動揺と驚きを隠せなかった。
「ガミラス臣民よ。騙されてはならぬ!!」
「デスラー総統閣下は生きておられる。」
「デスラー総統閣下を亡きものにし、このガミラス星を乗っ取った売国奴の者たちに騙されてはならぬ!!」
「現暫定政権はこの二人「レドフ・ヒス元副総統、航宙艦隊司令:ガル・ディッツ提督の私利私欲の塊、売国奴たちによって創られた政権である。」
「コレをみれば一目瞭然!!」
「この映像は我が同志が先日、大マゼラン銀河外縁部付近で捉えた映像。」
そこに映し出された映像には、紛れもなくデウスーラ2世が大マゼラン銀河を航行する姿であった。
「デスラー総統閣下座乗の"デウスーラ2世"である。」
「総統閣下は自ら、あの我がガミラスの英雄:ドメル将軍の仇を討つ為、テロン=地球の艦(ふね)ヤマトを追っておられるのだ!!」
「そして、何を隠そう。今、この場でイスカンダル皇女:ユリーシャ様が宣言なさって下さる!!」
「今まで、わたくしは二人の売国奴たちに囚われ、偽りの政権に荷担させられていました。」
「ですが、今日、ここに居るハンニバル中佐と女衛士たちにの活躍で解放されました。」
「……今、わたくしは、宣言します。」
「ガーレ。デスラー……」
「ガーレ。デスラー!!」
「デスラー総統こそが真の指導者。」
その言葉を告げると、ユリーシャはブリッジの奥へと引き下がった。
随行員であるメルダ・ディッツもまた、宣言をさせられた。
「ガーレ。デスラー!!」
「ガーレ。デスラー!!」
「デスラー総統閣下。お導き下さい。」
◆
「よし。二人を監禁しておけ。」と、ハンニバルは部下に指で合図を送った。
「これで、分かって頂けたと思う。」
「我が同志よ!!今こそ立ち上がる時!!」
「我らと共に、私利私欲の売国奴たちに裁きの鉄槌を下ろす、我らに力を貸して欲しい!!」
「我らは『デスラーズ・ガルマン』今、ここに宣戦布告を宣言する。」
「売国奴たちに告ぐ!!今から三時間待つ。我ら同志を全て解放せよ!!」
◆◆◆◆
ー帝星ガミラス旧総統府バレラス
ー
「バッ!!バカなッ!!」
「なんと言う事だ!!」
ガル・ディッツ提督は握り締めた拳と声を震わせ、激怒した。
「我が娘が随行していながら……」
「ユリーシャ様を御守り出来ないとは……くっ!!」
「提督。早々に星内各地でデモが発生しています。」
「まだ、暴動に発展する気配は有りませんが、鎮圧を……。」
「いや、鎮圧はせんでよし。」
ガルデ・タラン参謀長官は、そうガル・ディッツ提督に告げるが、ガルはこれを「よし。」とはしなかった。
それよりも、軍部、臣民問わず、自分達に不満や反感又は親衛隊女衛士に賛同する者たちに対し、ガミラス星からの退去するよう呼びかけるよう、ヒス首相へ進言、容認された事により、ガミラス星全域に発令を出した。
空襲警報のような夥(おびただしい)サイレンが鳴り響き、オペレーターによるアナウンスが響き渡る。
「ガミラス軍及び臣民に通達!!」
「新政権に不満等ある者は、三時間以内に"帝星ガミラス"より、速やかに退去せよ。」
「尚、退去無き場合、反逆者と判断し、拘束する。」
「繰り返す。新政権に不満等ある者は三時間以内に"帝星ガミラス"より、速やかに退去せよ。」
「尚、退去無き場合、反逆者と判断し、拘束する。」
このアナウンス後、ガミラス星全域にて行われていたデモは、鎮静化、不満等を持つガミラス軍人等と共に軍港へと押しかけた。
ガミラス星脱出準備が追いつかない中、臣民を含め怒涛に押し寄せる人の波に、一部、軍人を除き、ガミラス星脱出が出来ずにいた。
刻一刻と三時間というタイムリミットが迫る。
「よし。全保安隊は軍港閉鎖の準備を進めろ。」
ガル・ディッツ提督はさらに新たな命令を下した。
そんな中、オペレーターから慌ただしくイスカンダル女王スターシャ・イスカンダルより、"ホットライン"である事を告げられる。
「率直にお聞きします。ヒス首相。」
「先程のユリーシャの演説、拝見しました。」
「ガミラスで何が起きているのです?」
ヒス首相は方膝を着き、深々と頭(こうべ)ヲタ芸垂れ、説明をはじめた。
「スターシャ陛下。真に申し訳ございません。」
「ユリーシャ様の座乗する星間シャトルがデスラー派を名乗る者に奪取されてしまい、ユリーシャ様は囚われたものと。」
「……。」
スターシャは言葉を失っていた。
その姿を見たヒスは、再び頭を深々と下げた。
「現在、ディッツ提督を指揮官とするユリーシャ様、救出を行うべく準備を進めております。」
「……わかりました。一刻も早い救出を。」
そう告げるとスターシャはホットラインを切り、王座に倒れ込むように腰を下ろした。
ヒス首相が取り繕っている間に、ガルは次の一手を進めていた。
「オペレーター。フラーケン中佐="猟犬"を呼び出せ。」
フラーケン中佐との回線が繋がり、ガルはフラーケンに命令を下した。
「中佐。貴様に"狩りを"依頼したい。」
「"狩り"ですか。」スクリーン越しにガル・ディッツ提督の命令を受諾したフラーケン。
ディッツ提督は大マゼラン銀河外縁部へフラーケン中佐率いる次元潜航艦UXー01を派遣した。
「タラン参謀長官。ガミラス星を脱出した艦艇の数は?」
「バルグレイ級二隻、メルトリア級3隻、クリピテラ級24隻、ハイゼラード級1隻、これは"シャングリ・ラー"元情報相の者たちです。」
「それと、ゲルバデスの息子の率いるゲルバデス級1隻が、離反、親衛隊女衛士が賛同致しました。」
「ゲルバデスJr.大佐か……。」
「大佐のお父上は立派な将だったからな。まさか息子が離反するとは……。」
「やむを得んか。」
「しかし、予想より、多かったな。軍港に閉じ込めた者どもを含めれば、さらにこの三倍近いという事だな。」
「……軍港に閉じ込めた者どもには、24時間後に解放すると伝えよ。」
「オペレーター。警務艦隊のネレディア・リッケ大佐に連絡を取れ。」
「ザーベルク。」
◆◆◆◆
「しかしディッツ提督も、難しい注文をしてくるもんだな。」
「離反した艦隊と遭遇しても、旗艦を「沈めてはならん。と来たもんだ。」
「まだ、捜索を兼ねたヤマトとの停戦を伝える任務が残っていると言うのに。」
ネレディアは心の中で、そう呟いていた……
◆◆◆◆
「で、キャプテン。俺たちは何処へ向かうんで?」
「総統(アベルト・デスラー)に逮捕命令が出たんでな。」
「そいつぁいいや。」
「ヤーブ。機関をめーいっぱい上げろ!!」
次元潜航艦UXー01副長のゴル・ハイニは艦長(キャプテン)であるヴォルフ・フラーケンに行き先を質問すると、新入りの機関士「ヤーブ」に速力を最大まで上げるよう命じた。
一方、帝星ガミラス上空では「帝星ガミラス航宙残存艦隊」と「デスラーズ・ガルマン」を名乗る艦隊とのにらみ合いが続き、一発即発の状況であった。
だが、ユリーシャを囚われた帝星ガミラスにとっては、不利な状況である。
歯痒さだけが先行する。
◆◆◆◆
ー情報収集艦phantom.eye営倉ー
「おやおや、怯えているのかな!?」バトルコマンダーの1人がメルダの髪を鷲掴みにすると、前屈みのメルダの顔を「グィッ」と上げた。
「ディッツのお・嬢・さ・ん
。」
「もう、お止めなさい!!」
「おっと。動くなよ。このディッツの娘の命が無いぞ!!」
メルダに対し暴行を加える親衛隊女衛士たちを、止めさせようとするユリーシャ。
「"親の七光り"のくせして生意気なのでね。教育してあげているのですよ。」
ユリーシャの静止も聞かず、メルダに対する暴行はつづけられた。
「もう……もう、やめろ…」
「ん!?」
「人に頼む時はキチンと頼まないとねぇ。」
さらに女衛士たちのに蹴りがメルダの腹部に食い込む。
「ボズッ!」と
鈍い音がなる。メルダは苦痛の表情から脅える表情へと変わり、吐血した。
「お願いだ。……もう、やめてくれて……」
「だからぁ。お願いする言葉はキチンとしないと。」
「服従をお誓います。お願いします。もう蹴るのは止めて下さい。」コレをキチンと手を着いてお願いしないと、止めるわけがないッ!!「ボズッ!」「ボズッ!」
「ふ…服従をお誓います……もう、蹴るのを……止めて下さい。お願いします……」
土下座しながらメルダは女衛士に頼んだ。
「フッフッフッ。よく言えました。」
「あたしはねぇ~。二等臣民で何時も顎で使われて来たんだよ!今以上に屈辱を味わされてねッ!」コマンダーは許しても、ハンニバルはもの足りさを感じていた。
「コマンダー。コイツの足を開かせろ!」
「前屈みならないようにもう1人は、後ろから押さえろ!」
「あたしはまだ気が済んだわけじゃないんでねッ!」
ハンニバルはメルダの局部(股間)をおもいっきり蹴り上げる。
二発、三発と蹴り上げる。
「お……お願いします。もう一度土下座します。」
「もう蹴るのは、許して下さい。」メルダは嗚咽しながらハンニバルに許しを請う。
ハンニバルは許さない。
同じ場所を再び蹴り上げる。
メルダのスーツパンツに染みが滲む。
股間の辺りからじわりじわりと滲みが拡がる。
「おやおや、七光のお嬢様が、お漏らしとは情けない。」
「アハハハハハッ!」高笑いするハンニバル。
「仕方ないなぁ~。」
「全裸で土下座したら、許してやる。」
メルダは云われた通り、全裸で土下座をした。
「お漏らしまでしてしまい申し訳ございません。」
「服従を誓います。許して下さい。」
ハンニバルは、土下座をして許しを請う、メルダを見下ろしながら回りを一周した。
「許してあ・げ・るッ!!」「ボズッ!」
吐血が続くメルダを嘲笑い、ブリッジに向かうハンニバルとコマンダー。
ユリーシャの目には涙が溢れていた。
「ごめんなさい。メルダ。」
「ゆ……ユリーシャ様……私なら……平気です……」
◆
ー情報収集艦ブリッジー
「ハンニバル艦長。ゲルバデスJr.大佐がお見えです。」オペレーターが告げた。
「これは、これは、お出迎えが出来ず申し訳ございません。」
「うむ。」
「デスラー総統が生きておられるとは本当か?」
「ハイ。本当でございます。」
「……。」
「これより、我がゲルバデス艦を旗艦とし、デスラー総統のあとを追う!!」
「ザーベルク!!」ハンニバルたちの返答が響き渡る。
そう告げるとゲルバデスJr.大佐は旗艦であるゲルバデス艦へと戻り、指揮をとった。
「これより、我がゲルバデス艦が旗艦である。艦隊はデスラー総統と合流する!!」
「全艦!!ゲシュタムジャンプの用意を!!」
「ジャンプ準備が出来次第、帝星ガミラス艦隊へ発砲、その後、ジャンプせよ!!」
こうして"帝星ガミラス残存艦隊"とゲルバデス艦を旗艦とする『デスラーズ・ガルマンガミラス』を名乗る艦隊戦の火蓋は切られた。
「我々の起源は『ガルマン』である。デスラー総統を元首とするデスラーズ・ガルマンガミラス大帝国を築き、この宇宙にその名を轟かせる!!」
「ゲルバデス大佐。全艦、ゲシュタムジャンプの準備及び第一次戦闘準備が整いました!!」ゲルバデスのオペレーターが告げる。
「うむ。全艦!!一斉射撃、撃て!!」
デスラーズ・ガルマンガミラス艦隊の主砲、ミサイル、空間魚雷が一斉に火を吹く。
無抵抗のまま、次々と爆沈、轟沈する帝星ガミラス残存艦隊。
デスラーズ・ガルマンガミラス艦隊は第一次攻撃を終えると、瞬時に姿を消した。
◆◆◆◆
「雪ッ……。」
二つの幻影が交差する・・・
「玲……。」
「ハッ!!」とする雪と玲。
「どうしたの森君?」
「あっ……古代君……。何でも無いわ。」
「古代さん!!……てか、雪さんもいっしょか。」
「どうした?山本。」
「いや、別に……」
「非番なら一緒にどうだ!?」
◆
「今、確かにユリーシャの……」
◆
「今、確かにメルダの……」
◆
雪と玲はそう感じながらも、「まさかね。」と思う気持ちを優先させ、玲は渋々であったが、三人で一時の休憩を過ごした。
後編へ
つづく。
使用している画像はイメージです。
一部、過去にネット内に出回っていた拾い画像を使用しています。
私設定が混ざった宇宙戦艦ヤマト2199の外伝です。
二年前に書いた物語りを2202に合わせて、修正と加筆しました。