
「発酵食品」の真実をどれだけ知っていますか
人類は有史以前より長きにわたり、仕組みを知らないまま発酵を利用してきた(写真:fcafotodigital/iStock)
モノ情報誌のパイオニア 『モノ・マガジン』(ワールドフォトプレス社)と東洋経済オンラインのコラボ企画。ちょいと一杯に役立つアレコレソレ。「蘊蓄の箪笥」をお届けしよう。
蘊蓄の箪笥とはひとつのモノとコトのストーリーを100個の引き出しに斬った知識の宝庫。 モノ・マガジンで長年続く人気連載だ。今回のテーマは「発酵食品」。あっという間に身に付く、これぞ究極の知的な暇つぶし。引き出しを覗いたキミはすっかり教養人だ。01. 「発酵」とは微生物の代謝によって物質が分解されたり変化したりすること
02. 学術的には「微生物が有機物を嫌気的に分解してエネルギーを得る反応」と定義される
03. 一般に「発酵」といわれる現象は多様で、生育に酸素を必要とする微生物が利用されるものも多く含まれる
04. 微生物は、微小で肉眼では見えない生物
05. 発酵を行う微生物を総称して発酵菌という。発酵菌は大きく分けて、菌、酵母、カビ類の3つ
06. 発酵で活躍する菌の代表は、乳酸菌、納豆菌、酢酸菌
07. 酵母(イースト)は食物に含まれる糖類を餌として、アルコールと二酸化炭素に分解するもの
08. ビール酵母やワイン酵母、パン酵母など、さまざまな酒の醸造や食品の製造の工程に関わっている
09. 麹は加熱した穀物に繁殖するカビの一種。厳しい環境でも発酵する力を保つ強い菌といわれる
麹菌の恩恵に預かった発酵食品が多い日本食
10. 日本食の原点ともいえる味噌、醤油、かつお節、酒などはすべて麹菌の恩恵に預かった発酵食品11. 微生物は食物を分解する際、特有の匂い成分やアミノ酸等の旨味成分を醸し出す。これが発酵食品それぞれの複雑な匂いや味の深みを生み出している
12. 発酵食品では発酵菌が増殖して他の菌が生きにくい環境が保たれる=腐敗菌の繁殖が妨げられ、長く保存できる
13. 発酵食品ができるとき、微生物の働きで栄養素が増えて蓄えられ、発酵前と比べて栄養価が大きくアップする14. 「発酵」と「腐敗」はどちらも微生物の働きによる変化でメカニズムは同じ。人間に有益なものが「発酵」、有害なものが「腐敗」と判断される
15. 一般に発酵と呼ばれている工程でも、実際には微生物が関与しないものもある。例えば紅茶の“発酵”は茶葉自身の酸化酵素の働きによるもので厳密には酸化である
16. 人類は有史以前より長きにわたり、その仕組みを知らないまま発酵を利用してきた
17. 確認されている最も古い発酵食品は約8000年前のコーカサス地方のワイン
18. 紀元前3500年頃には中近東の遊牧民が山羊の胃袋で作った水筒で運んでいた乳が酸味のある白い塊に変化。この偶然の産物がヨーグルトやチーズの起源と伝えられる
19. 紀元前4000年~3000年頃には古代エジプトで発酵を利用したパンが作られていたとみられる
20. 古代ローマの料理書『アピキウス』には、調味料として「魚醤」が紹介されている
21. 古代ギリシアではチーズ製造の際にできるホエー(乳清)を健康や美容目的で利用していた
22. 日本でも古代から山ぶどうや木いちごなどの果実を発酵させて作った酒が飲まれていた
23. また、日本でも最も古くから利用された発酵食品と考えられているのは魚醤
24. 6世紀には中国から大豆塩蔵食品、醤(ひしお)が伝来まだ醤油になっていないもの=味噌(写真:CORA / PIXTA)
25. この「醤」ができるまでの熟成途中のものが美味しかったため「みしょう(=未だ醤にならざるもの)」として食されるようになる。これが味噌の起源
26. 最古の漬物の記録が奈良時代の長屋王の邸宅から発見された木簡にみられることから、8世紀には酒粕や醤を利用した漬物が食べられていたことがわかっている
27. 平安時代、味噌は貴族階級に珍重された贅沢品。当時味噌汁はなく、食べ物に付けたり、薬として利用された