
突然の引退 月収1200円から世界的経営者になったアリババ会長のこれから中国電子商取引(EC)最大手、アリババ集団の馬雲会長(54)が自身の誕生日の来年9月10日に会長を退くと発表した。後任に“財務の天才”と称される張勇CEO(46)が就くが、世界的経営者の突然の引退に衝撃が走った。
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「馬氏は若い頃、就職活動などに失敗し、月収1200円の大学講師で食い繋いでいた。転機は94年にインターネットと出会ったこと。99年に34歳でアリババを創業し、時価総額約46兆円のIT企業へと躍進させた。筆頭株主のソフトバンクグループは8兆円の含み益を得ています」(中国に詳しいアナリスト)
引退後は教育慈善事業に専念すると報じられたが、
「政界に進出するというシナリオが囁かれています。実は、馬氏は習近平国家主席と極めて近い関係。創業前の98~99年には、政府機関の下部組織で仕事をしていました。『ビッグデータの成長で計画経済は可能となった』と発言するなど、市民への管理強化にも肯定的な立場です。17年1月には大統領に当選した直後のトランプ氏と面会し、雇用の拡大計画を伝えていました」(同前)
日本の経済界にも存在感を見せつけている。馬氏が1年ほど前に来日した際のこと。農産物の海外輸出を目指していたJA全農の幹部と面談した馬氏は「アリババのECで日本のコメを売りましょう。年800万トンを用意して下さい」と提案した。800万トンと言えば、日本の年間生産量を上回る規模。それをまるまる中国側が輸入するというスケールに、全農幹部は驚きを隠せなかったという。
また、同時期には3メガバンクのトップとも密かに会談し、傘下の金融企業、アリペイとの決済分野での提携を持ち掛けている。メガバンク幹部は「アリペイと決済で連携すれば、日本の顧客の銀行口座がアリペイに紐付けされることになってしまう。個人情報の観点から難しいと断りましたが、中国政府の意を受けたような馬氏の動きに脅威を感じました」と振り返る。
「馬氏は毎月のように習氏にIT経済に関するレポートを上げている。いずれ、IT担当相のようなポストが用意される可能性があります」(前出・アナリスト)
馬氏の“ライフシフト”は成功するか。
(森岡 英樹/週刊文春 2018年9月27日号)