中国人がSNSで赤裸々に相談する悩みの中身
SNSが生活の一部となっている中国人ならではの使い方があるようです(写真:stockcam/iStock)
久しぶりに旧知の30代の中国人女性、王霞さんに再会した。王さんは中国の会社で働いているが、数カ月前に転勤で東京にやってきたばかりだ。
居酒屋の席に座り、私が「久しぶりの東京暮らしはどうですか? 楽しい?」と話したところ、王さんは目を見開き、身を乗り出すようにして、こんなことを語り出した。
日本に住む中国人同士のグループチャットがすごい?
「私ね、今回の転勤で本当に驚いたんですよ!! 日本でもウィーチャットがこれほど普及しているなんて、思いもよらなかったんです。もちろん、日本人のことではありませんよ。日本に住む中国人同士のグループチャット! これがものすごいことになっていて!」
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中国のウィーチャット(微信)は、海外に住む中国人も大多数が利用しているといわれ、日本人が中国人と仕事をする際も不可欠といわれる。匿名での登録が可能で、フェイスブックとツイッター、LINEを混ぜ合わせたようなものだ。
特徴的なのは、フェイスブックやLINEのグループよりも、もっとグループチャット(中国語では圏子や朋友圏という)を重視していて、それが頻繁に使われている、ということだ。
いったい何がそんなにすごいのか? 王さんは言う。
「友人の紹介で、ある在日中国人のママ友のグループに入れてもらいました。参加者は130人くらい。ここに、日々ありとあらゆる情報が書き込まれているのです」
「中国にも、もちろん無数のグループはありますけど、日本に住む中国人ならではのおもしろいチャットを見つけました。6年前に日本に住んでいた時には、まったく影も形も存在しなかったものなので、本当に驚いているんです」
それは、次のような内容だったという。
・子どもの運動靴を洗うなら、どこの洗剤がいいですか?
・入国管理局は立川と新宿ではどちらの出張所がすいていますか?
・子どもの英語塾はどこがおススメかしら? 日本人みたいな英語にさせたくないので、ネイティブの先生がいるところを紹介して。
・離婚を考えています。中国人の弁護士に相談したいので、紹介してください。
・日本人の結婚式にはどんな服装で行くのがベストですか?
・小学校の授業参観には何を着ていけばいいですか?
・夫が経営している会社で秘書を募集中。日本語と英語ができる人を求めています。
・日本の特急列車にはトイレはついていますか?
・中華学校に子どもを通わせている人がいたら、評判を教えてください。
このように、まるでyahoo!知恵袋の中国人バージョンみたいに、日々の生活に関する細かい質問のオンパレードなのだ。しかし、彼女が最も仰天したのは、次のような書き込みだった。
・夫との“夫婦生活”に悩んでいます。普通、中国人(私)と日本人(夫)のカップルだったら、こういうときはどうなんでしょう?
さらに、こんなことまで書く人もいたという。
・夫(中国人)は日本人の若い部下と浮気しているようです。会社の社長は中国人なので、社長宛に手紙を書いて訴えようと思うけど、どう思う?
なんとも赤裸々なことがチャット上で繰り広げられていることに、王さんは非常に戸惑ったそうだ。
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むろん、王さんだって中国にいるときから、同僚や親戚、大学時代の仲間と、数々のグループに入っている。その数は20以上。親友4人だけの小さなグループもあれば、大学の同窓生300人のグループ、同僚とのグループもあり、そこで書かれる内容はいろいろだ。だが、上に書いたような内容は、中国国内にいるときにはあまり見かけないものが多かったという。そこで、王さんはこう思ったそうだ。
「こういうことって、つまり“ゆるいつながり”だからこそ書き込めることなんだな、と思うようになりました。ママ友の会130人のうち、私が会ったことがあるのは20人くらい。そのほかは顔も知らないママばかり。だから、恥ずかしげもなく、かえって遠慮なく、しかも“中国人同士”という気安さで書き込めるのかもしれないなと」
「日本語には『旅の恥はかき捨て』という言葉がありますが、私は『グループチャットの恥はかき捨て』だと思いました。私はそこまでSNSに頼りたくないので、ただ黙って眺めているんですけどね……」
そのうえ、驚いたのはチャットの量の多さだった。
「普段はチャットの着信音を消しているのですが、数時間おきに見ると、新規投稿が500件、1000件!!なんてこともあり、ギョッとします。とてもじゃないけど、見きれない(笑)。私のように全然見ていない人はかなり多いんでしょうけど、何をそんなに書き込んでいるのか? 仕事はしているのか?と不思議に思いました」
中国人同士「つながっている感」が得られる
「そのやり取りをたまにじっくり見ていくと、やはり日本に住む中国人がこれだけ増えても、ここはやはり“外国”なんだと感じました。日本語も完璧にはできないし、生活するうえで、日本人には聞きにくいこともある。母国語でないとうまくニュアンスが伝わらないこともありますから」
「ここ(グループチャット)に質問を投げかければ、日本生活が長い中国人の大先輩や、子育て経験が豊富な女性が懇切丁寧に(しかも、投稿の数分後には)アドバイスしてくれるから安心です。しかも、中国に仕事で頻繁に帰る人は、母国の最新情報を教えてくれる。クローズドな関係で、LINEのような既読もつかない。そこでの情報が公になることはないし、異国の日本に住んでいても、“中国人同士、つながっている感”が得られるのです」
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「私は、これはある種の互助会、お悩み相談室、駆け込み寺、ネット掲示板、日本で以前見たことがあるイエローページみたいなものだな、と思いました」
これは便利でやめられない
私は数時間で500件もの書き込みは見たことはないが、確かに、私も中国人のグループチャットで「〇〇を教えてください」的な書き込みをよく見かけるし、私自身も、自分が入れてもらっている中国人のグループに「〇〇の仕事をしている在日中国人を探しています」という依頼を書いたことがある。
それまで知り合いの中国人や日本人に聞くだけで探すことはできなかったが、中国人のグループに書き込んだところ、なんと、わずか1分!でその依頼はあっさり解決した。
私が入っているグループには、ウィーチャットで可能な最大人数、500人のメンバーがいて、そのうち私がリアルに面識があるのは7~8人しかいないのだが、面識のない中国人が「私、その適任者を知っています。すぐに名刺のコピーを送ってあげます!」といって、親切に紹介してくれたのだ。「うわ~、これは便利!」とうなったものだった。
別の中国人女性にこの話をしたところ、その女性も「そうでしょう! だから、面倒くさくても、グループチャットは役に立つので大事。やめられないんですよ。なんだかんだ言っても便利だし、心強いから」と話していた。
むろん、海外に住む外国人同士は、どこの国であれ、同胞とのコミュニティーは大切にしているだろう。北京に住む日本人同士、ニューヨークに住む日本人同士は、そこでママ友会やゴルフ会、駐在員妻のランチ会、大学の同窓会、県人会などがたくさんあって、それもSNSでやり取りしているだろうし、地元の日本人向け新聞やコミュニティー紙も発行されているだろう。
それは日本に住んでいるときよりも、自分が「日本人」であることを意識し、誰かに頼らざるをえないからで、病院の紹介、子どもの学校、治安区域に関する情報など、助け合いはもちろんある。私自身も香港に住んでいたとき、業種・業界を超えて、さまざまな日本人から、いろいろ教えてもらった経験がある。
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おそらく国籍に関係なく、このようなコミュニティーは各地にたくさん存在するに違いない。
だが、少なくとも日本人は、実名であれ、匿名であれ、夫婦生活のことや、離婚の相談まで、知り合いも含まれているSNSのグループに書き込まないのではないだろうか? むしろその逆で、同じ北京、同じニューヨークに住む日本人同士は、近くにいるからこそ、プライベートなことまで知られたくない、という人のほうが多いのではないだろうか。
日本人駐在員の場合、同じような「日本人御用達」のマンションに住むことが多いため、ただでさえ「あの〇〇の支店長の奥さんは……」「〇〇さん、地元スーパーで〇〇をよく買っている!」といったうわさ話になりがちで、うんざりしてしまうからだ。
だが、日本に住む中国人の場合は状況が異なる。企業派遣の駐在員はまだ少なく、留学生や、留学後に日本企業に就職したり、独立して仕事をしている人が多く、みんなバラバラで、寄り集まって住んでいるわけではない。だから、顔も知らないけれど、同じ中国人同士という適度な距離があるので、気軽に離婚の相談までSNSでさっとできてしまうのだ。
少なくとも、私が知るかぎり、SNSをここまで頻繁に駆使し(私が知るかぎり、ほぼ24時間体制!)ネットワークを活用し、仕事やプライベートのためにここまで活用しているのは、おそらく世界で中国人だけではないだろうか。
それはやはり、彼らが母国の影響を強く受けているからだ。
異国に住まう中国人の生活の知恵
ウィーチャットの中国でのアクティブユーザーは9億6000万人といわれているが、それは世界中に飛び出した中国人にも広がっている。フェイスブックは世界で22億人以上が使っているといわれているが、日本国内に限っていえば、月間アクティブユーザーは約2800万人と、決して多くはない。海外に住んでいるからフェイスブックを始めました、という人ばかりではないだろう。海外に住む日本人が全員SNSで連絡を取り合っているとは思いにくい。
しかし、海外に住む中国人で、ウィーチャットをやっていないという人はまずいないだろう。個人のメールがそれほど普及する以前にウィーチャットが普及し、中国ではSNS=生活インフラとなったからで、それを生活のほぼすべてで利用しているからだ。
このように、彼らは、日本人がまったく知らない間に、次々と日本や母国の情報をSNSで入手し、自分たちなりに日本を理解しようとしたり、日本での生活を暮らしやすくしている、ということを私は在日中国人の取材を通して知った。もともとSNSが生活の一部となっている中国人だからこその生活の知恵なのだろう、と深く納得したのだ。
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少なくとも、私が知るかぎり、SNSをここまで頻繁に駆使し(私が知るかぎり、ほぼ24時間体制!)ネットワークを活用し、仕事やプライベートのためにここまで活用しているのは、おそらく世界で中国人だけではないだろうか。
それはやはり、彼らが母国の影響を強く受けているからだ。
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ウィーチャットの中国でのアクティブユーザーは9億6000万人といわれているが、それは世界中に飛び出した中国人にも広がっている。フェイスブックは世界で22億人以上が使っているといわれているが、日本国内に限っていえば、月間アクティブユーザーは約2800万人と、決して多くはない。海外に住んでいるからフェイスブックを始めました、という人ばかりではないだろう。海外に住む日本人が全員SNSで連絡を取り合っているとは思いにくい。
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