奥武蔵の風

19 宮沢賢治の命日

 今日9月21日は、宮沢賢治の命日です。

 宮沢賢治は、明治29(1896)年8月27日に岩手県花巻市(現在)に生まれ、昭和8(1933)年9月21日に、37歳で病没しました。当時の日本人男性の平均寿命は約46歳でしたから、現在の平均寿命に引き直すと64歳位になりましょうか。

 賢治といえば「雨にも負けず」の詩がよく知られています。私が小学生の時、担任のN先生がこの詩が好きで、黒板の上に、この詩を書いた模造紙を貼っていましたので、私たちは毎日この詩に親しんでいました。

 そのせいばかりではないのですが、私も宮沢賢治の作品と彼の生き方が好きになりました。花巻の記念館を、何回訪ねたことでしょう。その度(たび)に、新しい感動がありました。特に、裏山の胡四王山(こしおうざん)の山頂から見た北上川の光景は忘れられません。

 賢治は、生涯を通じて834編の詩を残しています。しかし、半数近くの詩にはタイトルが付いていません。それは、彼が、時々の自分の心情を言葉・文字に託して詩に表現し、みずから読むことを通じて、自身を慰め励ます手段としたからに外なりません。彼の詩作は、必ずしも「発表」つまり他者に読んでもらうことを前提にはしていなかったのです。「雨にも負けず」の詩も、手帳にメモのごとく綴られていたことは、周知のところです。同作品を含む無題の詩は、それゆえ、書き出しの語句をもって便宜的にタイトルとみなされています。

 数多い賢治の詩の中には、きっと あなたの心にも響く作品があるに違いありません。ちなみに、私が最も心打たれるのは、「あゝ今日ここに果てんとや」という詩の(完成型の方ではなく)草稿段階の作品です。

 

(参考) 宮沢賢治「あゝ今日ここに果てんとや」(草稿形態)

 

   あゝ今日ここに果てんとや

   燃ゆるねがひはありながら

   はた色声にまぎらひて

   十年むなしく過ぎにけり

 

   あゝちゝはゝはわれに老い

   ひとびとわれをたすけしに

   まことのみちを行くなくて

   なにをおもひてわれや来し

   

   懴悔の汗に身をば燃し

   自責の血をば吐きながら

   たゞねがふらく蝕みし

   この身捧げん壇あれと

 

   さてはふたたび生れんに

   かゝるねがひを忘るなく

   こたびの恩をひとびとに

   むくひ得んほど強かれと

 

宮沢賢治全詩(宮澤賢治全詩一覧 (ihatov.cc))より。   

 

(写真上)© 宮沢賢治の像とフクロウ(ペン立て)

(写真上)© 「雨にも負けず」の詩が書かれた手帳の当該ページ(復刻版です)

(写真上)© 絵葉書になった賢治の自作画

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