とても読んだとは言えないのですが、図書館で借りてみました。
Amazon.co.jp: 励起 上――仁科芳雄と日本の現代物理学 : 伊藤憲二: 本
それぞれの章が重くとても図書館で借りて読み終えられるものではなかったのですが、拾い読みということで、自分のためのメモ的な感想です。
まず前半で面白かったのは、仁科芳雄(故人ですので敬称略で。後の方も一緒)が若いころは田辺元の科学哲学を勉強しようとしていたということです。
どちらかというとオーガナイザーとしてのイメージですが、若い時はそのような方だったのだなあと。
ただし面白いのは下巻の索引を見ると、田辺元の登場は上だけ、つまり若いころだけであったようです。
次にはいろいろなところはとばしますが、理研についてのところでのちには醸造学で知られる坂口謹一郎の名前が登場することです。
本からの引用はできないので、こちらに書いてある時代のことです。
https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/publications/riken88/riken88-1-1-1.pdf
たしかにのちの民間会社への展開を考えるとこのような分野をやっていてもおかしくはないと思いますが現在の理研からするとちょっと違うなあと。確かにもともとの理研がこういうコンセプトで作られていたとすると、研究成果を民間にもっていくとかそういった役割期待だったのかもしれません。今のオープンイノベーションの走りだったともいえるのでは。ということで今の理研はどうなのかなあとも思ったところです。
また、戦後になりと、科学者の民主化運動についていろいろなことが書かれていて、ここだけでも読み込みたいところでした。後半に出てくるのは武谷三男氏なのですが、やはり、ある種の緊張感が戦後の日本の科学者たちにはあったことがうかがえます。こうした中で仁科と学術会議の関係を考えると、なかなか興味深いのですが、ちょっとまとめ切れるところではありません。しかし、科学者と政治ということを考えるうえでも仁科の歩みを読むことは重要ではないかと。今の学術会議の問題にもつながる視点が得られるのではないかと、本当は買うべき本ですが、もしかしたら妥協して図書館でまた借りて読むだけになってしまうかもしれない、、、
本当にこれだけの本を出版した著者とみすず書房には感謝です。気持ちだけじゃなくて買うことが大切なのはわかりつつもですみませんが。