
この季節、国会周辺のイチョウ並木に触れるのが恒例になった。年によって、色づきの具合にいくらか違いがあっても、変わらぬ師走風景である。
だが、このところ、暮れの<日本の顔>は決まって入れ替わる。05年は小泉純一郎、06年安倍晋三、07年福田康夫、08年麻生太郎、09年はだれになるのだろうか。
寒さに誘われるように、麻生首相に寒風が吹き始めた。どこに行っても、
「麻生という人は……」
と俎上(そじょう)にのせられている。話題提供能力は抜群だが、あれもこれも脱線気味の話ばかりで、やりきれない。
麻生の評価をめぐって、記憶に残る発言が二つある。一つは、8月17日の日曜日、森喜朗元首相が民放テレビに出演してこう言った。
「自民党でも『次は麻生さん』という気持ちを持つ人は多い。私ももちろんそう思う。
福田さん(当時、首相)の無味乾燥な話より、麻生さんの面白い話がうける。麻生人気をおおいに活用しないといけない」
この森発言が福田・麻生交代の流れを決定づけた。もう一つは、麻生本人による自己評価だ。
9月12日、日本プレスセンターで自民党総裁選の候補者による討論が行われた席で、麻生の冒頭発言である。
「三つ、申し上げます。
1番目、麻生太郎はバラマキだ。
2番目、いわゆる失言癖。
3番目、中国、韓国を敵に回すのではないか。
ご心配をいただいております。一つ目の……。
二つ目、モノの言い方です。一国の指導者ともなりますと、何事も軽々には申しません。外務大臣当時の発言記録をご覧ください。いつも<寸止め>で踏みとどまっております。ご安心いただけます」
<寸止め>という言葉、あまり使われないが、発言は慎重に短く、安全圏に収める、といった意味だろう。
しかし、外相時代はともかく、首相に就いてからの2カ月余、麻生は自ら口にした<寸止め>の戒めをてんから忘れ去ったかのようだ。
「何事も軽々には……」
と約束していたのに、謝罪、釈明しなければならない軽々発言を乱発している。なぜなのか。
面白い、というのがクセモノだ。森だけでなく、与党全体が、<選挙の顔>として、麻生流の話術の面白さと面白そうなキャラクターに強い期待をかけたのは間違いない。失言・放言・漢字誤読批判が高まっているいまでも、選挙を取り仕切る自民党首脳は、
「安倍さん、福田さんにくらべれば、麻生さんははるかに面白いんだよ。この人で選挙を戦うしかない」
と力説し、やはり面白さが集票につながるという見方を変えていない。
麻生のほうも、期待に応えて、極力面白く振る舞おうとしたフシがある。話も多少ハメをはずし、毒を交えたほうが面白い。そのうちに、<寸止め>がどこかにいってしまった、ということではなかろうか。
自民党の一部から、投手交代論がささやかれ始めたのは無理もない。人気が落ちたリーダーは使い捨てにしなければ、がけっ縁の自民党は生き延びられないからだ。麻生は、就任直後の論文(「文芸春秋」11月号)を、
<私は逃げない。勝負を途中で諦(あきら)めない。強く明るい日本を作るために>
という文句で締めくくっているが、早くも正念場である。
逃げないためには、補強措置が必要なのではないか。女房役の河村建夫官房長官に、
「周囲の声は気にせずに」
と声を掛けたそうだが、そんなのんきな年の瀬ではない。(敬称略)=毎週土曜日掲載

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岩見隆夫ホームページhttp://mainichi.jp/select/seiji/iwami/
毎日新聞 2008年11月29日 東京朝刊
自民党って人材に溢れていると思っていたし、今でもそう思う。小泉総裁以前は派閥力学で代表を選んでいたのに、全国の自民党員が、予想を裏切る小泉支持で選挙に勝てそうな初の大統領的総裁を誕生させた。安倍総裁にしろ麻生総裁にしろその二番煎じを狙ったのだろうが、もう「戦えそうにない」気運が出てきた。
自民党を掌握できる旧来型の人か、石原伸晃や中川昭一みたいなオバマ型?の若手の人はいないのかな。当座は与謝野馨次期総理大臣でしのいでいただくしかないのか。なにせ小沢民主党首ほど自民党や小選挙区制のからくりを熟知していてる人はいないみたいだから、勝負は互角だ。
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