「揚げ物」好きが「短命」
今回、米国の高齢女性を対象にした食習慣の調査から揚げ物料理を多く食べた場合、心血管疾患にかかりやすく死亡リスクも高くなることがわかった。
揚げ物の複雑な化学変化
高温の油で食材を揚げる料理法は、広く我々の食生活の中に存在している。唐揚げやトンカツ、ポテトチップス、ドーナツなど、おかず、スナック、菓子類などほとんどのジャンルに揚げ物料理があり、避けるのが難しいほどだ。
揚げ物に使われる揚げ油の繰り返し使用は、肉や魚、野菜など揚げる食材からタンパク質や脂質、アミノ酸などが油へ移行することで油の酸化を促進し、劣化した油による健康影響が懸念されている(※1)。また、揚げ油自体も注目され、一般家庭ではリノール酸の多いものからキャノーラ油などの不飽和脂肪酸のオレイン酸の多いもの、特定保健用食品など栄養機能的に優れた植物油を選択するようになっているようだ。
揚げ物は、からりとした食感や独特の風味が美味しく調理法としても重要だが、揚げ油の劣化や揚げ油、揚げ物料理自体の影響について多くの人が気にしているということになる。実際、ウサギの実験では、実際の調理で起きるように揚げ油にコレステロールを含ませた場合、オレイン酸の多い油のほうがアテローム性動脈硬化症の発症を抑える効果があることがわかったという(※2)。
揚げ物料理が、とりわけ心血管疾患のリスクになるメカニズムには、活性酸素による酸化ストレス、身体を構成する分子の中にある電子の不安定化=フリーラジカルが関与していると考えられている(※3)。
揚げ油を繰り返し使うと熱酸化し、食材に含まれる物質が影響して複雑な化学変化を起こし、それによって生じた物質が我々の身体に入って酸化ストレスの原因となる。酸化ストレスによって血管の内側に炎症が起きるなどし、それが血管の機能不全につながり、血管の伸縮が阻害されたり内側にゴミが溜まりやすくなったりする。その結果、血圧が上がったりアテローム性動脈硬化症になるリスクが生じるというわけだ。
欧米化している日本人の食生活にも揚げ物料理が多くなっている。日本人の会社員715人(21〜66歳、平均39.9歳、男性83.4%)を調べた研究によれば、週に3〜4回、揚げ物料理を食べているという(※4)。
揚げ物料理をよく食べる場合、2型糖尿病(※5)や心血管疾患のリスクが高くなるという研究は多い。その一方で、スペイン人を対象にした調査ではオリーブオイルやヒマワリ油を使うと心血管疾患や死亡リスクは高くならないという研究もある(※6)。
個々人の年齢や体調・健康状態、脂質異常症などの病気にかかっているかどうかによってもその影響は変わってくるだろう。今では目の敵にされているサラダ油やリノール酸の多い紅花油なども、使い方によっては健康に悪影響をおよぼさないことがある。
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