スティーブ・ジョブズの伝記中に示唆する部分があったことから再び注目を集めるようになったiTV構想だが、実現までには多くの難関が待ち構えている。
iTVは現在のApple TVやiPhone、iPadといったデバイスのようにはiTuneに結び付けられることはない。もちろん関連は残るだろうが、iPhoneその他の場合のようにiTunesがすべてのコンテンツのハブの役割を果たすことはない。またAppleのエコシステムの特徴をなすiPhoneのユーザーがMacを買うようになり、MacのユーザーがiPhoneを買うようになるクロスオーバー購入効果も薄いだろう。
iTVはAppleがデザインしたコンテンツ消費の窓になるはずだ―ただしそのコンテンツに対してAppleの支配力はまだほとんど及んでいない。テレビの世界に新しいエコシステムを持ち込もうとする試みは各種のセットトップボックスからGoogle TVまですべて不発に終わっている。Googleも痛い思いをしてそれを学んだはずだ。Appleも同様の困難に直面することになるだろう。
USA TodayのiTVについての記事にあまり実質はないが、それでもいくつか興味ふかいエピソードが報じられている。Jonathan Iveのオフィスには美しい50インチのテレビが置いてあるそうだ。USATodayやその他のソースが報じるところによれば、Appleは意味のあるサービスを形成するために必要なコンテンツの入手に苦労しているという。当然ながら消費者は「Foxは見られますがUniversalは見られません」などというデバイスを次世代テレビとして受け入れはしない。
ところがコンテンツのライセンスを巡ってAppleと交渉する相手方もバカではない。テレビ業界はAppleがこの10年音楽業界に対してやってきたことをよく見ており、音楽レーベルのご同役の真似をしてライオンの口に頭を突っ込む気はない。 もちろん2000年代初期にはレーベルにはAppleこそがライオンだということは分からなかったし、実のところAppleにもその自覚はなかっただろう。しかし今や事情は大きく変わった。Warner、HBO、Turnerその他は断固としてAppleと権力闘争を行う決意を固めている。
一方でテレビ会社もこれが新たなビジネス・チャンスだということは認識している―金の臭いがするのだ。しかし罠が隠されていないことをしっかり確かめるまでは餌に食いつくつもりはない。ある者はGoogleとのビジネスを試してみたがあまり気に入らなかった(Googleは無料でサービスを提供したがる)。Appleは喜んで有料サービスを始めるだろうが、その際非常に大きな割合を自分の懐に入れようとすだろう。テレビ業界は自分たちのもっとも価値あるコンテンツ―新しいテレビ番組を「金のなる木」としてやすやすとAppleに提供するつもりにはならない。逆にAppleもコンテンツ製作者側に生殺与奪の権を握られた状態で仕事を始める気はない。テレビ側が自由にGoogleTVに乗り換えられるような条件ではiTVはいつなんどき息の根を止められてしまうか分からない。
ただし困難だということは不可能を意味しない。もしAppleがリビングルームへの進出を本気で考えているなら(インターネット・テレビ市場は急速に拡大中だし、消費者が新世代テレビに支払う金額も莫大なものになるだろう)、なんとかして課題を克服する道を見つけるだろう。時間はAppleの味方だ。Appleにはテレビ業界をまるごと買い取れるほどのキャッシュがあるし、Appleがデバイスを作れば関係者全員(消費者は別だが)に莫大な金が転がり込むことも皆分かっている。Appleは焦らずゆっくりと交渉を進めることができる。Googleはいささかせっかちに突進してしまったようだ。
テレビに最終的に新しいエコシステムが導入されるまでには時間がかかると考えた方がよい。来週のCESではさまざまな次世代テレビが披露されるだろうが、たとえばAppleが500万枚の50インチ液晶パネルを発注したという記事がDigitimesに出るまでは、すぐに(たとえば半年以内に)何かが起こることはないだろう。
(翻訳:滑川海彦)
業界の話題、問題、掘り出し物、ちょっとしたニュース配信中。
iTVは現在のApple TVやiPhone、iPadといったデバイスのようにはiTuneに結び付けられることはない。もちろん関連は残るだろうが、iPhoneその他の場合のようにiTunesがすべてのコンテンツのハブの役割を果たすことはない。またAppleのエコシステムの特徴をなすiPhoneのユーザーがMacを買うようになり、MacのユーザーがiPhoneを買うようになるクロスオーバー購入効果も薄いだろう。
iTVはAppleがデザインしたコンテンツ消費の窓になるはずだ―ただしそのコンテンツに対してAppleの支配力はまだほとんど及んでいない。テレビの世界に新しいエコシステムを持ち込もうとする試みは各種のセットトップボックスからGoogle TVまですべて不発に終わっている。Googleも痛い思いをしてそれを学んだはずだ。Appleも同様の困難に直面することになるだろう。
USA TodayのiTVについての記事にあまり実質はないが、それでもいくつか興味ふかいエピソードが報じられている。Jonathan Iveのオフィスには美しい50インチのテレビが置いてあるそうだ。USATodayやその他のソースが報じるところによれば、Appleは意味のあるサービスを形成するために必要なコンテンツの入手に苦労しているという。当然ながら消費者は「Foxは見られますがUniversalは見られません」などというデバイスを次世代テレビとして受け入れはしない。
ところがコンテンツのライセンスを巡ってAppleと交渉する相手方もバカではない。テレビ業界はAppleがこの10年音楽業界に対してやってきたことをよく見ており、音楽レーベルのご同役の真似をしてライオンの口に頭を突っ込む気はない。 もちろん2000年代初期にはレーベルにはAppleこそがライオンだということは分からなかったし、実のところAppleにもその自覚はなかっただろう。しかし今や事情は大きく変わった。Warner、HBO、Turnerその他は断固としてAppleと権力闘争を行う決意を固めている。
一方でテレビ会社もこれが新たなビジネス・チャンスだということは認識している―金の臭いがするのだ。しかし罠が隠されていないことをしっかり確かめるまでは餌に食いつくつもりはない。ある者はGoogleとのビジネスを試してみたがあまり気に入らなかった(Googleは無料でサービスを提供したがる)。Appleは喜んで有料サービスを始めるだろうが、その際非常に大きな割合を自分の懐に入れようとすだろう。テレビ業界は自分たちのもっとも価値あるコンテンツ―新しいテレビ番組を「金のなる木」としてやすやすとAppleに提供するつもりにはならない。逆にAppleもコンテンツ製作者側に生殺与奪の権を握られた状態で仕事を始める気はない。テレビ側が自由にGoogleTVに乗り換えられるような条件ではiTVはいつなんどき息の根を止められてしまうか分からない。
ただし困難だということは不可能を意味しない。もしAppleがリビングルームへの進出を本気で考えているなら(インターネット・テレビ市場は急速に拡大中だし、消費者が新世代テレビに支払う金額も莫大なものになるだろう)、なんとかして課題を克服する道を見つけるだろう。時間はAppleの味方だ。Appleにはテレビ業界をまるごと買い取れるほどのキャッシュがあるし、Appleがデバイスを作れば関係者全員(消費者は別だが)に莫大な金が転がり込むことも皆分かっている。Appleは焦らずゆっくりと交渉を進めることができる。Googleはいささかせっかちに突進してしまったようだ。
テレビに最終的に新しいエコシステムが導入されるまでには時間がかかると考えた方がよい。来週のCESではさまざまな次世代テレビが披露されるだろうが、たとえばAppleが500万枚の50インチ液晶パネルを発注したという記事がDigitimesに出るまでは、すぐに(たとえば半年以内に)何かが起こることはないだろう。
(翻訳:滑川海彦)
業界の話題、問題、掘り出し物、ちょっとしたニュース配信中。